ナタリー PowerPush - MOONBUG
神と呼ばれたマッシュアップ集団、まさかのメジャーリリース
緊張しいだから1人でやるのが嫌なんです
──「自分1人で成立するのであれば全部自分でやりたい」のであれば、なぜMOONBUGというユニットで活動しているんですか?
単純にTHE CHEMICAL BROTHERSもTHE PRODIGYもグループやし、見栄えがいいかなって(笑)。実際は1人で作った曲もけっこうあるんですけど、でもそこにMOONBUGって名義を入れるだけで3割増でよく聞こえるんじゃないかなと思いまして。あと何より、緊張しいだから1人でやるの嫌だし(笑)。だから最初にコンセプトとして、BEAT CRUSADERSとかMAN WITH A MISSIONみたいに素顔を隠した状態でいたほうが面白いよねって話もしてたんです。今でも実は人前に出るのがけっこう苦手なんですよ。
──MOONBUGで主に曲を作っているのはNovoiskiさんなんですか?
Matsumoto Hisataakaa(マツモト・ヒサターカー)もですね。彼は京都で「バイナル7」というレコードショップを経営してるんですが、アフリカ・バンバータとかの初期のエレクトロファンクとか、ダンスクラシックとかに造詣が深いんですよ。その感じが色濃く反映されてる曲が今回のアルバムにも2つほど入ってます。m-floの「come again」と……。
──Base Ball Bearの「Electric Summer」?
そうそう。あれはモロにクラシックですよね。彼のルーツはそっちで。僕はもう完全にロックなんで、その2つのこの要素がうまく合わさればええもんができるんじゃないかって思ってます。
──作業はどのように分担してるんですか?
Hisataakaaはテープエディットっていう、テープをはさみで切り貼りしながら曲をエディットする手法の、日本におけるパイオニア的な存在なんですよ。だから僕が主な部分を作って、彼にエディットをやってもらって、戻ってきた音源を僕が再構築して、それをDubさん(Dub Master X)がミックスする。そんな感じです。
僕らがやってることをDubさんは昔からやってた
──2010年に加入したDub Master Xさんもまた、ぜんぜん違うジャンルの人ですよね。
DubさんはもともとHisataakaaと仲がよくて。僕が初めて会ったのは下北沢のカフェだったんですけど、そのときHisataakaaがいきなり「DubさんMOONBUGに入ってもらえないですか?」って言って。そのときは「お前なんちゅーこと言うんや!」って思いましたよね(笑)。でもDubさんは1秒だけ「うーん?」って考えて「ええよ」と即答。なんとも簡単に。
──わはは(笑)。
ただDubさんはサウンドエンジニアなんで「俺はミックスをメインでやる。制作に関しては俺はあんまタッチせんぞ」って言ってます。ミックスとかトラックダウンって、ちゃんとした場所だと1曲やるのにたぶん10万円以上かかるんですよね。それがメンバーだからタダでできる(笑)。
──それにしても、勝手に作ったリミックスをネットにアップする「得体のしれない新しい潮流」みたいなものに、Dub Master Xさんみたいな大物が乗っかってきたというのは当時驚きました。
でもね、Dubさんは僕らがやってることを昔からやってはった人やから。
──ああ、確かにそうか。
同じスピリットを持ってるんかなって。だから一緒にやろうやって言ってくれたんかもしれないですね。
ネットが怖くてそっとディスプレイを閉じた
──MOONBUGは最初から動画サイトでの活動展開を考えて結成したユニットなんですか?
いや、そうじゃないんです。Macを買うと動画制作ソフトが初期設定で入ってるじゃないですか。ただ単にあれを使って遊びたかったんですよ。試行錯誤しながら完成して、せっかく作ったんやったら全世界に発信できるYouTubeに投稿しようかなって。遊びの延長でなんとなくやったことなので、まさかこんなことになるとは思ってなかったです。
──なんとなくで人気が出てしまったという(笑)。
「せっかくだから何か1つ形として残せるものが」とは思ってたけど、レコードを出すみたいなことまでは考えてなくて。YouTubeやニコニコ動画に公開できるのであれば、まあそれでいいやないかって思ってました。なまじそれがワーってなってもうたから、「わあ!次の作らなあかん!」って(笑)。
──名前が広まったのはcapsuleとBEASTIE BOYS、DAFT PUNKのマッシュアップがきっかけですよね。中田さん自身もDJをする際にこの曲をプレイリストに入れていて、さらには「東京ガールズコレクション」のオープニングでも使用されたという。
あれを作ったのが転機だったと思います。でも、なんであんなことになったのかいまだにわかんないです。投稿してから一晩寝て目が覚めたらニコニコ動画のランキングで1位になってて。3日後にYouTubeを見たら、そっちに投稿した動画もいくつかの部門で1位を取ってるんですよ。それで怖くなっちゃって、しばらく放置したんです(笑)。「ネットってこういうことになるのか」「もう見やんとこ」って思って。本当に恐怖でしたよ。
──それは確かに驚きますよね(笑)。
うれしかったんですけど、どうしたらいいのかさっぱりわからなくなって。そっとディスプレイを閉じましたもん、本当に(笑)。いやー、あれはあかんと思ったわ。音楽やる人は下積みはあったほうがいいですよ、絶対(笑)。
収録曲(曲名 / アーティスト)
- INTRO
- HIT IN THE U.S.A.(MOONBUG Remix) / BEAT CRUSADERS
- Ring a Ding Dong(MOONBUG Remix) / 木村カエラ
- Melodic Storm(MOONBUG Remix) / ストレイテナー
- come again(MOONBUG Remix) / m-flo
- superblock(MOONBUG Remix) / the HIATUS
- pierrot +(INTERLUDE)
- シャングリラ(MOONBUG Remix) / チャットモンチー
- Strobolights(MOONBUG Remix) / スーパーカー
- ELECTRIC SUMMER(MOONBUG Remix) / Base Ball Bear
- ニルヴァーナ(MOONBUG Remix) / ムック
- ヒゲとボイン(MOONBUG Remix) / ユニコーン
- OUTRO
MOONBUG“REMIX ASSAULT”リリースパーティ Supported by brix
2013年4月6日(土)東京都 秋葉原MOGRA
START 15:00
<出演者>
DJ:MOONBUG / OMKT / RAM RIDER / クボタマサヒコ / ニッチ / WILDPARTY / PandaBoY /USYN / killdisco / D-YAMA / 班長 / and more
LIVE:fu_mou
VJ:GraphersRock / 丸橋圭太郎 / セーラーチェンソー
TALK:DJ 急行
一般発売日:2013年3月1日(金)
※「REMIX ASSAULT」を持参すると1ドリンク付き
MOONBUG(むーんばぐ)
Novoiski、Nylonizm、Matsumoto Hisataakaaにより結成されたリミックス&マッシュアップ制作ユニット。2008年にニコニコ動画に投稿されたcapsule×BEASTIE BOYS×DAFT PUNKの非公式マッシュアップ「Starry Sky YEAH! Remix」が爆発的なアクセスを集め、一躍ネットユーザーから注目される存在となる。同マッシュアップは日本最大のファッションショー「東京ガールズコレクション」のオープニング曲として使用されるなど、ネットの世界を超えて話題に。2010年には初のオリジナルアルバム「BEATS & SPIKES」がインディーズから発売された。同年、日本におけるリミックスのパイオニアであるDub Master Xが正式メンバーとして加入。2013年2月には、さまざまな国内アーティストのリミックスを収めた公式アルバム「REMIX ASSAULT」をソニー・ミュージックダイレクトからリリースする。