2018年
イギリス最大級のロックフェス
「Reading and Leeds Festival」出演
──2018年の夏には、イギリス最大級のロックフェス「Reading and Leeds Festival 2018」に出演されました。
これはシンプルに僕の思い出として大きかったですね。「レディング」ってすごく憧れのフェスの1つで、Nirvanaが伝説的なパフォーマンスをした歴史があったり、自分の大好きな90年代のオルタナティブロックシーンのアーティストが数多く出演してきたフェスだったりするので、その地に立てたというのは非常に感慨深かったです。
──実際に出てみて、どうでしたか?
憧れていたのはもちろんメインステージの風景ですけど、当日はそんなの関係なく、現地の空気が吸えて、伝説の場所にいられたのがうれしかったですね。だからこそ、次はもっと欲張ってみたい自分もいます。「レディング」のときに思ったのは……ああいう巨大フェスで出演時間の30分前くらいにお客さんがもうワクワクしてヘッドライナーを待ってるムードがあるじゃないですか。あのボーダレス感がたまらなく好きなんですよ。そのアーティストがどこの国から来てるとか余計なことを考えている人は誰もいなくて、同じ空間にいるすべての人がひたすらにヘッドライナーを待ち焦がれている。まるで世界が1つになっているかのように。あれが僕にとって究極の目標かもしれません。
──今となっては、マンウィズが来るのを待ってくれている海外のファンもたくさんいますよね。
ありがたい限りです。「レディング」に出たのは海外へ向けて本腰を入れ始めて約5年が経った頃なので、自分たちを取り巻く状況もだいぶ変化していた気がしますね。各国へ行ってみると、「本当に待ってくれている人がいるんだな」と実感できたというか。特にヨーロッパでの活動は日本のカルチャーの知名度とも相まって、今のところ順調かなと思います。この10年で少しずつ積み上げてきた成果の1つが、伝説的フェスへの出演だったとも言えますね。
2019年 熊本城ホールのこけら落とし公演を実施
──2019年には、熊本城ホールでこけら落としライブを実施してます。
こけら落としなんて、なかなかできることじゃないですよね。しかも熊本城ホールというすごく大きな場所ですし、とても印象深い公演でした。僕らは最初のアクトを務めましたけど、そもそも熊本地震の復興支援をさせていただいたつながりがあっての抜擢だったので、「これから先もいろんなアーティストに復興支援に協力してほしい」「熊本の復興に何かしらの形で携わってくれれば」という思いでライブをさせてもらいました(※MAN WITH A MISSIONは前年に熊本地震の復興イベント「GAMADASE KUMAMOTO 2018」に出演。また、独自にプロジェクト「#サポウィズ」を立ち上げ、全国各地の被災地支援を行ってきた)。
──当日のことは、ほかに何か覚えてますか?
こけら落としということで、式典みたいなものも行われたんですよ。お偉いさん方もいらっしゃって、独特の雰囲気でしたね。ライブ中に思ったのは、立ち直ろうとしている人たちのパワーはすさまじいなということ。全員が一丸となって自分たちの住んでいる街や市を復興させていこうとするパワーを目の当たりにして、また力をもらっちゃったなって。
──また?
「支援させてもらっている」みたいな言い方をしていますけど、僕らは常々やれることをやらせていただいてるだけなんですよ。で、その中で被災地へ行った際、本来は自分たちが与えるべきパワーを、逆に現地の人たちからもらってしまって「すげえな……」と思う瞬間のほうが多くて。
──なるほど。
今回のコロナウイルスも然り、何かを食らってしまったとき、一番大切なのは動くことなんだろうなと思います。それを被災者の方々からむしろ学ばせてもらっている感じですね。文句を言うことはできるし、これがいけないあれがいけないという議論も大事ですけど、前向きに動いて立ち直っていこうとする力。その重要性をたびたび再確認させられています。
2020年 ドキュメンタリー映画公開
──アニバーサリーイヤーの始めに公開されたドキュメンタリー映画「MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-」は大きな話題となりました。映画製作のプロジェクト、振り返ってみてどうですか?
なんだか気恥ずかしい感じがあったり、10年間のクロニクルを作るのにちょっと身構えたり(笑)。本当にこの舞台挨拶の記事に書いてある通り、関わってくれた皆さんが僕らの10年間をどう受け取ったかが大事で、こうやって劇場に観に来てくれる人たちが作った歴史なんです。もちろん、自分たちで歩んできた自負だってありますよ。ただ、音楽というものはすべてを総括して育っていくカルチャーだと思っていますので。タイトルには我々のバンド名が冠されていますけど、MAN WITH A MISSIONに関わってくれた方々が作り上げた歴史を刻ませてもらった……そんな映画になりましたね。
──「こういう映画にしたい」というイメージはあったんですか?
基本的には監督のチェンコ塚越さんにお任せしましたけど、自分たちを中心に描くドキュメンタリー映画というよりは、やっぱり10年間の背景にあった人との関わりや、客観的に我々がどう見られていたのかということのほうが重要だと思っていました。なので、そこが非常に色濃く出たのはうれしかったですね。バンド仲間ってインタビュアーを通して真面目なことを聞くと、あんなに熱く語ってくれちゃうものなんだなとも思いました(笑)。そんな本音が確認できたのもありがたかったです。普段じゃ絶対にあそこまでシリアスに話しませんから!
