ワンチャン泣くかなと思ってたんですけど
──さまざまな苦労を経てたどり着いた新体制初ライブ「鼓動」はどんなものになりましたか?(参照:NARLOWが旧体制の楽曲と決別、神田ジョンら提供の新曲をバンド編成で披露)
ムロ 覚えてなくて。
──え!?
ムロ デビューライブもそうだったんですけど、必死すぎて。楽しかったとか、よかったとか、悪かったとか、どこを間違えたとか、なんも覚えてない。ただ必死だった。自分が何をしゃべったかも覚えてない。ふふ。
──それはすごい。
河野 自分は「ファンの人も一緒にこれをやってほしいな」って考えながら振付を作ったので、みんな初めて観るのに見よう見まねで踊ってくれたり、ライブ後の特典会で直接「めっちゃいい!」って褒めてくれたりしてすごくホッとしました。
──それだけプレッシャーがあったんですね。
河野 「これで合ってるのかな……?」という不安な気持ちはけっこうありましたね。でも、「そんな心配する必要なかったな」って思うぐらいファンの人も楽しんでたし、自分たちもライブが終わってステージ袖にはけながら「楽しい!」ってめっちゃ叫んでたので、あのライブができてよかったと思います。
──確かにライブ後の皆さんの笑顔はとても印象的でした。
河野 1部の「絶唱」ではメンバーもファンも泣いてる人がすごく多かったので(笑)、そのあとの「鼓動」でもワンチャン泣くかなと思ってたんですけど、笑顔のほうが多かったですね。
──「鼓動」のMCでは、山下さんが明るくポジティブな言葉でご自身の思いを表現していましたね。
山下 これまでファンの人たちをすごく不安にさせてしまったし、「ここで私たちがみんなを明るい未来へ導いていかないと、今日が終わってもみんな不安なままだろうな」と思ったので、自分たちの気持ちを示すためにポジティブな言葉を選んだんですけど、その思いが伝わっていてうれしいです。
──新体制のNARLOWには5つの新曲があり、それらすべてが「鼓動」で披露されましたが、ポジティブな内容の曲が多いですよね。これはメンバーも含めて話し合った結果なんですか?
パン 「明るい曲にしようね」って話し合うことはなかったけど、みんなが書いた歌詞がどれもけっこう前向きで。それも自分たちの変化なのかなって思います。転生者(NARLOWファンの呼称)にも「明るい方向に引っ張ってくれるライブだった」って言ってくれる人が多かったです。あと私が感じたのは、旧体制のライブではメンバーそれぞれが別々にパフォーマンスしているような感覚になることがたまにあったんですけど、「鼓動」では6人が合わさって1人の人間になったような感覚でライブできたので、それはNARLOWにとって大きな変化だと思いました。
──ひとつになるというのは振付でも意識したんですか?
河野 私が振りを付けたのは2、3曲ぐらいなんですけど、歌詞に合った振りを作ることが多かったです。前向きな歌詞が多い分、お決まりのポーズがあったり、一緒になって踊れたり、みんなで楽しめるものを意識したところはあります。作詞したのはメンバーだし、曲のすべてが理解できたような感覚があったので、「6人でこういうことをしたい」というものを見せました。
「煌めく言葉だけで躍らせたいの」
──現在配信中の「エンドロールを覆せ」はムロさんが作詞を手がけています。どういう流れで生まれた曲なんでしょうか。
ムロ この曲の作編曲を手がけたPENGUIN RESEARCHの神田ジョンさんが初めて私たちのライブに来てくださった日に、大人だけで楽曲について打ち合わせをすることになってたんですけど、そのときには私がその曲の作詞をすることが決まってたので、「私も行きたいです」と言って参加させてもらったんですよ。そこで神田さんからどういう言葉を並べたいと思っているのか聞かれたので、自分のメモ帳をバーッと見せたら「ああ、言いたいことがいっぱいあるんだね」と言ってくれて、言葉がたくさん入るような曲にしてくれました。
──実際にはどんなことを思い浮かべながら歌詞を書いたんですか?
ムロ それについて話してたら5時間ぐらいかかっちゃう(笑)。
──あっはっは!
