寿美菜子・高垣彩陽・戸松遥・豊崎愛生の4人が届ける、深い絆と信頼から生まれたシャッフルカバーアルバム

寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生によるコンセプトアルバム「シャッフル -Precious 4 Stars-」が1月26日にリリースされる。

マネジメント&レーベル・ミュージックレインの音楽の新たな楽しみ方を提案するプロジェクト「ミュージックレインCDコレクション企画」第2弾として発売される本作。2015年にイベント「Music Rainbow」で寿、高垣、戸松、豊崎が行った楽曲シャッフルコーナーから着想を得て、このアルバムでは4人がこれまでそれぞれソロでリリースしてきた楽曲をお互いにカバーし合っている。収録曲はメンバーによるディスカッションを経て決定。1人3曲ずつ、計12曲のカバー音源が収録されている。

2005年から2006年にかけて開催された「ミュージックレイン スーパー声優オーディション」で出会い、2009年にスフィアを結成した4人。お互いのことを誰よりも近くで見守り、手を取り合いながら歩んできた彼女たちは今、どのようにそれぞれの音楽に向き合ったのだろうか? 4人の絆、信頼、そして遊び心が見える本作について話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝

新たな魅力や意外な一面を引き出せる選曲に

──スフィアのメンバーがお互いのソロ曲をカバーし合うという今回のシャッフル企画ですが、端的に言って名企画ですね。

一同 やった!

高垣彩陽 もともとは私たちの中から「お互いの曲を歌い合ってみたいよね」というアイデアが出て、2015年に「Music Rainbow」というイベント内で、カラオケみたいな設定で実現させたんです。それを今回、ミュージックレインCDコレクション企画の第2弾としてCD化することになりまして。私たちとしてもイベントでやったシャッフルがすごく楽しかったし、またやりたいと思っていたのでうれしいです。

──選曲はどのように行われたんですか?

寿美菜子 最初にみんなで話し合ったんですけど、それぞれに歌いたい曲も歌ってほしい曲もあれば、タイミング的に「この曲はカバーしてもらうにはまだ早いかな」みたいな曲もあったので、結果的にリクエストという形になったんです。例えば私だったら彩陽、はるちゃん(戸松)、愛生ちゃんの3人それぞれに「この曲を歌ってくれたらうれしいな」という曲をだいたい2曲ずつ挙げて、その中から選んでもらいました。

戸松遥 私も2曲ずつ候補を出して、なぜ歌ってほしいのかという理由はあえて伝えず曲名だけを送ったんですけど、なんとなく「こっちが選ばれるかな」という予想をしていて。そしたら3人とも……。

寿 予想通り?

戸松 予想通りというか、理想通りで。もちろんどちらを歌ってくれてもうれしかったんですけど、なんとなくの予想が全部当たったので「わああああ!」ってびっくりました。

豊崎愛生 みんなと15年ぐらい一緒にいるので、私たちはそれぞれのソロの音楽活動を一番近くで見てきたんですよね。だからこそリクエストする曲も大事に選んだんですけど、基本的には3人の新たな魅力や意外な一面を引き出せる選曲にできたらいいなと。例えばみなちゃん(寿)なら“寿ロック”のカッコいいイメージも大きな魅力の1つだけれど、私にとってはかわいい妹みたいな、ふにゃっとしたところもあって。

寿 ふふ(笑)。

豊崎 そういう一面も見たかったので「ハニーアンドループス」(2017年5月発売の豊崎の15thシングル表題曲)という、子供向けアニメ(「プリプリちぃちゃん!!」)のタイアップだった曲をリクエストしてみたり。逆にはるちゃんには、リリースしたときからずっと「絶対にはるちゃんが歌ったら似合う」と思っていた「Uh-LaLa」(2015年6月発売の豊崎の13thシングル表題曲)を歌ってもらいました。そして彩陽ちゃんは、偶然にもお互いにリクエストした曲のテーマというか、伝えたいメッセージが根本的なところで通じていて。

──高垣さんは「ディライト」(2014年3月発売の豊崎の10thシングル表題曲)を、豊崎さんは「たからもの」(2011年4月発売の高垣の3rdシングル表題曲)を歌っているので、言われてみれば確かに……。

豊崎 アプローチはちょっと違うんですけど、どちらも前向きな「さよなら」の曲というか。

高垣 別れと始まりの曲だよね。

豊崎 彩陽ちゃんとはお互いに考えていることが似ているんだなって、改めて思いました。

「今“遥”に 恋をしているよ」とコールしてほしい

──選曲に関しては、僕は皆さんがそれぞれ歌いたい曲を出し合った結果なのだと勝手に思っていたので「へえ、この曲が好きなんだ」みたいな感じで楽しんでいたのですが、リクエストだったんですね。

高垣 でも、そう言っていただけるとうれしいですね。お互いに「この曲が似合うかな?」「こういうのも歌ってほしいな」というのを考えてリクエストし合った曲を、歌う側が自分で選んだのだと思ってもらえるということは、何かしら一致しているものがあったのかなと。

──それぞれがソロで歌っている曲というのは、普段から気になるものですか?

