もっともっとライブさせて！

──サウンドは多彩になっていますけど、ななせさんのギターと歌が中心にあるというのは、前作から変わらないところでもありますよね。そこはアレンジする際にも意識したところなんじゃないですか？

はい。あくまでも「ななせのギターと歌、いいでしょ？」というのを伝えたいというか。そこをよりよく聴いてもらうためのアレンジなので、できるだけシンプルにっていうのは常に心がけていました。ピアノの音色だったり、ドラムのフィルであったり、曲によってはクラップを入れたりすることで、聴いてくれる方の耳に引っかかるサウンドにしようとは思ってますけど、基本的にはそぎ落としていく方向性のアレンジだったような気がします。シンプルだけどカッコいいっていう仕上がりにこだわりました。歌に関しても、そんなに切り貼りはしていないので、変わらずにライブっぽさを感じてもらえるはず。音源に関してもそこはずっと大事にしていきたいところなので、今回もそこを感じてもらえたらうれしいですね。前回とはいろいろ作り方での変化がありましたけど、これもまたすごく勉強になったし、とにかく楽しかったです！

──前作と聴き比べるとボーカルが圧倒的に進化している印象もあって。そこに関してはご自身でどう感じますか？

歌がうまくなったなって自分でも思いました（笑）。さっきも言いましたけど、アレンジのおかげなのか歌い方がすごく変わったし、声もどこか大人っぽくなってるんですよ。「maniac love」を今聴くと、すごくかわいらしい子供っぽい声をしているなって思っちゃいます。今回のレコーディングでは、「こんな歌い方をしてみてよ」というリクエストもけっこう多かったので、いろんなイメージをしながら歌える力が付いてきたんだと思います。あともう1つ、リズムも今回はけっこうこだわったところなんですよ。

──なるほど。アレンジされたトラックに合わせて歌うとなると、自分の呼吸感で歌える弾き語りとは違ったアプローチが求められますもんね。

そうそう。今回はクリックを聴きながら歌うことで、サウンドに合わせてリズムよく歌うことを心がけました。自分の声がサウンドにスパンスパンとハマっていくと本当に気持ちよくて（笑）。そういう楽しさもありましたね。

──歌に関してはまだまだ磨いていきたい気持ちが強いですか？

もちろんです！ 常に「もっとできるはず」「もっとうまく歌えるはず」と思いながらレコーディングに臨んでいますからね。自分の曲だからこそ、もっと私らしさ全開で歌えるはずだって。ただ、以前よりちょっとうまく歌えるようになったことで、歌ってる最中にいろいろ迷ってしまうことも多くなったんです。前はあまり何も考えずにスパッと歌えていたのに、ライブでもレコーディングでも「こうしたほうがいいかな、こっちのほうがいいかな」って迷いながら歌っちゃう瞬間があったりもして。そこはちょっとヤバいなって思ってるところではあるので、ここからなんとかしていきたいです。今のところ答えは見えてないけど、まあきっと大丈夫だと思います！（笑）

──ちなみにバンドサウンドで引き出された歌い方は、弾き語りにもフィードバックされそうですか？

それはもう実感してます。弾き語りのライブでも、よりリズムよく歌えるようになったところもあるし、「うわ、今の歌よかったわ！」って自分で感じる瞬間がすごく増えたような気がしていて。それはギターに関しても一緒で、「今のいいっしょ！」って思えるところがどんどん増えてはいますね。そうやって自分の成長を実感できるのはものすごく楽しいので、「もっともっとライブさせて！」っていう感じですね（笑）。

2回目の47都道府県ツアーへ

──アルバム「スナックぜんもんどう」はリリースから3カ月ほどが経ちましたが、ここからさらに多くの人たちに届けるべく動いていくそうですね。

そうなんです！ リリース後にツアーがあったんですけど、コロナの影響で数公演以外は軒並み中止になってしまって。せっかくそこでCDをどんどん届けるつもりでいたのに、ちょっと悔しい結果になってしまったので、9月から47都道府県をライブで回ることにしました！ こんなにいいアルバムができたのに聴いてもらえないのはヤバいですからね。

──ななせさんは高校卒業後に上京してすぐ、単身で47都道府県ツアーを成功させています。ということは今回が2回目の日本1周ツアーとなるわけですね。

そうなんです。今までのファンの方にも、はじめましての方にも、「ななせのライブを1回観てみてよ！」っていう気持ちで全国を回ろうと。今回のアルバムが売れた、売れないというのはこのツアーを終えてからの話かなという気がしていますね。気持ち的には「これからアルバムリリースします！」くらいな感じで今、ものすごく盛り上がっています（笑）。自分としても数カ月先までライブの予定が決まっていることがすごくうれしいですしね。それだけで日々をがんばることができるというか。

──ななせさんにとってライブはかけがえのないものなんでしょうね。

ライブは超楽しいです！ ライブのために音楽をやってるみたいなところもありますからね。だってワンマンともなれば、そこにいるみんなが私のこと好きなわけじゃないですか。それはもう楽しくないわけがない（笑）。

──ライブは弾き語りスタイルで行われるんですか？

そうです。以前にアルバムでもお世話になった白根さんと斉藤さんと3人でバンドスタイルでのワンマンをやったことがあって、それもすごく楽しかったんです。でも今はもうちょっと弾き語りでのライブを追求していきたい気持ちがあるんですよね。アルバムを聴いてくれた人はそこに入っている曲が弾き語りではどうなるのかというのを楽しんでもらえると思います。逆にライブで初めて私の曲を聴く人は、そのあとにアルバムでバンドバージョンを味わってもらうこともできますし。なのでアルバムをまだ買っていない人は、1万円を握りしめてライブに足を運んでください（笑）。

──「スナックぜんもんどう」のCDは1万円という価格設定になっていて、そこにはCD不況と言われる時代のアーティストからの1つの提案と覚悟が込められているように思います。その価格に相応しい作品ができたという自信でもありますよね。

はい。ぶっちゃけ最初は相当賛否両論あって炎上するかなと思っていたんですけど（笑）、実際は理解してくれる方もけっこういらっしゃって。挑戦してみてよかったと思っています。これが大きく売れれば、次は500円でCDを出したり、なんなら無料で配ったりしてもいいと思ってるので。応援する気持ちで今回のアルバムを手に取ってもらえるとうれしいです。

──2回目の47都道府県ツアーを終えたとき、ななせさんはまたひと回り大きく成長しているはずですよね。

そうだったらいいですよね。ここからは間を空けずにライブをすることができるので、その日見えた課題を次にすぐ生かせると思うんですよ。それがすごく楽しみです。

──そうやってライブを積み重ねていけば、最終公演はとんでもないことになるでしょうね。

ね！ 超いいライブをしちゃうと思いますよ（笑）。ぜひみんな会いにきてください！

※特集公開時、一部ライブ情報に誤りがありました。お詫びして訂正します。