寿美菜子・高垣彩陽・戸松遥・豊崎愛生の4人が届ける、深い絆と信頼から生まれたシャッフルカバーアルバム (2/2)

「こいのうた」は愛生をモデルにして歌ったんです

──「こいのうた」は3拍子の穏やかなギターポップで、豊崎さんにめちゃくちゃハマっていると思いました。別の言い方をすれば「それをリクエストした戸松さん、グッジョブ」ということになるのですが、なぜこの曲を?

戸松 よくぞ聞いてくださいました。まさに「こいのうた」は、愛生をモデルにして歌ったんですよ。当時こういうふわっとした曲調の、しかも恋愛の歌に挑戦するのは初めてだったので、自分の中で軸がなかなか定まらなくて。悩んだ結果「愛生が歌ったらどうなるだろう?」とイメージして、そこに軸足を置きつつ自分の歌として表現したんです。あれから12年の時を経てシャッフルという機会に恵まれたので、ぜひ愛生本人に歌ってほしいなと。

豊崎 本人はあなただから(笑)。

戸松 そうなんだけどね(笑)。でも、リクエストした2曲のどちらが選ばれるかは愛生次第だったから、「こいのうた」が選ばれたときは「よっしゃあああ!」みたいな。

豊崎 それを私は先週まで知らなかったんですよ。はるちゃんは言わないから。でも、実は似たようなエピソードが私にもありまして。はるちゃんに歌ってもらった「Uh-LaLa」はつじあやのさんに作っていただいたロックンロールな楽曲で、当時の私にとって初めてと言っていい、夏の曲だったんですよ。ミュージックビデオでもひまわり柄のTシャツを着て歌っているんですけど、私の中でひまわりははるちゃんのイメージで。はるちゃんが歌ってきた夏の曲も大好きだったので、私も「Uh-LaLa」のレコーディングのときに「はるちゃんみたいに元気に歌いたい」と思っていたんです。彩陽ちゃんとは楽曲のメッセージで通じていたように、はるちゃんとは楽曲のモデルで通じていたというのが、今になってわかりました(笑)。

──この流れで、僕が面白いと思ったカバーについてお聞きしてもいいですか?

一同 もちろんです。

──まず寿さんは、豊崎さんの「ハニーアンドループス」です。寿さんはソロでEDM的な曲をよく歌っていますが、「ハニーアンドループス」のようなディスコも似合いますね。

寿 おおー。このアルバムでは基本的に、原曲からアレンジも何も変えずにカバーするという難易度の高いことをしているんですけど、実は「ハニーアンドループス」だけはキーを半音だけ下げさせてもらっていて。そうすることで、私らしさと愛生ちゃんらしさがミックスされた感じにできそうだとディレクターさんとも話したんです。「ハニーアンドループス」はコーラスもたくさん入っていて、それも愛生ちゃんが歌っていた元の音源を使っているので、このアルバムにはそういうコラボレーションも詰まっているんですよ。

──そう。「ハニーアンドループス」なら主旋律は寿さんだけど、コーラスは豊崎さんという。

寿 そうです。バランスは曲によって違うと思うんですけど、特に「ハニーアンドループス」は愛生ちゃんの声がよく聞こえていいなって。私はソロではこういうかわいらしい、力の抜けた感じの曲はあまり歌ってこなかったし、だからこそ愛生ちゃんもリクエストしてくれたんだと思って、レコーディングではずっとノリノリで踊りながら歌っていました。

豊崎 いい曲でしょ?(笑)

寿 その中で個人的にはDメロがポイントで。歌詞もここでちょっと内面的になるので、全体としてはカラッと歌いつつ、Dメロだけは湿度高めに、大人な雰囲気を出してみても面白いかなと。

豊崎 普段みなちゃんがソロで歌っている現代的でおしゃれなダンス曲ももちろん素敵なんですけど、「ハニーアンドループス」はモータウンとか昔のファンクをベースに作っていて。同じダンスミュージックでも時代感が違えばまた別の表情が見えるんじゃないかと思ったし、実際に見せてもらいました。

美菜子の葛藤や決意、覚悟がありありと想像できた

──一方、高垣さんは寿さんの「save my world」(2019年1月発売の寿の12thシングル表題曲)という、EDMマナーに則った曲を歌っているのが非常にカッコよかったです。

