ナタリー PowerPush - my way my love
会心の2年ぶり新作と“村田物語”
my way my loveが、MONKEY MAJIKらが所属するbinyl records内のレーベル・dive in! discから約2年ぶりの新作アルバム「The Fact Is」をリリースした。ナタリーではこれを記念して、バンドのフロントマン・Yukio Murata(Vo, G)に単独インタビューを実施。my way my loveを結成するまでのストーリーや、最近2年間の活動、今後の構想などから、村田が音楽を鳴らし続ける理由に迫った。
取材・文 / ジョー横溝 インタビュー撮影 / 高田梓
きっかけはボブ・ディラン
──my way my loveのTwitterで公開されていた、村田さんが音楽を始めてからmy way my loveを結成するまでを描いた「村田物語」を読んで、心揺さぶられました。音楽を始めたきっかけはボブ・ディランにしびれたところからだったんですね!
はい。ディランからきましたね。15歳のときだったんですけど、夜テレビを観ていたらディランのライブ映像が流れてきて。10万人ぐらいの前でディランが1人で歌っていて。
──そんなディランのようになりたいっていう衝動から音楽をスタートした。
なりたいというよりは、謎だったんですよ、中学生くらいの自分からしたら。何が行われてるんだと。政治運動なのか、宗教なのかもそのときはわからなかったので。
──ロックコンサートだってことがわからなかった?
ですね。ザ・ベストテンとかしか観たことない少年だったんで。まあ怖かったですよ、迫力があって。歌い方も変だし。こんな歌聴いたことない(笑)。
──詳細は「村田物語」に譲るとして、お金を貯めて行った東京の音楽専門学校では入学詐欺に遭い、その後渡米し、お寿司屋でシェフをしながらお金を貯め音楽活動を。でもアメリカでの最初のステージでは観客に殴られ……と、あれだけつらいことがあっても音楽を諦めようというのは1回もなかったんですか?
当時の自分の中では偉大なる音楽を目指してるんで、生活苦とか怖いくらい目じゃないんですよね。
──その目指す音楽はディランのような音楽でもなく?
ですね。でもディランから始まって、ディランがTHE ROLLING STONESがいいと言っていればストーンズを聴いたり。そのストーンズが黒人のブルーズマンがいいと言えば、マディ・ウォーターズとかも聴き出したり。カリフォルニアにいた頃は、AEROSMITHやガンズ(GUNS N' ROSES)のライブを観てカッコいいなとか、いろんなアーティストに憧れはありました。
ノイズは「ふるさと」
──でもそうすると、ノイジーでもあり美しくもあり、ポップでもあるmy way my loveのあのサウンドにたどり着かないんですよね。あのサウンドはどこから出てきたんですか?
僕の原体験からですね。
──というと?
実家は兵庫県尼崎で、家の周りが鉄工所ばっかりだったんです。いつも1日中、ギーン、ガッシャーン、ギーン、ガッシャーンて、でかい機械音のループが流れてたのと、お袋が洋服のデザイナーで、家でミシンを使っていて、そのループの音。あとその工房でクラシック(音楽)をずっと流してたんでその音。だから自分の中でクラシック音楽とノイズミュージックというか、サンプリングされたループみたいなものって、どこかノスタルジックなんですよね。
──ある意味、村田さんの体内の音というか。
みたいな感じはしますよね。
──だからノイズが美しく聞こえるんですね。ノイズって人工的で工業的なはずなのに、my way my loveではどこか人間的で優しくて美しい。
僕にとってノイズは都会的でファッション的なものというよりは、「ふるさと」だとか「ノスタルジック」だとかっていうキーワードになるんですよね。
1年間一生懸命がんばって休みました
──さて、今回のアルバム「The Fact Is」は2年ぶりのリリースとなるわけですが、その2年間の活動について教えてください。LUNA SEAのINORANのソロ活動にギタリストとして参加したりしていましたが。
前作を出したあと、震災があったり、契約的な問題もあったり、いい意味で時間がすごくできたんです。それこそ15歳からずっとこのスピードで走り続けていたんで、ゆっくり時間を過ごしました。その中で生まれた刺激から、今回のレコーディングに入っていきました。
──休んでいた1年はいかがでしたか?
そんなに休んだことないんで、急に休むのもすごく大変で(笑)。でも豊かな人生を送るために、1年間一生懸命がんばって休みましたね。
──ある意味アメリカの生活と真逆でしょ? 豊かであると同時にすごいリスキーでもあるし。
音楽家として1枚1枚の作品も“作品”だけど、結局トータルの歴史が“作品”になるとも思ってるんです。この1年がんばって休んで、村田はどこに消えたんだ?村田はもう終わったのか?とか言う人がもしいたら、それはそれでいいと思ってたんです。そう言われたあとの次の作品はきっと抑揚が付くはずだとも思ったんで。この1年間いろんな人に、いろいろ噂したり悪口言ってほしいなと思ってました。
──強いなあ。
my way my loveはカッコいい、村田はカッコいいって宣伝してもらうより、悪口のほうがたぶん広がると思うから。
- ニューアルバム「The Fact Is」/ 2013年7月3日発売 / 3000円 / dive in! disc / binyl records/ HDID-1001
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収録曲
- Element X
- Beautiful Junkies
- The Last Apple On The Tree
- Sparkle
- Refrain
- Sign
- Black Chord
- A Man Of Loser
- China Moon
- Biopic
- Good Days & Bad Days
- Shadownoiz
- The Last Apple On The Tree (Paper Bag Man Remix)
my way my love(まいうぇいまいらぶ)
2000年3月、The Juiceやthe cimonsのフロントマンとして活躍したYukio Murata(Vo, G)の新プロジェクトとして始動。現在はShozo Ishida(Dr)とKatsuya Hayashi(B)との3人編成で、ループを使用しノイズやパンクを融合させたユニークなサウンドを特徴としている。活動拠点は日本だが、アメリカやヨーロッパでもリリースやライブを行っており、激しいライブパフォーマンスは各地で絶賛されている。2013年7月にはbinyl records / dive in! discよりニューアルバム「The Fact Is」をリリース。それに伴い20公演以上のジャパンツアーを行う。