ナタリー PowerPush - フィッシュマンズ×サカナクション

白熱“魚”ライブの裏側 WOWOW連動インタビュー

お客さんの反応がリアルだった

──山口さんは今回のライブの手応えはいかがでしたか?

山口 難しかったですね(笑)。最前列にフィッシュマンズの「I'm FISH」のTシャツ着た人たちがたくさんいたんですよ。で、僕らがステージに出ていったとき、僕らのことを観に来てくれてた人たちはワッと立ち上がったんだけど、「I'm FISH」のTシャツ着た人たち何人かは座ったまんまで。「これがフィッシュマンズの洗礼か!」と思った。

茂木 あはははは(笑)。

インタビュー風景

山口 だから「この人たちをなんとか立ち上がらせたい」「気持ちをつかみたい」っていう気持ちでがんばりました。結局何人かのお客さんは途中で帰っちゃったんですけど、でも残って見てくれた人たちが、僕らがバンド形態からラップトップ形態に切り替わったときに、ワッて立ち上がって、食い入るように見始めて、後半は僕らの音楽を楽しんでくれたんですよね。その感じがすごくリアルだった。僕が例えばサカナクションを知らないで、あのライブに来ていたら同じような感じだろうなって思ったから。

──ある意味シビアな反応ですよね。

山口 今までは正直、勝ちライブばっかりだったんですよ。同じフィールドで同じような年齢層のファンを持ってるバンドとしかやってなかったから。本当の意味での勝負っていうか、東京に出てきたばっかりのときのような感覚を今回味わえたっていうんですかね。ハラハラしたけど、終わったあとはすごく達成感を感じました。

茂木 いやー、もうサカナクションは圧倒的だったけどね。客席で観てたけどものすごかったよ!

山口 でも久々でしたよ。ライブ中にお客さんが帰っていく姿を見たのは(笑)。

茂木 いや、その人はやむを得ない予定があったんだよ。

山口 だけどそういう人たちの気持ちも最後にはつかむことができたと思うから。

茂木 いや、でも本当にフィッシュマンズのほうがチャレンジャーだって感じたよ。みんなサカナクションでドカーンと盛り上がって、なんかもう俺たちこそ逆境だって、そういう気持ちでいっぱいだったから。

熱量だけは絶対負けたくない

──茂木さんはサカナクションのライブをご覧になっていかがでしたか?

茂木 すごく勉強になったね。ライブの流れというか、ストーリーが見事で。僕もフィッシュマンズでデビューしたからっていうのもあって、ライブならではのアレンジと起承転結っていうのはすごく大事にしてるつもりだし、初めて観に来た人の気持ちをどれだけつかめるかっていうのはいつも考えるけど、そのあたりサカナクションはすごくしっかりしてるって思った。

山口 そうやって言ってもらえるの、本当にうれしいです。

茂木 これは勘ですけど、サカナクションってライブが終わったあとに、ちゃんとバンドでミーティングしてるような気がする。毎回しっかりやってるんじゃない?

山口 いや、それが全くないんですよ。

茂木 えっ、そうなの?(笑)

山口 ライブ音源は各自持って帰るけど、それぞれ自習っていうか1人反省会みたいな感じで。楽屋で着替えながらその場でちょろっと話すくらいで、あとは次のリハーサルですね。フィッシュマンズはどうだったんですか、当時?