高垣 ありがとうございます。さっき愛生ちゃんが、美菜子の「自分が書いた歌詞を歌ってほしい」という気持ちに応えたという話をしていましたが、実は私も美菜子には「Futurism」と、私が作詞した「Lasting Song」(2019年8月発売の高垣の12thシングル表題曲)を投げていたんですね。どちらも「シンフォギア」のエンディングテーマで、結果的に美菜子は自分がサンジェルマンを演じた4期の「Futurism」を歌ってくれたんですけど。

寿 気持ちは受け取った。

高垣 そう、リクエストの時点では気持ちがリンクしていて、「save my world」も美菜子が歌詞を書いた曲で。リリースされたときも聴き手として美菜子の思いを受け取っていたつもりだったんですけど、改めて歌詞と向き合ったら泣けてきちゃったんですよ。「美菜子はイギリスに行くという大きなチャレンジを前に、こういうことを考えていたのかな」とか、この歌詞を書いた当時の美菜子の葛藤や決意、覚悟といったものがありありと想像できて。

──「save my world」は寿さんが渡英する前の、最後のシングルでしたね。

高垣 それを自分なりに歌おうと思ったとき、愛生も美菜子の積極性に追いつかないみたいなことを言っていましたけど、「save my world」にも「間違ってない このひらめきはchance」という歌詞がありまして。私も自分のことを「間違ってない」とはなかなか言えない人間なんです。だけど「美菜子がそう言ってくれるなら」と、歌詞に引っ張られるような気持ちで歌わせてもらいました。実はレコーディングのときは、美菜子がリモートで参加してくれて。

寿 のぞいちゃいました(笑)。

高垣 私はリズムに対して苦手意識があるんですけど、「save my world」はリズムの取り方にしても言葉のはめ方にしても技術的にすごく高度なことを要求される曲で。美菜子はさらっと歌っていたから、自分で歌ってみるまでその難しさがわからなかったんです。なので「ここ、どうやって歌ったの?」とか、美菜子先生に質問しながら録っていました。

寿 彩陽は、私だったら「今のでOKでしょ!」と思うテイクでも「いや、ちょっとズレた」と悔しそうにしていて。ディレクターさんも「本当に?」と疑うくらいの丁寧さとこだわりを持って曲に向き合ってくれて、私も教えられることがたくさんありました。

高垣 私も美菜子の「Futurism」のレコーディングにリモートで参加させてもらったんですけど、美菜子は「はーい、歌いまーす」みたいなリラックスしたノリで、最初から一発OKレベルの完成度でキメてくるんです。だからさすがだなって。

寿 ちょこっとだけ余談を続けると、「Futurism」を録っているときにディレクターさんから「もっと彩陽の悲壮感を出してほしい」とディレクションされました。

高垣 そうだった(笑)。

寿 いつもの私のテンションだと軽すぎて、「もうちょっと重く受け止めてほしい。いろんなことを」と(笑)。

彩陽の歌の重みと美しさを引き継ぐことを一番に

──そして戸松さんは、高垣さんの「光のフィルメント」(2010年11月発売の高垣の2ndシングル表題曲)が特に新鮮でした。戸松さんのパブリックイメージとは異なるメランコリックなエレクトロポップを、戸松さんのカラーで表現していて。

戸松 おお、うれしい。彩陽の曲も「何が来るんだろう?」と緊張していたんですけど……これもけっこう前だよね? 2010年?

高垣 あれは2枚目だから、そうだね。

戸松 だから10年ぐらい前の曲で、自分の中ではスフィアのツアーで彩陽が歌っているのを袖から観ていた印象がすごく強かったんです。でも、やっぱり自分が歌う立場になると袖で観ていたときの景色とは何もかも違っていて。実はレコーディング前に一番聴き込んだのが、彩陽の曲なんですよ。

寿高垣豊崎 へえええ。

戸松 コーラスも含めて「なんて美しい音なんだろう」と。今まで自分の曲でもこんなにコーラスに注目したことはなかったのに(笑)。特に彩陽の高音って、聴き手としては「きれいだな。聴いていて気持ちがいいな」ぐらいのお気楽な感覚で聴いていたんですけど、歌い手として向き合うと「この音を出すのって、こんなに難しいんだ」「自分だったらどうやって出そう?」とか、いろいろ考えなきゃいけないことが多くて。いつものように「スパーン!」と歌うとこの曲の美しさや繊細さが損なわれてしまうというか、一歩間違うと「ウェーイ! 光のフィルメントー!」みたいになっちゃうから。

