ナタリー PowerPush - my way my love
会心の2年ぶり新作と“村田物語”
INORANバンドは新鮮
──INORANとの出会いはどうでした?
休み中の対談でINORANと出会ったんですが、初めて会ったときから楽しかったです。ギタリスト同士なんで、ギターの話が楽しいし、こんな人と友達になりたい、とも思ったし。
──サウンドを作っていく面でも刺激になりましたか?
もちろんいっぱい刺激もらってますし、彼の作品をギターでたどっていくと、いろんな発見があってすごく面白いんです。すごく知的で繊細で、でもやっぱりロックなんでダイナミックだったり。あと……。
──あと?
彼は本来LUNA SEAではギタリスト。でも、僕はディランから入ったような人間なんで、ギタリストっていうよりはシンガーなんです。でもINORANバンドだと、それが逆転してるのがすごく楽しくて。ボーカルであるINORANが歌うために、このギター気持ちいいだろ?とか、気分上がってるか?っていうメッセージを送ってる感じがすごく新鮮なんですよ。それは自分の音楽活動の中で初めてなんで。
──そうだったんですね。
あと、バンドに誘われたのも初体験(笑)。いつも誘う側だったんで。でもバンドマンにとって「バンドやろうよ」っていう誘いの言葉は最高のラブコールなんで、INORANに誘われてうれしかったです。
音楽の中にしか答えはない
──そんな時間を過ごしながら、今回のアルバム「The Fact Is」を作り出す、具体的なきっかけはあったんですか?
がんばって休んだ1年間はできるだけギターを触らないようにしたんですけど、基本毎日でも曲が出てくるタイプなんで(笑)。1年しっかり休んだし、その1年が震災以降でもあり、いろいろゆっくり深く考えられた時間だったんで、ぼちぼち制作に入ろうと。もう曲がいっぱい溜まりきって飽和している状況だったんで、その時点ではどのレーベルから出そうとか、アメリカ、日本、ヨーロッパのどこでリリースしようかとかは全然考えず、まず溜まってるものを作品にしていこうって思って始めました。
──アルバムのクリエーションにおいて、震災の影響はありました?
結局あのことがどうだったのかって言っても、“起こらなければよかった”というのが一番でかい答えでしかなくて。ただ、そうは言っても、何かひとつ答えを出して前に進んでいくしかないってことだけは、今確かなのかなと思っています。その答え探しも含めてこれからを生きていく、という感じはあります。で、自分はミュージシャンなんで、作品を作る、ライブをするというこのスタイルで行くしかない。音楽の中にしか答えはないと思い制作しました。
──「The Fact Is」というタイトルにそのあたりの意味が含まれている?
これは、友達からもらったメールにあった“the fact is”という何気ない言葉をそのままタイトルにしただけなんです。大々的なタイトルつけるのがちょっと照れくさい時期でもあったんで。あと、The Fact Is ○○の“○○”の部分はみんなに想像してもらいたいっていうのもありました。
my way my loveの作品が世界平和につながるのか
──それにしてもmy way my loveの作品を聴いていると、感覚の洪水に浸っている感じがすごい気持ちよくもあり、それでいて心かき乱されるんです。不思議な感覚に陥るんですけど、どんなふうにサウンドを構築しているんですか? 例えば絵を描くような感覚なのか……村田さんの頭の中を覗いてみたくて。
(笑)。前作まではプロデューサーをつけていたので、プリプロがあったりしたんですけど、今回はセルフプロデュースなのでプリプロなしで入りました。自分自身がプロデューサーでもあるので、本当にライブのように作っていった感じです。ライブレコーディングというかレコーディングライブというか、レコーディングをライブで見せるというか。煮詰まることってほとんどなく、すごいスピードで作業も順調に自分の中で進みました。すごくいいスピードでしたよ。50曲近くあるストックの中から、実際完成しないものも含めて20曲くらい録ってたんです。その中の13トラックがアルバムに収録されています。
──ある意味村田さんの本能のスピードで、音楽を奏でていけたと?
そうですね。だから、予定通りというかどんどんいろんな勘が的中していくというか。その連続でしたね。
──だから、音を聴いていると不思議な感覚の中に浸ってる感じがする。
そういうスピード感、ライブ感でやったのが大きいと思います。ひさしぶりのセルフプロデュースでもあったんで、楽しかったですし、激しかったです。
──それでいて、時代感も音からきちんと浮遊してくるんですよ。
今この時代やこの世の中に対してmy way my loveというアーティストとして作品を出すことが、オーバーではなく、世界平和につながるのかとか、人を幸せにするのかとか、ロックとして世界中のみんなに驚いてもらえるのかとかってことは毎作毎作考えてますし、今作もセルフということでバンドのメンバーとエンジニアの4人でそういう会話をしつつ、作業してましたね。
- ニューアルバム「The Fact Is」/ 2013年7月3日発売 / 3000円 / dive in! disc / binyl records/ HDID-1001
-
収録曲
- Element X
- Beautiful Junkies
- The Last Apple On The Tree
- Sparkle
- Refrain
- Sign
- Black Chord
- A Man Of Loser
- China Moon
- Biopic
- Good Days & Bad Days
- Shadownoiz
- The Last Apple On The Tree (Paper Bag Man Remix)
my way my love(まいうぇいまいらぶ)
2000年3月、The Juiceやthe cimonsのフロントマンとして活躍したYukio Murata(Vo, G)の新プロジェクトとして始動。現在はShozo Ishida(Dr)とKatsuya Hayashi(B)との3人編成で、ループを使用しノイズやパンクを融合させたユニークなサウンドを特徴としている。活動拠点は日本だが、アメリカやヨーロッパでもリリースやライブを行っており、激しいライブパフォーマンスは各地で絶賛されている。2013年7月にはbinyl records / dive in! discよりニューアルバム「The Fact Is」をリリース。それに伴い20公演以上のジャパンツアーを行う。