音楽ナタリー Power Push - 南條愛乃
“南條のハコ”に詰め込まれた13の大切な言葉
7月13日に南條愛乃のソロ2作目のフルアルバム「Nのハコ」がリリースされる。
fripSideのボーカリストとして活動する一方、2012年にソロ名義での音楽活動を開始させ、2015年7月には初のソロフルアルバム「東京 1/3650」を発表した南條。それからおよそ1年ぶりに届けられた「Nのハコ」で彼女は、作詞者に飯田里穂、畑亜貴、KOTOKO、川田まみら、自身と親交の深い面々をラインナップ。彼女たちの思う南條愛乃像が刻まれた楽曲群を「Nのハコ」=南條の箱に詰め込むという、コンセプチュアルな1枚を作り上げている。果たして“Nのハコ”にはどんな南條の姿が詰め込まれているのか? 彼女に話を聞いた。
取材・文 / 成松哲
“南條のハコ”の中身はなんだろな?
──前作「東京 1/3650」のジャケットで南條さんはライトグリーンの私服を着ていて、タイトルの文字色はイエロー。すごくブライトな感じだったんですけど、今回の「Nのハコ」はシックなビジュアルになりましたよね。CDも盤からパッケージまでモノトーンで統一されていて。
このビジュアルが発表されたとき、ファンの方もけっこうザワッとなったみたいなんですよ。「Nのハコ」っていうタイトルだけ発表されていた段階では「南條さんが箱をかぶっているんじゃないか?」とか「箱から出てくるんじゃないか?」とか、ポップなものを想像していたみたいで(笑)。
──箱をかぶる南條さんっていうビジュアルはどうかと思いますけど(笑)、「東京 1/3650」のカラフルなイメージが強かったからこそ、そういう想像をしたんでしょうね。
「東京 1/3650」を作っている最中から次のアルバムのイメージを考えていたんですけど、私自身、そのときは今回のようなコンセプトは想定してなかったんですよ。でも2ndアルバムをリリースする話が具体的になったときに、アルバムを引っさげて行うツアーのスタッフが変わることになったんです。当初考えていたコンセプトと新たな環境、この2つにギャップを覚えたんですね。そもそも当初のコンセプトは、変更前のスタッフたちとやりたいと思っていたことだったので。それで現在の環境と自分の中の気持ちなど改めて考え直して形となったのが、今回のコンセプトでありアートワークなんです。
──その新しいコンセプトって?
「今の南條愛乃をひとつの入れ物として見たときに、中には何が入っていると思いますか?」ですね。私は変わらないつもりでいますけど、「南條愛乃」をどこで知ったかによって、その見方や捉え方はさまざまかもしれない。最近特にそう思う事が多くあったんですね。声優業やfripSideとしても、いろいろな作品に関わらせていただけたので。だからこそいろんな方向から光を当てることで、「南條愛乃像」の輪郭がハッキリ見えてくるかもしれない。それで今回は東京で仕事をするようになって、出会うことができた方々に作詞をお願いしました。それから前作「東京1/3650」ではカラカラになるまでアウトプットした分、今作では自分からは出てこないような楽曲に触れてインプットしたい思いもありました。
みんなが「ずぼら」って書いてきたらどうしよう
──だから「東京 1/3650」の収録曲はほぼすべて南條さんの自作詞曲だったのに、「Nのハコ」では逆に南條さんはほぼ作詞をせず、いろんな作家さんや声優さんに詞を依頼してみた?
そうですね。で「私はあくまでハコである」というコンセプトなら、ビジュアルも「東京 1/3650」みたいな色の付いたものではなくて、作詞家さんや聴いている人がいかようにも色を付けられる、想像できるモノトーンのほうがいいかなって思って。
──なんで他者の評価を集めて南條愛乃像をあぶり出そうと?
「みんなが私のことをどう見てるのか、なんか気になっちゃった」っていうのが一番の理由なんですけど(笑)、自分自身のアイデンティティが揺れていたというか、「今の私って何者なんだろう?」って考えるところはずっとありましたから。でも自己評価とほかの人の私に対する評価ってたいてい違うじゃないですか。だったら南條愛乃という人にいろんな方向からの光を当ててみれば、私は何者なのか、よりはっきりとわかるのかな?って考えた感じですね。
──アルバム1曲目の南條さんの自作詞曲「きみからみたわたし」がタイトルからして、まさにアルバムコンセプトを象徴している感じ?
そうですそうです。「このアルバムは“きみ”という名のいろんな人からみた“わたし”の姿を詰め込んだ“ハコ”なんですよ」って紹介するのがこの曲なんです。
──南條愛乃が南條愛乃を知るための手立てとして「きみからみたわたし」の姿に焦点を当ててみるのは正しいと思うし、アルバム収録曲はどれもそうなってないから取り越し苦労みたいな話なんですけど、「私について自由に詞を書いてください」ってお願いすると「見たくなかった私の姿」を暴かれるおそれもありましたよね?
