音楽ナタリー PowerPush - mothy_悪ノP

「悪ノ娘」から7年 CD+小説で堪能する“七つの大罪”シリーズの集大成

小説にもジャケにも全キャラ登場

──アルバムの初回限定盤には書き下ろし小説も同梱されます。これは全曲そろってから書き始めたものだったんでしょうか?

mothy 同時進行でしたね。既存曲に加えて新曲が4曲収録されているので、それと並行して進めていました。

──このストーリーはどういうところから思い描いていったんでしょう?

mothy 正直な話、最初は「どうしようかな」と思ったんですね。「七つの罪と罰」はベストアルバムのようなものなので、せっかくだから小説にもすべてのキャラクターが出たほうがいい。でも、そもそも時代が違うから全員が出ることはあり得ない。そこからどういう設定にするかを考えていったという感じです。ただ、結果的にはうまくまとまったと思いますね。オールスター的な物語でありつつ本編では見られないキャラ同士の絡みを描くこともできたので。それは面白かったです。

──壱加さんとしては、「七つの大罪」シリーズのストーリーにはどういう魅力を感じていますか?

「七つの罪と罰」通常盤のジャケットイラスト。

壱加 例外的なキャラはいますが、ほとんどのキャラが完全な悪人でも善人でもなく、それぞれにバックグラウンドがあるので、どのキャラも好きになれる点かと思います。小さな出来事の積み重ねがだんだん大きな出来事になっていくようなストーリーなので、今回の小説でも少し触れられているのですが、もしもの話をいろいろ考えてみたくなるのも魅力だと思います。私としては、お気に入りのキャラクターは「コンチータ」と「ガレリアン」ですね。

──今回のアルバムのジャケットはどういうコンセプトで描いていきましたか?

壱加 全員集合というコンセプトはありました。それと、通常盤と初回盤はそれぞれ対応し合っているということを決めて描いていきました。

自分は異端でいいと思っていた

──ここ最近ではボーカロイドを巡る状況も大きく変わりましたよね。ボカロ小説が一般的になり、楽曲と小説がメディアミックス的なプロジェクトとして作られていく例も増えたと思います。そのあたりはどう見ていますか?

mothy 基本的に企業はお金を稼ごうとしているわけだから、1つの流行りが生まれたら、そこからの流れは生まれるものだとは思っていました。ただ、思った以上にそこが主流になっちゃったなという感覚はありますね。つまり、僕みたいな存在はシーンにおいてむしろ脇役でいいと思っていたんです。

──脇役でいい?

mothy 自分は異端でいいと思っていたんですよね。みんなは普通に音楽を作るけれど、僕みたいに小説を書く人もいるよ、という。それが今はみんながそれをやり始めちゃっているので、そこまで多くなくていいんじゃないかとは思いますね。もちろん、そういうシーンを否定するつもりはまったくないんです。自分もその先駆けですからね。ただ、そればっかりにならず、音楽で勝負できる人は音楽で勝負するのがいいんじゃないかなとは思います。

──壱加さんはどうですか?

壱加 正直なところシーンを語れるほど全体を見渡していないんですが、ジャンルの入り口が広くなるのはいいことかなと思います。ボカロをきっかけに小説を読み始めたり、ボカロ小説をきっかけにボカロ曲を聴いたりという話もたまに聞くので。作り手もファンも楽しめるならそれでいいと思います。

mothy 僕は、シーンの流れがどうこうというのは、あまり意識しないようにしていますね。周りがどうなろうと自分のやることは結局同じなんで。曲を作って、小説を書く。そうやって作品を作り続けていこうと思っています。

──この「七つの罪と罰」はmothyさんが続けてきた「大罪」シリーズの集大成ということですが、シリーズはこの先もまだまだ続いていく予定なんでしょうか。

mothy そうですね。とりあえず小説のほうはまだ全部終わってないですし、曲も書き続けようと思ってますね。今回のCDのために書いた小説でストーリーが終わったわけでもないので。今のところ、12年はやろうと思っているんです。

──12年! それはどうやって決めたんですか?