ムロ まあ、書いたことがすべてなんですけど、惜しみなく、妥協なく。
──この歌詞はパンチラインだらけですよ。緻密に考えていったのか、それとも浮かんだフレーズを書き殴っていったのか、どちらですか?
ムロ 浮かんだものを書いていきました。時間がなかったというのもあるんですけど、デモを初めて聴いた日に、家に帰る電車の中で全部書きました。
──えー!
ムロ 今までそういう書き方はしたことがなかったんですけど、メロディを聴いてるうちに私以外全員の歌割りがすぐに浮かんできたから、「この人にはこういう言葉を合わせたい」「ここはこのメンバーに歌わせよう」ってすぐに書けました。
──歌詞ができたあとにパートを割り振るのではなく、最初から決め打ちだったんですね。そんなふうにして生まれた歌詞を受け取った5人は、この曲についてどう感じていますか?
乃井 最初に歌詞が送られてきたときはまだ自分の歌割りを知らなかったんですけど、「この表現の仕方、すごく好きだな」と思ったところが自分のパートだったから「すごいな」と思いました。
山下 これまでの思い出とか、NARLOWで経験してきたことが歌詞になっていたので、それを見た瞬間に「あ、ここ私かな?」って感じたし、私も自分が「いいな」と思ったパートをもらえました。この人はよく見てるんです、メンバーのことを(笑)。
ムロ 私、うみちゃんのパートの「負け戦の這い上がり方はもう知ってる」がこの曲で一番好きなところです。
──そこは僕も好きです。この曲の歌詞はものすごく“強い”。聴いててずっと鳥肌が立つんですよ。「音楽ってそうでしょ」というフレーズもすごくいい。こういう歌詞ってあまりないですよね。
ムロ 旧体制のNARLOWの曲には自分たちの痛みを表現したり、孤独に寄り添ったりする歌詞が多かったと思うんです。でも、「エンドロールを覆せ」の歌詞にも表れている通り、「煌めく言葉だけで躍らせたいの」っていうのが音楽の本質だと思うので、そういう気持ちで書きました。
──この曲のライブパフォーマンスを僕は2度観ていますが、ほかの新曲に比べて6人の魂の回転具合がすさまじいなと感じました。どんな気持ちでパフォーマンスしているんですか?
イケダ 「ねえ、音楽ってそうでしょ」って歌うときは本当にそう思ってるし、自然と曲に合わせた表情になるんですよね。それがお客さんにも伝わって、「NARLOW、よかった」って思ってもらえる。この曲を歌うときは「ああ、自分、今音楽してる!」「アイドルしてる!」っていう思いが一番あふれ出るし、自分が一番楽しんでると思います。「この曲はどう見せようか」とか考えるようなレベルじゃない。
河野 自分もナナちゃんと一緒な気がします。これまでの曲は苦しんでいる表情を見せたり、内に秘めた思いを表現する感じがあったんですけど、「エンドロールを覆せ」では逆に自分のすべてを放出しているし、「鼓動」で初めて披露したときも全員がそれをできていたんですよね。だから、この曲ではファンの人も含めて全員がひとつになれるような空気感を作っていきたいです。
乃井 「私はこうしよう」とか、この曲を歌うときはあんまり考えてなくて。ソロパートでは自分の、みんなで歌うところはみんなのことを考えて歌ってます。
NARLOWに骨を埋める
──3月からは初のツアーが東名阪で行われます。とても大事なライブになると思いますが、ここではどんなものを見せていきたいですか?
パン 旧体制のときに大阪や名古屋に行けなかったことは申し訳ないんですけど、私たちのことを待っていてくれた転生者に対して「はじめまして」の気持ちをしっかり持ちつつ、NARLOWとしての覚悟を見せられるようにしたいです。
河野 今回のツアーでは会場ごとに披露する新曲が1つずつ増えていくので、絶対全部に来てほしいです。当然、その曲は初披露になるし、だからこそ自分たちの思いも特に強いものになるはずだからその瞬間をしっかり見ていてほしい。ひさしぶりに会う人もきっといるので、「今のNARLOWも強いんだぞ」ということを知ってもらいたいし、もっと好きになってもらいたいなと思います。
──6月には結成1周年記念ライブがZepp Shinjuku(TOKYO)で開催されますが、それを越えた先にはNARLOWとしてどんな目標がありますか?