茂木 当時はよくしゃべってたよ。「ここのリズムが……」とかそういう話をよくしてた。僕なんかダメ出しばっかりされてましたからね(笑)。

山口 意外ですね。

茂木 ダメ出しされて「負けるもんか!」みたいな。やっぱり自分たちの音楽を愛してるから、未熟だけども、熱量だけは絶対負けたくないって思ってた。その感覚は今もあるね。

山口 僕らもバンド結成した当初とかは、スタジオでも笑顔禁止とか、あくびしたら「どういうことだ!」みたいな感じですごく厳しくやってたんですけど。

茂木 あはははは(笑)。

山口 でもそれを続けてると、うまくはなっていくけど、やっぱり楽しくなくなるんですよね。

茂木 遊びがなくなってくるからね。

山口 ライブを重ねてそこに気付いてからは、もう何も言わなくなりました。ただ制作やリハのときに、メンバー同士のディスカッションはすごくしますけど。

茂木 ああ、でも佐藤くんも最初そうだったな。「ここはこういうフレーズじゃなきゃいけない」みたいなところがあった。そういう季節があったね。でも途中からは自主性を大事にして、それぞれが自分の持ってきたアイデアに責任持ってやるようになったな。サカナクションのメンバーもそういう感じがするけど。

山口 プライドがすごい高いんですよ、うちのバンド。だからそのプライドをへし折るよりは、自分が持ってきたものに自信と責任を持ってやってもらうのがいいと思うし。そこを意識するようになってから、本当にバンドが劇的に変わっていったし、うまく回るようになりましたね。

茂木 素晴らしい。

山口 そこは演技できないところですよね。

茂木 うん。何かに合わせるとかじゃなくて、サカナクションだったら5人全体がドンと、こうびっくりするくらい前に出てくる瞬間みたいなもの。僕だったらそこにチケット代を払うと思うんだよね。そういうムーブメントっていうか、明らかにキテる感じがサカナクションはすごくあると思う。

インタビュー風景

MUSIC STYLE JAPAN

ミュージックスタイルJAPAN
フィッシュマンズ × サカナクション

WOWOWライブ
2012年6月17日(日)22:30~

プロフィール写真

フィッシュマンズ

1987年に佐藤伸治(Vo, G)を中心に結成されたロックバンド。1991年に小玉和文(ex. MUTE BEAT)のプロデュースのもと、シングル「ひこうき」でメジャーデビューを果たす。当時のメンバーは佐藤、茂木欣一(Dr)、柏原譲(B)、ハカセ(Key / 後のHAKASE-SUN)、小嶋謙介(G)。ライブではzAkがPAで加わるなどして、徐々に独自のサウンドを作り上げていく。ハカセ、小嶋の脱退を経て、1996年にアルバム「空中キャンプ」をリリース。レゲを軸に、ダブやエレクトロニカ、ロックステディ、ファンク、ヒップホップなどの要素を取り入れた、独特の世界観で好評を博す。その後も木暮晋也(G / Hicksville)、ダーツ関口(G / ex. SUPER BAD)、HONZI(Key, Violin)をサポートメンバーに迎え、音源リリースやライブ活動を展開。1998年末をもって柏原がバンドを脱退し、その後の動向が注目される中、1999年3月に佐藤が急逝。これによりバンドは活動休止を余儀なくされるが、バンドは2005年夏に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2005 in EZO」で、ゲストボーカルを迎える形で復活。その後も単独ライブやイベント、フェスなどで不定期にライブを行っている。

プロフィール写真

サカナクション

山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。ライブ活動を通して道内インディーズシーンで注目を集め、2006年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO」の公募選出枠「RISING★STAR」に868組の中から選ばれ初出場を果たす。2007年5月にBabeStarレーベル(現:FlyingStar Records)より1stアルバム「GO TO THE FUTURE」、2008年1月に2ndアルバム「NIGHT FISHING」を発表。その後、初の全国ツアーを行い、同年夏には8つの大型野外フェスに出演するなど、活発なライブ活動を展開する。2009年1月にVictor Records移籍後初のアルバム「シンシロ」をリリース。2010年3月に4thアルバム「kikUUiki」を発表し、同年10月に初の日本武道館公演を成功させる。2011年には5thアルバム「DocumentaLy」をリリースし、同作のレコ発ツアーの一環で初の幕張メッセ単独公演を実施。約2万人のオーディエンスを熱狂させた。2012年5月に初の書き下ろしドラマ主題歌を含むシングル「僕と花」を発表。