mothy いや、なんとなくなんですけど、時計の針が1周するのが12時間なんで12年はやろうかなと。だからあと5年はやろうと思ってるんです。ひょっとしたらその前に終わっちゃうかもしれないですけど(笑)。でも、ボカロPとして12年はやろうと思ってたので。だから、あと5年のうちにはこのシリーズも終わると思います。

mothy_悪ノP feat. 鏡音リン、鏡音レン ニューアルバム「七つの罪と罰」2015年2月25日発売 / Warner Music Japan
初回限定ノベル同梱盤 [CD+書籍]3240円 / WPCL-12051
通常盤 [CD]2484円 / WPCL-12052
収録曲
  1. 七つの罪と罰 / mothy_悪ノP feat. 神威がくぽ、MEIKO、鏡音リン、鏡音レン、初音ミク、巡音ルカ、KAITO、GUMI
  2. ヴェノマニア公の狂気 / mothy_悪ノP feat. 神威がくぽ、MEIKO、初音ミク、巡音ルカ、GUMI、KAITO
  3. グラスレッドの肖像 / mothy_悪ノP feat. GUMI
  4. 悪食娘コンチータ / mothy_悪ノP feat. MEIKO、鏡音リン、鏡音レン
  5. Drug Of Gold / mothy_悪ノP feat. KAITO
  6. 悪ノ娘 / mothy_悪ノP feat. 鏡音リン
  7. 悪ノ召使 / mothy_悪ノP feat. 鏡音レン
  8. 眠らせ姫からの贈り物 mothy_悪ノP feat. 初音ミク
  9. 五番目のピエロ / mothy_悪ノP feat. 鏡音レン、巡音ルカ、GUMI
  10. 円尾坂の仕立屋 / mothy_悪ノP feat. 巡音ルカ
  11. 野ざらしの首、鬼ヶ島にて / mothy_悪ノP feat. 神威がくぽ
  12. 悪徳のジャッジメント mothy_悪ノP feat. KAITO
  13. 箱庭の少女 mothy_悪ノP feat. 初音ミク
  14. ネメシスの銃口 / mothy_悪ノP feat. GUMI
  15. 最後のリボルバー / mothy_悪ノP feat. GUMI
イベント情報
mothy_悪ノP メジャー2ndアルバム「七つの罪と罰」発売記念 サイン&握手会
  • 2015年2月25日(水)東京都 ニコニコ本社
    19:00~ mothy_悪ノP、下田麻美ニコラジ生出演
    20:00~ mothy_悪ノP直筆サイン&握手会
mothy_悪ノP(モッチーアクノピー)

2008年から活躍するボカロP。2008年2月に鏡音リン、鏡音リンを使用したオリジナル曲「10分の恋」をニコニコ動画に投稿しデビュー。ストーリー性の強い“物語音楽”を得意とし、中でもニコニコ動画にてミリオン再生を超える「悪ノ娘」「悪ノ召使」は代表作として自身のプロデューサー名の由来となっている。2010年8月に処女作となる小説「悪ノ娘 黄のクロアテュール」を執筆。「悪ノ娘」「悪ノ召使」の語られざる物語を制作者自らが発表したことで話題となった。2011年3月には第2弾小説「悪ノ娘 緑のヴィーゲンリート」を執筆し、前作も合わせて発行部数30万部を突破した。最近ではボーカロイド7種を使用し、各曲の物語性だけでなく、それぞれの楽曲につながりのあるシリーズ性を持った楽曲展開を行っている。2015年2月、自身の人気シリーズ「七つの大罪」の集大成となるアルバム「七つの罪と罰」をワーナーミュージック・ジャパンからリリース。

壱加(イチカ)

主にボーカロイド関連の動画にてイラストを手がけているイラストレーター。悪ノPによる「悪ノ娘」「悪ノ召使」が次々と発表されたとき、いずれの動画も壱加のイラストがサムネイルとなっており、これらの楽曲の大ヒットにより壱加の絵に大きな注目が集まる。それ以降も悪ノPの主要な作品でイラストや動画編集、ジャケットイラストを手がけている。