幼少期に見た青空はもっと群青だった
星街 「藍より群青」という曲のタイトルはどこから出てきたんですか?
夏代 「青は藍より出でて藍より青し」ということわざから出てきた言葉ですね。ことわざの意味は「教えを受けた人が教えた人より優れていくこと」で、ジュニア向けシューズ「SKLSHŌTER」のテーマソングとして、成長を描く曲にしてみたくて。まず自分が小学生や中学生のときにどうだったかを思い返してみて「青かったな」というのが最初に浮かんだ感想だったんです。「青い」というのは「未熟だった」という意味でもありつつ、「青春だったな」という意味もあって、曲のテーマは「青」かなと思って。その中でどういうことを伝えたいか考える中で、青春の葛藤やいろんなことを学んで越えていこうと努力する様子を思い浮かべて、これから成熟していく世代に向けての応援歌にしたかったんです。それと、もしかしたら僕だけの感覚かもしれないんですが、自分の幼少期に見てた空の色って青というよりもっと群青だった気がするんですよ。単純に「青」というワードにするよりも、もっと群青に近付けたくて。だから藍色よりも群青に近い青を目指したくて、「藍よりも群青」というタイトルになりました。
星街 私のイメージカラーも青だし、歌詞で描かれていることにもすごくリンクする部分があって。「藍より群青」という素敵な曲に携わることができて、個人的にもすごくよかったなと思っています。
音楽に対しての思いを描いた「くらげ」
──星街さんには取材前に夏代さんの新作音源「BLUER」を聴いていただきました。収録曲の中で印象に残った曲はありましたか?
星街 「くらげ」ですね。語彙がなくて申し訳ないんですけど、イントロからスーッと心に染みてくる感じがして、曲の入りでもう好きになりました(笑)。この曲も聴いているときに思い浮かぶのが「青」でしたし、青色が好きな私にとってお気に入りの1曲になりました。
夏代 この曲、水族館でくらげを観ているときに思い付いた、かなり重いテーマを込めた曲なんです。聴くと「好きな人がいて、その人に対しての未練だったり、思いが残ってる曲」という感じなんですが、実際には僕が音楽に対して思うところを書いた曲で。歌詞に出てくる「水槽の中」は「居心地がいいと思っていた環境」を示していて、その中で自分が求められてることだけを繰り返していられてたら、音楽に対しての恨みつらみを感じないままに生きていけたのかな、みたいな思いを込めた曲です。もちろん音楽が好きで活動しているのは間違いないんですが、音楽と向き合うことで葛藤や痛みにつながってしまう経験があって。そういう痛みを感じないで済む選択もあっただろうな、といったことをバレないように曲にしようと思って作ったのが「くらげ」です。今バラしちゃいましたけど(笑)。
星街 冒頭の「惚けられた」というワードのチョイスもいいですよね。「何も知らないままで」とかではなくて「惚ける」なのがすごくよくて。
夏代 ありがとうございます。テーマがテーマなので、今でも「くらげ」を聴くと僕はちょっと苦しくなってしまうんですよ(笑)。こういう裏テーマって自分がわかってればいいみたいなところもあって普段はあまり話さないんですが、リアルな自分の葛藤を歌った曲を「好き」と言ってもらえると自分が救われたような気持ちがするんですよね。だから「くらげ」を気に入ってもらえてすごくうれしいです。
バーチャルかリアルかのこだわりはない
──ボカロPがVTuberに楽曲を提供する機会は増えていますが、今回のようにデュエットでコラボ曲を作るのは珍しいですよね。
星街 はい。お声がけいただいたときに「その線もあるのか」とハッとしました。もともと私はニコニコ動画をすごく観ていて、1stアルバムの「Still Still Stellar」の曲もボカロPさんに作曲をお願いしたので、これからも自分がいいなと思った人とコラボしていきたいと思っています。
──夏代さんは今後もVTuberの方とコラボをするといったことを考えているんですか?
夏代 今回はたまたま星街さんがVTuberだったというだけで、とにかく楽しそうであればなんでも挑戦していきたいと思って曲を作り続けたいですね。バーチャルかリアルかはあまりこだわってなくて、尊敬できるクリエイターの方と面白いコラボができそうならどんどん声をかけていこうと思っています。星街さんともまた何かご一緒できたらうれしいですね。
星街 え、いいんですか?
夏代 もちろん、僕はいつでもなんでもやりますよ。
ライブ情報
夏代孝明「Live "BLUER"」
2022年2月27日(日)東京都 WWW X
[BLUER release party]OPEN 13:45 / START 14:30
[Belated birthday party]OPEN 17:15 / START 18:00
プロフィール
夏代孝明(ナツシロタカアキ)
大阪出身、2月25日生まれのシンガーソングライター。中学生のときにバンド活動を始め、2000年代の邦楽ロックをコピーしながらライブハウスに通い詰める日々を送る。2008年よりニコニコ動画に“歌ってみた”動画を投稿し、2011年11月にオリジナル曲「星の歌」を発表。2014年には東阪で自身初となるワンマンライブツアーを開催し、両公演ともにソールドアウトさせる。2015年1月に1stアルバム「フィルライト」をリリース。2017年2月に2ndシングル「ケイデンス」、同年5月に3rdシングル「トランジット」とテレビアニメ「弱虫ペダル NEW GENERATION」とのタイアップ曲を発表した。2021年12月に4曲入りの新作音源「BLUER」をリリース。2022年2月には東京・WWW Xにてワンマンライブ「Live "BLUER"」を開催する。
夏代孝明 (@_natsushiro_) | Twitter
星街すいせい(ホシマチスイセイ)
2018年よりYouTubeを中心とした配信活動を行っているバーチャルYouTuber。2019年5月よりホロライブプロダクション内に設立されたレーベル・イノナカミュージックに所属したのち、同年12月に女性バーチャルYouTuberグループ・ホロライブに移籍。2021年7月配信リリースのTAKU INOUEのメジャーデビュー曲「3時12分 / TAKU INOUE&星街すいせい」でボーカルを担当した。9月に1stフルアルバム「Still Still Stellar」をリリースし、10月には初のソロライブ「Hoshimachi Suisei 1st Solo Live "STELLAR into the GALAXY" Supported By Bushiroad」を行った。