高垣 気になる……そうですね、私個人としては、はるちゃんが「産巣日の時」(2008年11月発売の戸松の3rdシングル表題曲)をリリースしたときに「私、こういう曲大好き!」と思って。かなり初期の曲だよね?

戸松 3枚目のシングルだね。

高垣 何回も聴いたし、自分のラジオでも何かにつけて「私の一番好きなはるちゃんの曲です」と紹介してかけさせてもらったりしていて。なので今回のシャッフル企画でも「『産巣日』が来たらいいなあ」と思っていたら、まんまとはるちゃんがリクエストしてくれたので迷いなく選びましたね(笑)。でも、歌ってみたら難しかったです。「はるちゃん、よく息が続くな……」って。

戸松 いやいやいや!

高垣 作品ありきの歌い方でもあったと思うんですが(「産巣日の時」はアニメ「かんなぎ」のエンディングテーマ)、当時のはるちゃんの歌声から感じた神聖さ、神々しさを、私なりにこの曲と向き合ってどう表現していくか悩みつつも念願が叶ってすごくうれしかったです。

戸松 私も「『産巣日』を歌いこなせるのは彩陽しかいない」とずっと思っていたので迷わずリクエストしましたし、「『産巣日』を選んでくれ!」と願っていたんですけど、彩陽の「産巣日」は私の想像を超えていて感動しましたね。「ありがとう。『産巣日』が報われた」みたいな。

高垣 そんなに?(笑)

戸松 「産巣日」を歌った当時、曲が難しすぎて迷走していたんですよ。作品がなかったら歌えなかった曲だし、私も半分キャラソンのような気持ちで臨んだんですけど、歌の技術をはじめ自分に足りないものがいろいろあるのを感じながらレコーディングしていて。そんな思い出もある、古い曲にも光を当ててもらえるという意味でもすごくいい機会だし、その中でも「産巣日」は特に化けたというか、歌ってもらえて本当によかった。

──戸松さんは、3人のソロ曲で気になっていた曲などはありました?

戸松 「気になっていた」の意味がちょっとズレるんですけど、私は美菜子が何をリクエストしてくるんだろうかとドキドキしていて。美菜子はライブでも回を重ねるたびにパワーアップしていて、しかもそのスケールが“倍”じゃなくて“乗”みたいな感じなんですよ。それを見てしまっているので、どの曲が来ても歌える気がしないと思っていたら「Startline」(2010年11月発売の寿の2ndシングル表題曲)という……2枚目だっけ?

寿 うん、2枚目。

戸松 「なるほど、初心の曲か!」と自分の中でしっくりきて。美菜子のライブだとサビ終わりの「今確かに 恋をしているよ」という歌詞のところでお客さんが「今“美菜子”に 恋をしているよ」とコールすることで完成する曲なので、「そこに“戸松”が入ってしまっていいんですか?」という戸惑いもあったんですけど(笑)。この「Startline」はスフィアのライブのソロコーナーでも何度も聴いてきた曲だったんですが、いざ自分が歌う立場になって歌詞を読むと「こんなにもかわいい恋心を歌ってたんだ!」と改めて気付くことができましたね。

寿 はるちゃんの「Startline」かわいかった。

戸松 ありがとう! 私もかわいい曲を歌えてうれしかったよ。

寿 もしシャッフルのライブができたら、お客さんに「今“遥”に 恋をしているよ」とコールしてほしい。

戸松 自分の名前の読みが3音でよかった。

寿 確かに。愛生ちゃんだと「あぁき」って母音を伸ばさなきゃいけないから。

豊崎 字足らず。

近くで見守っているファンみたいな関係性

──寿さんはリクエストされたとき、どんなことを思いました?

