“みやかわくんらしい”ままじゃつまらない
──1月末にはぼくのりりっくのぼうよみさんからの提供曲「略奪」をシングルとしてリリースしました。この曲は今までのみやかわくんが持っていたさわやかなイメージを打ち砕く妖艶な楽曲で、新しいみやかわくんの姿を見ることができました。
「君に届け」や「イダテンドリーマー」みたいな“さわやかなみやかわくん”とは対極の位置にある曲を出してリスナーさんたちに衝撃を与えたかったんですよ。
──そこまで振り切った理由はなんだったんですか?
実は僕、「みやかわくんらしいね」と言われるより、「らしくないね」と言われるほうが刺激的に感じるんです。新しい曲を発表しているのに毎回「みやかわくんらしいね」と言われて、“みやかわくんらしい”ままじゃつまらないなと思ったんですよね。だから「略奪」をリリースしたときの「みやかわくんどうしたの?」「らしくないね」という反応がものすごくうれしくて、快感でした。このアルバムで僕はカメレオンのような存在なのかなと感じています。カメレオンがどんな景色にも擬態できるように、僕もいろんな色に自由自在に染まりたいなって思っています。
──なるほど。それでいうと今回の「RÉBECCA」は、どんな曲でも歌いこなすみやかわくんのカメレオンっぽさが詰まった1枚ですよね。「これ、みやかわくんの声? こんな声出るんだ!?」みたいな驚きがたくさんありました。
わー、その感想はめちゃくちゃうれしいです。
──「略奪」で新しい扉が開いたことによって、世間が抱く“みやかわくんらしさ”から開放されたみやかわくんがすごく自由に表現しているアルバムだと思いました。リード曲の「LiBERO」はエッジィでパワフルなミクスチャーロックで、みやかわくんにとっては新境地ですよね。
「LiBERO」は「みやかわくんってYouTuberなの? アーティストなの? よくわかんない」みたいなところから脱却すべく、“アーティスト・みやかわくん”がしっかりと伝わる曲を意識して作りました。とにかくカッコいいサウンドにしようと意気込んで、ド頭のSEは自分で作ったりもしていて。
ぼくりりとの制作で得たもの
──アルバムの流れで言うと、「OVERDRIVE」「略奪」の2曲を経て「LiBERO」に続いていきますが、「略奪」からグラデーションしているというか、テイストは違えどしっかり流れを汲んでいるなと思いました。
曲順にはこだわりました。序盤の3曲は、メインディッシュの「LiBERO」を存分に味わうための前菜として「OVERDRIVE」と「略奪」で舌慣らしをしてもらって、「LiBERO」を堪能してもらうみたいなイメージです。
──なるほど。
あと、このアルバムは「略奪」の影響を受けている曲が多いんですよ。「略奪」の制作のときにリリックの面で高く評価されているぼくりりと一緒に曲を作れたことが自分にとっていい経験で、すごく成長できたなと思っていて。
──ぼくりりさんとの制作で成長できたところは具体的にどんなところだと思いますか?
ワードチョイスとか行間の使い方とか……とにかく本当に勉強になることが多かったんですよね。「こんなに自由に歌詞を書いていいんだ!?」と驚きました。例えばデモでメロディを録るときに「ラララ」で歌う人もいるし、「ダララ」で歌う人もいて。ぼくりりは「ダララ」派なんですけど、最初から濁点の付いた音を混ぜてメロを作ると歌詞を乗せやすくなるんだって知ったんですよね。
──歌詞の中にひっかかりができる、みたいな感じでしょうか。
そうです。言葉が濁点の付いた音で区切られていくことで、「このニュアンスの近い言葉をはめよう」と、普通に書いたら出てこないような言葉がそこにはまっていくんですよね。「略奪」はぼくりりが作ったデモを夜中に2人で聴きながらPCの画面に向かってどんどん歌詞をつづっていったんですけど、最初に書いていた歌詞を見てぼくりりが「これじゃ刺激があんまりないし、どうせだったらみやかわくんが絶対やらなそうな曲を書こうよ」と提案してくれて。それでかなり攻めたセクシーな歌詞になったんです。出すときは正直ヒヤヒヤしたんですけど(笑)。
──結果的にはみやかわくんの音楽活動においてターニングポイントになる1曲になったと。
そうですね。「LiBERO」の次に入っている「Wonder」なんかは「略奪」での作詞経験がなかったら歌詞を付けるのは無理だったと思います。洋楽っぽいエッセンスを散りばめたオシャレな曲でデモに入っていた仮歌が英語だったので、日本語の歌詞を考えるのが本当に難しくて……なんとか形にできてよかったです。
自分からは行かないタイプです
──そしてアルバムは「Wonder」から「略奪」に作曲で参加しているケンカイヨシさんとコライトした「エソラゴト」へ続いていきます。
SNSで質問箱というのが流行ったじゃないですか。ケンカイさんがあれをやったら僕のリスナーさんたちがいろんな質問や相談をケンカイさんの質問箱に投稿してくれたんです。僕はケンカイさんから詳しい内容までは聞いてないんですけど、僕のリスナーさんたちが抱えているいろんな悩みとかみんなの気持ちを僕にシェアしたくてケンカイさんは「エソラゴト」という曲を持ってくれて。そういう音楽の作り方は面白いなと思ったので、ケンカイさんから曲のイメージを教えてもらって僕もラップの歌詞を書かせてもらいました。実はこの曲、「略奪」のもう1つの物語みたいなところがあるので、それを踏まえて聴いてもらっても新しい発見があると思います。
──確かに近い世界観の歌詞ですよね。
そうなんです。「エソラゴト」は歌っていくうちに本当の意味や伝え方を理解していけるのかなと思っています。
──現実と妄想の間を行ったり来たりするファンタジックな世界観が、楽曲の展開やみやかわくんが使い分けるさまざまなボーカルでうまく表現されているなと思いました。
ケンカイさんは10代の子たちにこういう難解なメロディや凝ったアレンジの曲を聴かせたいというこだわりがあるみたいなんですよ。僕の曲は難しい曲が多いんですけど、特に難しい曲かもしれないです。
──続く「セツナノウタ」はiTunes限定で「イダテンドリーマー」に収録されていたみやかわくん作詞作曲の1曲です。この曲は「スターランド」と近い世界観ですよね。
そうですね。歌詞の内容もそうだし、メロディも歌謡曲っぽい感じで。僕の中で「スターランド」の“弟曲”みたいな立ち位置の曲です。「セツナノウタ」で夕焼けの情景を描いて「Moonlight」に続いていく流れも気に入っています。「Moonlight」は月明かりに照らされた男女2人を想像して聴いてもらいたいんですけど、隣りにいる女性をずっと月明かりのように優しく包み込む存在でありたいという思いを持っているのに、その思いを伝えられない男性の心情を描きました。気持ちを伝えられないまま時間が過ぎていって、女性は別の男性とお付き合いを始めてしまって、それを陰ながら応援するという。ちょっと臆病な主人公の切ない物語という感じですね。
──すごく切ないストーリーが軽やかに歌い上げられていますよね。ちなみにみやかわくんは恋愛においてこの男性のようなタイプなんですか?
こういう状況になったことはないからわからないけれど、まず自分からは行かないタイプです(笑)。
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