音楽ナタリー Power Push - 南條愛乃

“南條のハコ”に詰め込まれた13の大切な言葉

未来はいつでも“0”から始まる

──ゲストが作詞した最後の楽曲は川田まみさんの「0 -未来-」です。

今年で音楽活動をひと区切りするまみさんは、どんな歌詞を書いてくださるのかな?って思ってたんですけど……(参照:川田まみ年内で歌手引退、5月ラストステージ)。

──その人が「未来」って言葉をつづってきた。

南條愛乃

いろんなことを考えた上で決断なさったことを知ってるだけに、感慨深いですね。最初に歌詞の草稿をいただいたときにも「私が活動休止に至るまでに見つけたものや景色をメッセージとして南ちゃん(南條)に送りたい」っていうメッセージを添えてくださって。あとタイトルには「何かを終えるということは、そのあとに待っている新しいことの始まりでもあるし、未来はいつでも“0”から始まる」っていう意味を込めたともおっしゃっていたんですよ。

──そして南條さんはもちろん、川田さん自身の明るい“未来”をも予感させる詞ができあがってきた、と。

今回アルバムの最後は自分が作詞した曲で締めくくるつもりだったし、実際そうしたんですけど、この曲を最後にしようか悩みました。それくらいこの歌詞をまみさんからいただけたことがうれしくて、大切な1曲になりました。

──で、そのラストナンバーは「今日もいい天気だよ」です。

これ、私のブログのタイトルなんですよ。あまりにも更新してないので、いったい何人の方がその存在を知ってるのかわからないんですけれど(笑)。

──なぜそのタイトルに?

普通、いい天気と言ったら晴れを思い浮かべますよね。

──でも「今日もいい天気だよ」の歌詞の中には雨の日も出てきていますよね。

雨とか雷とか、悪いとされる天気の日であっても、大切な“君”という人、応援してくださる方のことを思って付けました。そんな人が隣にいてくれれば「今日雨だねー、靴ビショビショになっちゃったわー」って笑い合うこともできる。どんな大雨で嫌だと思っていたような日でも、“君”と楽しく話すことができたら、たちまち「いい天気」に変わっちゃうなって思えて。ブログを立ち上げたころから変わることのない気持ちを、今回アルバムの最後の曲として作りました。

──親交のある面々が参加したアルバムの最後を飾るにふさわしいタイトルですよね。あと “葛藤ミュージック”も歌いながらも、最終的には「いい天気だ」って言い切れる南條さんはタフというか。

まあ、本当に大雨の日に「やっばい、超いい天気だわー」と思っているわけではないですけどね(笑)。そりゃ靴とかぬれたら嫌ですよ(笑)。だけど気持ちの面では、悪いことでも一緒にいたら楽しさに変換できるっていうのは、ありますよね。

──ええ、無責任な感じはない。ゆるゆるとマイペースでありながらも、今回の作詞家陣をはじめ、いろんな人の評価をちゃんと引き受けて、楽しんでいる印象があります。

そういう人になれてるといいし、これからもそういう人でいたいなあ(笑)。

南條愛乃の歌ってなんだ?

──「Nのハコ」の初回限定盤にはカバーCDがパッケージされてますけど、これはどういう経緯で?

プロデューサーさんから提案してもらったので。声優をやっているということもあって、これまでは基本的にアニソンを歌ってきたんですけど「南條の声でJ-POPを歌ってみるのも面白いはず」と言っていただいたので。

──スキマスイッチ「全力少年」、Every Little Thing「Time goes by」、サンボマスター「ラブソング」、奥華子「ガーネット」、倉木麻衣「Stay by my side」をカバーしてますけど、実際歌ってみていかがでした?

超難しかったっす……(笑)。バースデーライブでも毎年カバー曲を歌うコーナーを準備してるんですけど、それは楽しいんです。みんなが盛り上がってくれる中、歌えるし、ある意味一過性のものですから。でもCDとして残るものとなると、私自身が私の歌声を聴く耳も厳しくなるし、「もっといい感じに歌えるはず」っていう欲も出てくるし。あと南條愛乃のアルバムでほかのアーティストさんの曲を、南條愛乃が歌うということで「私らしく歌うってどういうことなんだろう?」って改めて考えさせられました。

──どの曲もちゃんと「南條愛乃の曲」になっているけど、制作中はほかのアーティストの曲を南條愛乃のものたらしめるのに腐心した?

「私らしく歌うとは?」って考えれば考えるほど、オリジナルバージョンのアーティストさんの歌声が頭の中に響いてきちゃって(笑)。fripSideでの経験もあるし、アニメのキャラクターソングもけっこう歌わせていただいているし、ソロとしても3年以上活動しているんですけど「CDを作るってこんなに大変なんだな」って改めて思い知らされました。でも、今言っていただいたように、最終的にはちゃんと「南條愛乃が歌うカバー曲」になったと思うし、いい経験をさせてもらったなって思ってます。

考えるのホント好きだね!