寿 リクエストはメールで共有する形だったんですけど、オーディションの結果を見るようなドキドキ感があって。

高垣 課題曲の発表的なね。

寿 そうそう。しかも、みんなのソロ曲はリリースのタイミングやライブで聴くだけじゃなくて、私たちはラッキーなことにその制作過程もリアルタイムで見ているんです。この4人は、私がイギリスに行っていた1年半やパンデミック下の状況は別として、スフィアとして最低でも週1、多くて週3ぐらいの頻度で会っていて。そこで「この曲の歌詞で悩んでるんだよね」とか「ジャケットはこういう感じにしようと思ってる」みたいな話を聞いたりしていたので、それぞれが楽曲に込めた思いも一緒に受け取っているんですよ。だからリクエストされた中からどの曲を選ぶかは責任重大だったんですけど、例えば彩陽が「産巣日の時」を好きだったように、私は「ラブ♡ローラーコースター」(2015年3月発売の戸松の3rdアルバム「Harukarisk*Land」収録曲)が、はるちゃんの楽曲の中で一番好きで。

戸松 どうも(笑)。

寿 私も自分のお誕生日とかにラジオで「ラブ♡ローラーコースター」をかけていたんです。あとこの曲は、はるちゃんが「ライブでパフォーマンスするとき、がっつり踊らなくてもいいんだけど、何もないのも寂しくて」と言っていたので、実は私が簡単な振りを付けさせてもらったんですよ。それもあってリクエストしてくれたんだろうなと思って、「ラブ♡ローラーコースター」一択でした。逆に愛生ちゃんの曲は、「ハニーアンドループス」ともう1つのリクエスト曲とで最後まで迷ってしまって。

豊崎 迷わせてしまった。

寿 寿ロック的なカラーを生かすならそちらの曲だったかもしれないんですけど、愛生ちゃんの楽曲の中で一番踊れるのが「ハニーアンドループス」だし、私も踊りたいと思って選ばせてもらいました。彩陽の「Futurism」(2017年8月発売の高垣の11thシングル表題曲)はアニメ「シンフォギア」第4期(「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」)のエンディングテーマで、ちょうど私もサンジェルマン役で出演していたので、私とサンジェルマンの思いを込めて歌いたいなと。自分の中ではどの曲も「神曲が来た!」という感じでしたね。

豊崎 みなちゃんも言ってくれたように、この4人はお互いに誰よりも近くで見守っているファンみたいな関係性なんですよね。それぞれのパーソナルな部分まで知っている分、例えば彩陽ちゃんだったら、アルバムには収録されていないけれど「Dear One」(2021年4月発売の高垣のベストアルバム「Radiant Memories」収録曲)のような本人が作詞した曲を聴くと胸がいっぱいになるというか。「あの子が自分で言葉を選んでこんな歌詞を書くなんて、すごいことだ」みたいな。

高垣 親目線(笑)。

豊崎 「何様?」という感じなんだけど(笑)、やっぱり彩陽ちゃんの心境の変化とかを感じられてうれしくなっちゃって。ただ、そういうパーソナルな、自分じゃ絶対できないことが詰まっている曲ほど好きになるしうらやましくもなる反面、カバーするのが難しいんです。みなちゃんの「I wanted to do」(2018年1月発売の寿の3rdアルバム「emotion」収録曲)は、本人から「自分が書いた歌詞を歌ってほしい」と言ってもらったんですけど、私が歌うとみなちゃんの積極性とかポジティブさにはどうしても追いつかない部分が出てくるんだなって。

寿 (笑)。

豊崎 それがすごい発見でした。それぞれの楽曲のパーソナルカラーが強いからこそ、歌い手が変わると全然別モノになるというか。だから最初はみなちゃん、彩陽ちゃん、はるちゃんが表現したかったことをなぞるようにカバーしようと思ったんですけど、途中から「私ならではの表現を目指したほうが面白いんじゃないか」と考え方が変わって。「たからもの」も彩陽ちゃんにとってすごく大事な曲だというのは承知のうえで、「私だったらここの歌詞は笑って歌うかな」とか。はるちゃんの「こいのうた」(2009年5月発売の戸松の4thシングル表題曲)もけっこう昔の曲なので……。

戸松 12年前だね。

豊崎 当時のはるちゃんから染み出るフレッシュさ、かわいさ、ピュアさは今の私じゃカバーしきれない(笑)。なので少しばかり解釈を変えて、現在進行形の恋というよりは、大人の私が初恋を懐かしむようなテンションで優しく歌ってみたり。そんなふうにみんなの頭の中に入って、みんなの目から世界を見るような感覚もあって楽しかったです。