──光が強すぎる(笑)。

戸松 私の性格的な問題で(笑)。実際、レコーディングでもそうなってしまいがちだったんですけど、そこは彩陽の歌の重みと美しさを引き継ぐことを一番に考えつつ、その中で自分のオリジナリティも出していこうと。あと「コーラス部分は彩陽成分を多めに残しておきたいです」という話もしていて、そういう意味では3曲の中で一番本人に寄り添いながら歌った曲になりましたね。

高垣 うれしい。実は遥に何を歌ってもらおうか、かなり迷ったんですよ。声質も音楽性も性格も全然違うので。最初は「ソードアート・オンライン」のタイアップ曲のイメージで「カッコいい遥もいいな」と思って「シンフォギア」楽曲とかを挙げたんですけど、改めて自分の曲を聴き直して、逆に化学反応を期待したというか。「これを遥が歌ったらどうなるんだろう?」と気になったのが「光のフィルメント」だったんです。

戸松 おお、そうだったんだ?

高垣 eufoniusのお二人が作ってくださった「光のフィルメント」はとても美しくて繊細で、ある種の難解さもある曲なんですよね。そんな曲を、さっき本人は「スパーン!」と言っていましたけど、あの心地よく突き抜けるような声で歌ったらどうなるのか。そこにすごく興味が湧いて、後出しで「やっぱり『光のフィルメント』を歌ってほしいんだけど」とお願いしたんです。結果、「はるちゃんの声はこんなふうにきれいに響くのか!」と驚きつつ、遥の透明感のある声を引き出せた気がして、高垣としては「どや!」という感じです(笑)。

私たちだからこそできる遊び方

──僕はこの取材前にオリジナルとカバーバージョンを聴き比べていて、その時点でかなり面白かったのですが、今日お話を伺ってより面白く聴けそうです。

寿 うれしいです。私たち自身も「またいつかやりたいね」と言っていたシャッフル企画だったんですが、正式な音源として残すという点で、ライブイベントで歌ったときよりも1つハードルが上がった部分はあったんです。でも私たちも大人になり、グループとしても個人としても、多少なりとも熟成したからこそできた企画だと私は思っていて。バックの音やコーラスもオリジナルの音源を生かしながら、大切にしながら歌ったことで、本当にプレシャスなアルバムに仕上がったという自信があります。なのでぜひとも聴いていただきたいですし、原曲との違いを楽しむというか、一粒で二度おいしいみたいな感じで楽しんでいただけたらなおよしですね。

高垣 美菜子の言う通り、ライブでやるのと音源になるのとでは責任感も緊張感も全然違って。私は「3人の思いも全部背負って歌うぞ!」という意気込みでレコーディングに臨んでいて、より相手の重みを感じるためにそれぞれのグッズを着て行ったんですよ。ただ「産巣日の時」は、戸松さんのまぐろTシャツを着て歌ったので楽曲とはミスマッチというか……(「LAWSON presents 戸松遥 BEST LIVE TOUR 2016~SunQ&ホシセカイ~」にて、会場ごとに異なる寿司ネタをモチーフにした限定Tシャツが発売された。まぐろは中野サンプラザホール2日目のもの)。

戸松 何してるの?(笑)

高垣 絵面的におかしなことになっていたかもしれないんですけど、ここまで深く相手の音楽と向き合ったのは、15年ぐらい一緒にいて初めてなんですよ。だから私たちとしてもよりお互いの絆を深められたし、お互いのいいところを分かち合えたし、それを作品に落とし込むことができたのですごくいい機会でした。聴いてくださる方にとっても、何かしら発見があったり可能性を感じられたりするものになっていたらうれしいです。そして、シャッフルのライブもやりたい!

戸松 私は、この企画で4人の可能性が広がったと感じています。お客さん的には音源やライブでたくさん聴いている曲ほどオリジナルのイメージが強くなっていると思うんですけど、それをシャッフルすることで別の角度から光が当てられるというか、曲の立体感も増したんじゃないかなと。しかも私たちの場合、カバーする相手と15年も一緒にいて、ずっと信頼関係を築いているんですよね。そういう関係性だからこそ成立した企画だし、今回はパッケージ化するということで、イベントで「わーい、みんなの曲を歌えて楽しい!」とカラオケ感覚ではしゃいでいたときとは比べものにならないぐらい、相手へのリスペクトも楽曲への理解も深まっているんです。そんな4人の新たな一面を、アルバムを通してお見せできたと思います。

豊崎 自分たちで言うのもおこがましいし恥ずかしいんですが、「Precious 4 Stars」というのは事務所の方々が付けてくださったタイトルで。つまりミュージックレインという事務所の中で、私たち4人は大切なスターだという意味合いが込められて……やっぱり自分たちで言うのは恥ずかしいな(笑)。