──今回のアルバムは仲のいい人たちの言葉と、好きなアーティストのカバー曲という“他者”を通じて南條愛乃像をあぶり出す1枚になりました。

南條愛乃

そうですね。だから私は「Nのハコ」に詰め込まれているものこそが “N”の形だと思ってるんですけど、聴く方によっては「これが“N”?」って思うことがあるのかもとも思っていて。

──確かにリスナーの中には「えっ! 川田さんには南條さんがそういうタイプに見えてるの?」って感じでビックリする方もいるかもしれない。

でもそういう方も、私が東京に出てきてから知り合った人たちなんですよね。だから秋のツアーで歌ってみて皆さんのリアクションに触れたとき、皆さんの反応を“Nのハコ”に詰め込んだとき、本当の意味でアルバムが完成するんじゃないかな?っていう気もしています。

──去年の秋の豊洲PIT公演を観ていて思ったんですけど、南條さんのライブって物理的にはステージの上と下っていう高低差はあるけど、お客さんとの関係はすごくフラットですよね。

応援してくださる方と対等でありたいとは思ってます。「みんな学校やお仕事、がんばって!」「私はこの仕事がんばってますわ!」っていう関係というか(笑)。今度のツアーも、会場に集まった、その人たちと私がお互いに「おー、みんながんばったなー!」って言い合える感じのライブにしたいんですよね。今はSNSみたいな気軽に交流できるツールもいっぱいあるから、特にファンの方との距離感については考えますね。親密な交流を持ちやすくなった半面、私が出方を間違えると私だけじゃなくてみんながケガしちゃうこともありますし。そういう面倒くささを歌ったのが「ツナグワタシ」だったりしますし(笑)。……まあ、考えすぎなのかもしれないんですけどね。友達からも「ホントあんた、考えるの好きだね!」ってよく言われますし(笑)。

──fripSideとしてのインタビューのときもそうだし、今日のインタビューでも感じたことなんですけど、実際好きですよね、考えるの(笑)。

自分でもときどき「私、面倒くさいこと考えてるなあ」って思うくらい、好きみたいですね(笑)。

2ndフルアルバム「Nのハコ」 / 2016年7月13日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
初回限定盤 [CD+特典CD+Blu-ray2枚] / 6264円 / GNCA-1486
初回限定盤 [CD+特典CD+DVD2枚] / 5184円 / GNCA-1487
通常盤 [CD] / 3240円 / GNCA-1488
CD収録曲(共通仕様)
  1. きみからみたわたし

    [作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:戸田章世]

  2. Oh my holiday!

    [作詞:yozuca* / 作曲・編曲:黒須克彦]

  3. NECOME

    [作詞:rino / 作曲・編曲:lotta]

  4. 灰色ノ街へ告グ

    [作詞・作曲:しほり / 編曲:長田直之]

  5. ゼロイチキセキ

    [作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:橋本由香利]

  6. Gerbera

    [作詞:はるかひとみ / 作曲・編曲:渡辺拓也]

  7. ヒカリノ海

    [作詞:ミルノ純 / 作曲・編曲:安瀬聖]

  8. idc

    [作詞:KOTOKO / 作曲・編曲:黒須克彦]

  9. ツナグワタシ

    [作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:黒須克彦]

  10. ヒトビトヒトル

    [作詞:畑亜貴 / 作曲・編曲:安瀬聖]

  11. Dear..

    [作詞:飯田里穂 / 作曲・編曲:増谷賢]

  12. 0-未来-

    [作詞:川田まみ / 作曲・編曲:増谷賢]

  13. 今日もいい天気だよ

    [作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:井内舞子]

初回限定盤付属CD収録曲
  1. 全力少年(スキマスイッチ)
  2. Time goes by(Every Little Thing)
  3. ラブソング(サンボマスター)
  4. ガーネット(奥華子)
  5. Stay by my side(倉木麻衣)
初回限定盤付属Blu-ray / DVD収録内容
  • Yoshino Nanjo 1st LIVE「TOKYO 1/3650 ミンナとつながる365日×???」(約126分)
  • リスアニ!TV「南條一間 ~じじいとわたしの60日~」全9話(約46分)
初回限定盤封入特典
  • フォトブック(32ページ)
  • 南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N" CD購入者先行応募券(シリアルナンバー付き)
通常盤封入特典(※初回生産分のみ)
  • 南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N" CD購入者先行応募券(シリアルナンバー付き)

南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N"

2016年9月4日(日)
愛知県 日本特殊陶業市民会館
2016年9月10日(土)
福岡県 福岡市民会館
2016年9月11日(日)
大阪府 オリックス劇場
2016年9月19日(月・祝)
神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
2016年9月24日(土)
宮城県 仙台市民会館
南條愛乃(ナンジョウヨシノ)

7月12日、静岡県生まれの声優アーティスト。2009年よりfripSideのボーカルとしての活動を開始し、テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」など数多くのアニメソングをユニット名義で発表する。また2010年にはメディアミックスプロジェクト「ラブライブ!School idol project」に絢瀬絵里役として参加し、同プロジェクトのユニット・μ'sのメンバーとしての活動では社会現象ともいうべき注目を集めた。その一方で2012年12月にはミニアルバム「カタルモア」でソロデビューを果たし、2015年7月、1stフルアルバム「東京 1/3650」を発表。2016年7月13日には2ndアルバム「Nのハコ」をリリースする。