──映画の感想をネットで見ていたら、「FLY AGAIN」のデモ版について気になってるファンの声が多かったですね。
あー、はいはいはい。デモの段階では当時のプロデューサーとかのリアクションがまあ悪くて、「こんなクソみたいな曲、本当にやんの?」という感じだったんですよ(笑)。もうね、けちょんけちょんに言われました。
──今や紛れもない代表曲の1つなのに。
もともと肉体的なノリは突出していたと思うけど、いかんせんデモのアレンジがあまりにも稚拙だったんでしょうね。でも、そこでへこたれず、イマジネーションを信じて押し通してよかったです。言ってみれば「FLY AGAIN」こそ、自分たちだけで作り上げた楽曲ではないですよ。お客さんがライブでめちゃくちゃアゲてくれて、あれだけ伝播したんですから。やっぱりあの動きがなければ、ここまでの現象は生まれなかっただろうし、マンウィズの代表曲になったのも皆さんのおかげです。
2020年 結成10周年イヤーにアルバム3枚リリース
──最後のトピックは、やはり結成10周年の集大成となるアルバム3枚のリリースです。4月にシングルB面曲とカバー曲をコンパイルした「MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION」、5月にリミックスアルバム「MAN WITH A "REMIX" MISSION」を発表、そして7月にベストアルバム「MAN WITH A "BEST" MISSION」をリリースします。
自分たちの音楽的な系譜や歴史をたどる作業がとても面白かったです。リミックスもたくさんやってきましたね。なんというか、僕の大好きなThe Chemical BrothersやThe Prodigyって当時、ロックバンド以上にロックをしてた気がするんですよ。
──バンドじゃないにも関わらず?
はい。ロックバンドのテイストとデジタルの破壊力を兼ね備えていて、それに世界中が歓喜して酔いしれて……で、呼応するかのように出てきたバンドと彼らがコラボしたりとか。ああいう相乗効果に憧れているんです。音楽がジャンルの垣根を越えるものであってほしい。そんな願いからですね、リミックスをやる理由は。
──今日話に出た楽曲も数多く収録されているベスト盤に関してはどうでしょう?
結成当初の2010年に作っていた楽曲に荒々しい衝動性が感じられる一方、近年の作品ではそこに洗練された面がプラスされていたり、バランスが興味深かったです。あとは、このバンドがどれだけ音楽的な挑戦をして、どんな要素を取り入れて変化しても、根っこにはロックミュージックに対する憧憬、情熱がずっとあるんだなと思いました。それがMAN WITH A MISSIONの特性なんでしょうね。もうね、わかりやすくあふれ出ちゃってるんですよ。ロックミュージックへの幻想にも似た理想像をメンバー全員が持ってる。各々のタイミングでレジェンドと言えるアーティストに触れてきて、その衝撃を忘れられないまま、自分たちの作品に投影してきたような気がします。
──ベストアルバムに収録されている新曲「Change the World」「Rock Kingdom feat. 布袋寅泰」を聴いても、同じようなことを思いましたね(※この2曲は7月にシングルとしてもリリース)。
最新曲でもめっちゃわかりますよね! いろいろな取材で「自分たちのバンドをひと言で表わすとどんな感じですか?」という質問をされるんですけど、その答えが2020年にベストアルバムをリリースする今、ようやく見つかった気分になりました。「Change the World」ではこの先も挑戦していく意志と共に、根っこの部分が変わらないことを宣誓してます。世の中はよく神頼みだとか、悪魔に魂を売らなければ力は手に入れられないだとか言ってしまいがちじゃないですか。でも、それってもう言い訳甚だしくて。実際に物事を動かすのは、世界を変えるのは、絶対的に我々の意志だと思うんです。ダメな方向になるとしても、よい方向に行くとしても。そういうメッセージを込めました。なので、ものすごくドラマティックなロックナンバーにしたかった。あとは、先程のずっと変わらない憧憬や衝動があえて赤裸々に出ているような楽曲にしましたね。
──「Rock Kingdom」は布袋寅泰さんをフィーチャーした楽曲ということで、グラムロックのノリを感じたりもします。
そうですよね。最初はそれこそ70年代っぽい古きよきロックアンセムになるのかなと思ったら、王道性がありつつ、実は時代の変化に対応してもいるサウンドになっているような、面白い仕上がりになりました。布袋さんのギターソロがオーセンティックからデジタルな質感に移り変わっていくのが、まるでギミックのように取れるというか。ロックにデジタル化の波が押し寄せてきている時代背景を表わしたようでもあって。皮肉にもアンチテーゼにも聞こえて興味深かったですね。これはあくまでも僕の分析ですけど。
──布袋さんとは2回目のコラボですね。
去年、布袋さんのアルバム「GUITARHYTHM VI」に収録されている「Give It To The Universe(feat. MAN WITH A MISSION)」に誘っていただいたとき、「自分たちの作品にも参加してもらえませんか?」と打診してみたら、「もちろん、いいよ」と二つ返事で快諾してくださったんですよ。特にKamikaze Boy(B, Cho)はBOØWY時代から布袋さんの大ファンなので、そりゃあもう喜んでましたね(笑)。やっぱり布袋さんって、誰が聴いても「布袋さん!」とわかるくらい個性のある音を鳴らしていますし、説得力もあって素晴らしかったです。まさに、ロックミュージックに対する憧憬をまっすぐ高らかに表現した曲になったんじゃないかな。
──1つひとつエピソードを聞かせていただき、ありがとうございました。10年間のニュースを振り返ってみての印象はいかがでしたか?
まー、いろんなことがありましたね。怒涛の勢いで10年歩んできたけど、実はかなりいいスピード感と肩の力の抜け具合でバンドをやれていたのかもしれないなって。ナタリーさんのようなニュースサイト、テレビ、ラジオで面白おかしく取り上げてもらうためにもいろんな試みをしてきて、実際にこうしてキャッチーにたくさん取り扱ってもらえていて、バンドの見え方がものすごく健康的でしたよね。なので、とても幸せな気分です。こちらこそ、ありがとうございました!