寿高垣戸松 (笑)。

豊崎 でも、そういうふうに思ってくださるのはすごくうれしいし、じゃあ私たちが星のようにキラキラ輝いている瞬間はどんなときかというと、全力でいろんなことを楽しんでいるときだと思うんです。今回のアルバムも、ある意味で内輪ノリな企画ではありつつも、私たちだからこそできる遊び方で……いや、別に遊びで作ったわけじゃないんですけど(笑)、大人が全力で真面目に遊んだ成果みたいな、楽しさのこもった1枚になりました。

──本人が歌っていないベスト盤みたいなところもありますよね。

高垣 確かにそうかも。

豊崎 だからシャッフルのライブが実現したら、ドッキリとかモノマネ番組のご本人登場演出をやり続けながら歌いたいという話をみんなでしていて。そんな、夢が膨らむ企画です。

プロフィール

寿美菜子(コトブキミナコ)

1991年9月17日、兵庫県生まれの声優 / アーティスト。2010年9月にシングル「Shiny+」でソロデビュー。2018年1月にリリースした3thアルバム「emotion」で6曲の作詞に初挑戦した。2019年1月に表題曲、カップリング曲ともに自身で作詞を手がけたシングル「save my world」をリリースし、5月に東京・Zepp Tokyoでライブ「LAWSON presents 寿美菜子 One day show up #1」を開催。その後渡英し、2021年11月に帰国した。

高垣彩陽(タカガキアヤヒ)

1985年10月25日生まれ、東京都出身の声優 / アーティスト。2010年7月にシングル「君がいる場所」でソロデビュー。2011年11月よりカバーミニアルバムシリーズ「melodia」を発表している。2016年11月に東京・Bunkamuraオーチャードホールでソロコンサート「LAWSON presents 高垣彩陽クラシカルコンサート『Premio×Melodia』」を開催した。2019年8月に「戦姫絶唱シンフォギアXV」のエンディングテーマ「Lasting Song」をシングルリリース。2021年4月にベストアルバム「Radiant Memories」をリリースした。

戸松遥(トマツハルカ)

1990年2月4日、愛知県生まれの声優 / アーティスト。2008年9月にシングル「naissance」でソロデビュー。2016年6月には初のベストアルバムを2枚同時にリリースした。2018年5月に約3年2カ月ぶりのオリジナルアルバム「COLORFUL GIFT」をリリースし、7月よりライブツアー「LAWSON presents 戸松遥 5th Live tour 2018 ~COLORFUL GIFT to YOU~」を開催。2019年11月にテレビアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」のオープニングテーマ「Resolution」を表題曲とした20thシングルをリリースした。

豊崎愛生(トヨサキアキ)

1986年10月28日、徳島県生まれの声優 / アーティスト。2009年10月にシングル「love your life」でソロデビュー。2017年には初のベストアルバム「love your Best」をリリースした。2021年6月に5年ぶりのオリジナルアルバム「caravan!」を発表。7月にワンマンライブ「LAWSON presents 豊崎愛生 コンサート2021~Camel Back hall~」を計4公演行った。

スフィア

ミュージックレインに所属する声優の寿美菜子、高垣彩陽、戸松遥、豊崎愛生からなる4人組ユニットとして、2009年4月にシングル「Future Stream」でメジャーデビュー。2015年2月にはデビュー5周年を記念して、ファンセレクトのベストアルバム「sphere」をリリースした。2017年11月に千葉・幕張イベントホールで開催された全国ツアーの追加公演「LAWSON presents Sphere live tour 2017 "We are SPHERE!!!!!"」をもって、約1年半の充電期間に突入。結成10周年イヤーとなる2019年2月に千葉・舞浜アンフィシアターでライブ「LAWSON presents Sphere 10th anniversary Live 2019"Ignition"」を行い、音楽活動を再開した。同年5月に“10th Anniversary Album”として「10s」をリリースし、9月より全国ツアー「LAWSON presents Sphere 10th anniversary Live tour 2019 "A10tion!"」を開催。2020年2月には東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで全曲ライブ「LAWSON presents Sphere 10th anniversary Live 2020 “スフィアだよ!全曲集合!!”」を2DAYS実施した。同年5月にユニットのYouTube公式チャンネルを開設し、メンバーの個性あふれる動画企画を発信している。2021年2月に配信シングル「スクランブルデイズ」をリリースした。