「暴かれたらそれはそれで」って感じでしたね(笑)。「周りが自分のことをどう見ているのか知りたい」っていう気持ちが強かったですから。
──声優になるべく上京してから現在までの10年を歌った「東京 1/3650」で南條さんが書いた詞もそうだし、去年の秋の豊洲PITでのワンマンライブ(参照:南條愛乃、その足跡と“ミンナとのつながり”再確認した初ワンマン)もそうだったんですけど、南條さんのソロ活動ってすごくハッピーに見えたんですね。でも「Nのハコ」には現状に対する葛藤を歌った曲も収録されています。
葛藤というか、なんでしょうね。聴く人によっては私のイメージ像とのギャップを覚える人もいるかもしれません。少し攻撃的だったり、挑発的だったり、今までになかったような曲もありますから(笑)。だけど私から見れば、イメージ通りの南條愛乃像になっていて。皆さんがどう感じるかは聴いていただいてからのお楽しみですね。だけど今回は見事にどの方もテーマがかぶることなく、それぞれの視点から描いてくださって感動しました。コンセプトは共通ですがテーマはお任せしていたので、「さすが自分の世界を持っている皆さんだな」と思いました。「そんなふうに見てくれてたんだな」とか「よく覚えててくれたなあ」とか、歌詞をいただくたびにワクワクして。みんなズボラ系の歌詞になってしまったらどうしようと思っていたのですが……杞憂に終わりよかったです(笑)。
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- 2ndフルアルバム「Nのハコ」 / 2016年7月13日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 初回限定盤 [CD+特典CD+Blu-ray2枚] / 6264円 / GNCA-1486
- 初回限定盤 [CD+特典CD+DVD2枚] / 5184円 / GNCA-1487
- 通常盤 [CD] / 3240円 / GNCA-1488
CD収録曲(共通仕様)
- きみからみたわたし
[作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:戸田章世]
- Oh my holiday!
[作詞:yozuca* / 作曲・編曲:黒須克彦]
- NECOME
[作詞:rino / 作曲・編曲:lotta]
- 灰色ノ街へ告グ
[作詞・作曲:しほり / 編曲:長田直之]
- ゼロイチキセキ
[作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:橋本由香利]
- Gerbera
[作詞:はるかひとみ / 作曲・編曲:渡辺拓也]
- ヒカリノ海
[作詞:ミルノ純 / 作曲・編曲:安瀬聖]
- idc
[作詞:KOTOKO / 作曲・編曲:黒須克彦]
- ツナグワタシ
[作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:黒須克彦]
- ヒトビトヒトル
[作詞:畑亜貴 / 作曲・編曲:安瀬聖]
- Dear..
[作詞:飯田里穂 / 作曲・編曲:増谷賢]
- 0-未来-
[作詞:川田まみ / 作曲・編曲:増谷賢]
- 今日もいい天気だよ
[作詞:南條愛乃 / 作曲・編曲:井内舞子]
初回限定盤付属CD収録曲
- 全力少年(スキマスイッチ)
- Time goes by(Every Little Thing)
- ラブソング(サンボマスター)
- ガーネット(奥華子)
- Stay by my side(倉木麻衣)
初回限定盤付属Blu-ray / DVD収録内容
- Yoshino Nanjo 1st LIVE「TOKYO 1/3650 ミンナとつながる365日×???」(約126分)
- リスアニ!TV「南條一間 ~じじいとわたしの60日~」全9話(約46分)
初回限定盤封入特典
- フォトブック(32ページ)
- 南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N" CD購入者先行応募券(シリアルナンバー付き)
通常盤封入特典(※初回生産分のみ)
- 南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N" CD購入者先行応募券(シリアルナンバー付き)
南條愛乃 LIVE TOUR 2016 "N"
- 2016年9月4日(日)
- 愛知県 日本特殊陶業市民会館
- 2016年9月10日(土)
- 福岡県 福岡市民会館
- 2016年9月11日(日)
- 大阪府 オリックス劇場
- 2016年9月19日(月・祝)
- 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2016年9月24日(土)
- 宮城県 仙台市民会館
南條愛乃(ナンジョウヨシノ)
7月12日、静岡県生まれの声優アーティスト。2009年よりfripSideのボーカルとしての活動を開始し、テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」など数多くのアニメソングをユニット名義で発表する。また2010年にはメディアミックスプロジェクト「ラブライブ!School idol project」に絢瀬絵里役として参加し、同プロジェクトのユニット・μ'sのメンバーとしての活動では社会現象ともいうべき注目を集めた。その一方で2012年12月にはミニアルバム「カタルモア」でソロデビューを果たし、2015年7月、1stフルアルバム「東京 1/3650」を発表。2016年7月13日には2ndアルバム「Nのハコ」をリリースする。