これがメジャーから発売されたのはけっこう意味のあること

──MOONBUGとしては2010年にインディーズからオリジナルアルバム「BEATS & SPIKES」を発表していますが、もともとリミックスやマッシュアップで名前を広めたという経緯を考えると、今回の「REMIX ASSAULT」こそ名刺代わりの作品と言えるんじゃないかと思いました。

もちろんそう思ってますよ。「リミックスをちゃんとした形で聴きたい」っていう需要もすごく多かったし。でもやっぱり権利関係をクリアにするのにすごく時間かかって。だからまさかこうやって公式で出せることになるなんて思ってなかったですね。ありがたいです。

──収録曲の中に、すでに公式音源としてリリースされていたリミックスもあるんですか？

ムックのリミックスは「ニルヴァーナ」のシングルのカップリングに入ってます。ミヤくんとは仲いいんで、「これ僕のアルバムにも入れさしてくれ」ってお願いしてOKもらいました。

──よく考えると、このアルバムはかなり特殊な商品なんじゃないかと。これまでもCorneliusやrei harakami、大沢伸一といったアーティストがリミックスワーク集を発表していますが、それはあくまで過去に制作した音源を集めてまとめたベスト盤的なもの。でも「REMIX ASSAULT」は「リミキサーにとってのオリジナルアルバム」といった体裁で、ほとんどがアルバムのために書き下ろされた新曲なんですよね。

そうなんです。そもそもリミックスって、アーティストがリミキサーに自分の曲をいじってくれって依頼するのが一般的だと思うんですけど、これはまったく逆のパターンですね。

──本人はその特殊性を意識していたんですか。

それはめっちゃしましたよ。今までなかなかなかったことだし、ものすごく難しいことだけど、実現したら本当にすごいなって。

──画期的なことですよね。

なんとなく寂しく感じてしまう音楽業界に一石を投じる、小石ぐらいになれたらいいなと（笑）。あとはアーティスト本人の公認でリリースされる重さというか。1人のトラックメイカーがいろんな人の曲をリミックスしたCDは自主制作ではあったけど、これがメジャーレーベルから出るというのはあまり前例がなかったんじゃないかな。ネットで勝手にやってたことがこうやって公式になったのはけっこう意味あることだと思うんですよ。これをきっかけにリミックスとかマッシュアップっていう文化がもっと浸透していったら面白いことになるんじゃないかなって気がしますね。

民生さんは神様なので、できれば聴いてほしくないです

──リミックスしたメンツの中には、ミヤさんのほかにも仲がいい人はいるんですか？

BEAT CRUSADERSのクボタマサヒコとはすごく仲がいいです。あとはthe HIATUSの細美武士が古い付き合いで。武士を含めて何人かで飲んでたときに「そういやさ、俺リミックスアルバム作る話になってんけど、the HIATUSの曲やらせてくれよ」って言うたら、間髪置かず「ええよ」って言ってくれまして。

──古い付き合いというのは？

かいつまんで言うと、ELLEGARDENが「BRING YOUR BOARD!!」を出す前の、少しずつ知名度が上がっていた頃に、僕が当時働いてたショップにベースの高田雄一がお客さんとして来たんです。で、普通に接客してたら「実は自分、こういうバンドやってまして」「お店でかけてもらえませんか？」と。それ聴いて「すごいバンドやな！」ってびっくりしたんです。半年後くらいに雄一と再会して、そこで細美武士と初めて会って、その日から長い付き合いを経て打ち解けていって……っていう感じですね。

──じゃあ今回の作品は、友人の曲をリミックスしたものも多く入っているわけなんですね。

そうですね。細美武士とは親友ですし、the HIATUSの曲は絶対リミックスしたいなと思ってました。あと、どうしてもやりたかったと言えばユニコーンですね。初めて邦楽を聴くようになったきっかけがユニコーンなんですよ。妹の影響なんですけど、それからずっと（奥田）民生さんが好きで、アルバムも全部買ってて。僕の中では奥田民生＝神様ですから。

──そんな神様の公式リミックスができたのは、かなり感慨深いですね。

いやーもうすごいことです。できれば本人には聴いてほしくないです（笑）。

──そういえばcapsuleのリミックスは入らなかったんですね。

直接お願いしたんですけど、中田さんいわく「capsuleの曲はcapsuleだけで完結させるつもりだから、悪いんだけど、他の人のリミックスは出さないことにしてるんだ」ということでした。残念です。

今はリミックスのほうに力を入れるべきかなと

──ちなみにNovoiskiさんって、人の曲を聴いたときに「あ、これはこんな感じにリミックスできる」みたいなことが思い浮かぶものなんですか？

浮かぶことはよくありますね。「これはこういう展開にできるな」とか。クリエイターの人って2種類に分けられると思うんですけど、例えば一緒にユニットを組んでるOMKTっていう大阪のクリエイターは、有名なプロミュージシャンが彼に相談するくらい音楽理論が完璧で、ちゃんとその知識にもとづいて曲を作るんですよ。でも僕は思いついたことを脊髄反射でやるタイプで。カッコよく言えば初期衝動。前にDubさんから「お前は理論うんぬんは知らんでええ。俺がミックスでうまいことやったるから、お前の好きにやれ。衝動をそのまま出したほうがいいのが作れるから、理論理論って言ってるとあんまりいいのできへんぞ。お前はそういうタイプだ」って言われたので、それを信じてやってます。

──MOONBUGは今後もリミキサー集団として活動していくつもりなんですか。

もちろんそうです。MOONBUGはリミックスとマッシュアップだけでいきたいですね。今回のアルバムにはインタールードとしてDubさんの曲を僕がいじったやつが入ってますし、今後もそういう形では違ったものを作るかもしれないけど、あくまでメインはリミックスとマッシュアップで、そこをとことんまで突き詰めていきたい。

──オリジナルのトラックを作るよりもリミックスのほうが作っていて楽しかったり、作りやすかったりするとか？

いや、俺はオリジナルを作るのもすごく好きですよ。ただ、どっちも興味あるけど今はリミックスのほうに力を入れるべきかなと。やっぱこうリミックスで知名度が上がってきてるので、だったらその分野でエキスパートになっていきたいじゃないですか。

──なるほど。

僕も曲作ってギター1本で歌ったりとかしてるんですよ。一切録音してないけど（笑）。お風呂で「ふんふーん」って歌って「お、今のリフいいな」とか言って。でもそれって結局リミックスのほうに反映されますからね。

──もし今後その自作曲を世に出そうという気になったら、それはMOONBUGとは違う形になるんでしょうか。

そうですね。去年クボタマサヒコと一緒に「Miss Modular」っていうユニットを組んで、平野綾さんのアルバムに曲提供したんですけど、そのユニットではシューゲイザー＋ポストロック＋エレクトロ、なサウンドにしたいと思っていて。

──「Miss Modular」はSTEREOLABの曲名ですよね（笑）。

そう、あの曲名から取らせていただきました（笑）。あとOMKTと一緒にやってる「ステルスボーイズ」ってユニットでは、ドラムンベースとかグリッチホップなどモダンなサウンドを追求していければと思ってます。