パン せーの……。
6人 武道館完売!
──おお!
パン まず、これは私自身の話になるんですけど、私はアイドルを始めてからずっと武道館を目標に掲げて生きてきて。それはNARLOWになってからも変わらないんですけど、NARLOWとしてはあやふやだったというか、みんなそれぞれの目標があるだろうし、いざ大きな目標を挙げ始めたらキリがないじゃないですか。だから、まずはみんなで1つの目標を決めてそこへ向かって突き進んでいく必要があるよねっていうお話をして、その結果、とても大きな夢だけど、あくまでも通過点として、武道館という目標に向かってすさまじい勢いで走っていきたい、という話になりました。しかも、ただ武道館を目指すだけじゃなくて、チケットを即完できるぐらいになってからステージに立ちたい。
──グループのストーリーとして無理に叶えるのではなく、実力がついて、集客も見込める状態になったうえで武道館に立ちたいと。その目標を叶えるためにはこの先どんな努力が必要だと思いますか?
パン 挙げだしたらキリがないんですけど、そもそもの歌手としての技術だったり、アイドルとしてのビジュアルだったり、表現だったり、今よりももっとNARLOWになるというか、NARLOWに骨を埋めるという気持ちを一瞬たりとも忘れないことが一番大事なのかなと私は思います。
山下 成長し続けることは大前提として、自分で自分の限界を決めない精神力がすごく大事になってくると思います。あとはやっぱり技術や表現力。だから、1日1日を大事に生きていくし、小さなことでもコツコツがんばっていかなきゃいけないなって思います。
──今後、NARLOWとして何を歌い、伝えていきたいですか?
ムロ 私はこれからもずっとNARLOWで歌詞を書き続けたいと思っています。「エンドロールを覆せ」は転生者や私たちのことを知ってる人たちに向けた歌になっていますけど、次はNARLOWの音楽を初めて聴く人やアイドルに興味がない人の胸ぐらをつかむような言葉を書きたいと思ってます。
パン この仕事をするにあたってずっと変わらないのは「明日も生きてみようかな」と思ってもらえるような曲を歌いたい、そういう存在でありたいということ。そのためにはもっと広い視野を持って、この地球で生きている人たちがどんな生活をして、どんな気持ちで日々の生活を送っているのかということをいろんなところから吸収して、もっと人の生活に触れられるような歌詞を書きたいと思っています。
──大変な苦境に立たされているグループだと思っていましたけど、もしかしたら新体制のほうが自分たちのことをより自由に表現できていて、すごくいい状態なのかもしれないですね。
イケダ その通りですね(笑)。
乃井 これまでよりも幅が広がったと思います。新体制になったことで自分たちができる表現や歌える曲のジャンルが増えたので、今後曲が増えていけばその分もっと楽しいNARLOWのライブにできると思います。楽しみですね。
ライブ情報
Road to Zepp Shinjuku FIRST ONE MAN TOUR 2024 "Kill the Grim Reaper"
- 2024年3月20日(水・祝)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- 2024年4月14日(日)大阪府 SUNHALL
- 2024年4月29日(月・祝)愛知県 RAD HALL
- 2024年6月3日(月)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
チケット購入はこちら
プロフィール
NARLOW(ナロウ)
BiS、LADYBABY、NMB48などの元メンバーを中心とした6人組ガールズグループ。「ロキノン系」を標榜し、抒情的な歌詞とミクスチャーロック、エモーショナルなギター、ピアノサウンドを中心とした楽曲とともに、2023年6月に神奈川・Zepp Yokohamaでステージデビューを果たした。2023年12月よりメンバーを中心に歌詞や振付を作り上げる新体制に移行し、2024年1月に東京・WWW Xで新体制お披露目公演を開催。2024年3月より東名阪ツアー「Road to Zepp Shinjuku FIRST ONE MAN TOUR 2024 "Kill the Grim Reaper"」を行い、6月3日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でツアー最終公演を開催する。