泣き虫|謎に包まれた新世代アーティストの独特なモットー

全然泣かない

──泣き虫というアーティスト名については?

最初はもっと名前が長くて、「吾輩は泣き虫である」だったんです。でも、「泣き虫さん」としか呼ばれなくて、「まあ、そうですよね」と思って(笑)。「泣き虫」だと寂しいから傘マークを付けて、これでいいじゃんって。歌詞もそうなんですけど、見た目をよくしたかったんですよね。

──“泣き虫”自体に意味があるわけではない?

そうですね(笑)。ケータイの変換機能を使って歌詞を書くことがあるんですけど、それと同じというか。適当に文字を入れたら、例文が出てくるじゃないですか。それがいいなと思ったら、そこから歌詞にしていくっていう。アーティスト名に関しては、“な”で変換したら「泣き虫」が出てきて、「ありきたりな言葉だけど、アーティストでこういう名前を付けてる人はいないな」と。あとは字面のよさ、覚えやすさ。曲名もそうなんですよ。「大迷惑星。」も「君以外害。」も見た目のインパクトがあると思うので。「お~いお茶」とかも好きですね(笑)。

──(笑)。泣き虫って、先入観を持たれそうな名前ですけどね。

「女性ですか?」とか「泣き虫なんですか?」ってよく言われます(笑)。全然泣かないんですけどね、実際は。喜怒哀楽の“哀”がないというか。基本、ニヤニヤ笑ってます。

──でも、切ない曲が多くないですか?

そうなんですよ。曲を作ってると、だいたい悲しい方向になっていくので。ハッピーな曲を作ろうと思えば作れるんですけど、歌いやすいのは悲しい曲だし、悲しい感情は誰しも持っているので、共感を得やすいのかなと。

──泣き虫として活動をスタートさせたときは、プロとしてやっていこうと決めていたんですか?

それはバンドを組んだときから「音楽しかないな」って思ってました。メンバーとも「絶対に売れよう」と約束していて。

——実際、本格的に活動を初めて1年ちょっとでここまで来て。予想通りですか?

予想外ですね。もともとは「最強のボーカルを見つけて、バンドで売れよう」と思ってたので。まさか1人で歌うことになるとは思ってなかったし……うれしいですけどね、もちろん。

シンプルにハマった12曲

──では、アルバム「rendez-vous」について聞かせてください。まず「rendez-vous」というタイトルは?

これも文字の見た目ですね(笑)。

──このつづりで“ランデヴー”と読むのか、という?

そう、それがよくて。調べたら、待ち合わせ場所、溜まり場みたいな意味があって、作品のイメージにぴったりだなって。何も考えないで決めても何度も辻褄が合っちゃうんですよね。曲も歌詞もタイトルもそうです。

──泣き虫とオーディエンスの待ち合わせ場所、曲が集まってる場所みたいなニュアンスもありますからね。選曲に関しては?

シンプルに「いいな」と思える曲を収録しました。曲はけっこうたくさん作るんですけど、自分にハマらないこともあって、そういう曲は出さないので。けっこう古い曲も入ってます。1曲目の「からくりドール。」はバンドのときに最初に作った曲で。別のボーカルが歌ってたんですけど、その後1人のライブでもやってたんです。サビの歌詞はドラムが書いていて、この前「アルバムに入れる」って連絡したら「マジ? 恥ずかしいんだけど」と言ってました(笑)。歌詞もそのままだし、初めて作った曲をアルバムの1曲目にするのもいいなと。

──2曲目の「アイデンティティ。」は?

作ったのは2018年か2019年くらいですね。ギターのリフから作り始めて、それに合うメロディを考えて。攻撃的な曲になりそうだったので、語り系がいいかなと。歌うのは難しいんですけどね、早口なので。サビは聴きやすさを意識して作りました。ほかの曲もそうですけど、サビは聴きやすいほうがいいと思うので。