モン吉|ファンモンらしさ、追求してみました

2017年12月発表の前作「モン吉2」からおよそ3年、モン吉が3rdアルバム「モン吉3」を完成させた。「ファンモンっぽさ」をテーマに掲げた本作でモン吉は、かつてFUNKY MONKEY BABYSが持っていた歌詞のテーマやサウンドのポップ性を、ソロのフォーマット内で再構築。直球のラブソング「君が好き」や渾身の応援歌「夢のつづき」、新世代のアーティストとコラボした「LOOP MAGIC feat. NillNico」「君の面影 feat. ラブリーサマーちゃん」など、彼の集大成とも言えるアルバムとなった。音楽ナタリーでは「モン吉3」についてだけでなく、モン吉が考えるポップスやラップの魅力、そしてファンモンらしさとは何かを聞いた。

取材・文 / 宮本英夫 撮影 / Susie

あえて今、ファンモンっぽいアルバムを作る

──気が付けば、前作「モン吉2」から3年ぶりのアルバムですか。

そうなんです。体感的にも「長く作ってるな」という感じはありました。1stアルバム「モン吉1」発売から2ndアルバム「モン吉2」発表までは1年半かかったから、「同じペースで作れるかな?」と思っていて、制作スケジュールも同じくらいの期間で組んだんです。でも、なかなかリリースタイミングが合わなくて、そうこうしているうちに新型コロナウイルスが流行して。

──結果的に完成まで3年かかったと。「こういうアルバムにしたい」というビジョンは、最初にあったんですか?

いや、「やってみなきゃわかんない」という感じでしたね。毎作いつもそうなんですけどね。ただ「モン吉1」「モン吉2」はほぼ1人で作っていたんですけど、今回は事務所の人たちも「こういう曲があったほうがいいんじゃないか」という意見をくれて、そこから「ファンモンっぽいアルバムを作ろう」というビジョンが浮かんだんです。

──まさに今回のアルバムは「ファンモンっぽいな」と思ったんですよ。それはスタッフの後押しが大きかったわけですか?

モン吉

それはありますね。これまで僕1人だけで制作させてもらえたのもありがたかったんですけど、今回は「ほかの人の意見が欲しいな」と考えていたんです。自分の意見だけより、いろんな人の意見があったほうが面白いので。

──音楽的に言うと、「モン吉1」「モン吉2」ではモン吉さんの得意分野であるダンスミュージックとヒップホップを前面に押し出していましたよね。

「モン吉3」でもその要素は意識しましたが、ファンモンっぽい作品となると、やっぱりポップス寄りにすべきだろうなと。自分で聴いても、「モン吉3」はポップス的な要素が増えたと思いますね。

──トラックメイカーもNAOKI-Tさん、soundbreakersの大野裕一さん、YANAGIMANさん、田中隼人さんと、ファンモン時代からおなじみのメンバーがずらりとそろっていて。

特に大野さんの参加曲、多いですよね。最初は「未来の手紙」と「WEDDING SONG」の2曲だけだったんですけど、「これもどう?」「ものは試しで、メロディを作ってよ」と言って「夢のつづき」という曲も持ってきてくれて。「夢のつづき」は大野さんが考えるファンモンっぽさを一番盛り込んでくれた曲で、これを聴いて僕も「ひさびさに応援ソング、書いてみようかな」と思ったので、ド直球を狙ってみました。個人的には勝手に水泳選手をイメージして、オリンピックに出場できるかできないか、微妙なところで闘っている様子を想像しながら歌詞を書きました。

──「夢のつづき」はファンモン時代の楽曲「あとひとつ」に通じるものがある名曲だと思います。ソロになってから、こういう応援歌は作ってなかったですよね。もしかして、封印していた?

別に封印していたわけではないんです。ファンちゃん(ファンキー加藤)のほうが応援歌を歌っているイメージが強くて、「俺も書けるけど、そういう曲はファンちゃんがやればいいんじゃないか」と考えていたところはありましたね。だから「絶対やらない」ということではないし、避けていたわけでもないです。うまく歌詞がハマらないトラックで応援ソングを作ってもしょうがないし。でも「夢のつづき」は完全に応援ソング向きのトラックだったし、「ファンモンっぽいアルバムを作る」というコンセプトがあったので、「絶対応援ソングにしたほうがいいな」と割り切れたんです。

フロウ重視のラップチューンで原点回帰

──応援歌「夢のつづき」と直球なラブソング「君が好き」、未来の自分に向けたメッセージソング「未来の手紙」の3曲が、「ファンモンっぽさ」を求めたこのアルバムの核になっていますね。昔からのファンはめちゃくちゃうれしい楽曲になっていると思います。そこにご自身のお子さんを題材にした「チャイルドキッド」、奥さんのことを歌った「WEDDING SONG」とパーソナルな曲も加わって、すごくバラエティ豊かになっていて。

「チャイルドキッド」はトラックを聴いた段階で子供向けの番組っぽいサウンドだと感じて。子供たちが飛び跳ねているような雰囲気を出したくて、息子が最近僕に言ってくることをそのまま歌詞にしました(笑)。

──身近なテーマをそのまま書いちゃう。「WEDDING SONG」も結婚ソングでありつつ、奥様に向けたプライベートなメッセージでもあるんだろうなと思いながら聴きました。

これは大野さんの力がすごく大きかったです。サビのメロディだけでなく、歌詞も大野さんが協力してくれたので。

──一方で、トランス系のクールな「RUNNIN'」、王道ヒップホップのマナーにのっとった「WONDER DAY」とか、これまでのモン吉さんのソロ作っぽい楽曲もちゃんとあって。

モン吉

「RUNNIN'」は完全に僕の好みですね。トランスは昔から好きなジャンルです。「WONDER DAY」はアルバムが全体的にポップスに寄りすぎたことで、逆にラップがしたくなったのかもしれない。これまでのラップ曲とは作り方を変えて、先にフロウを録音しちゃって。韻は「あ」行とか「か」行から選んで、即興で思い浮かんだフロウに沿って言葉を当てはめていきました。

──それは新しい挑戦というか……。

むしろ懐かしいスタイルですね。ファンモンでデビューする前はフロウ先行の曲を多く作っていたので。メッセージを重視していたら韻を踏まない部分も、フロウ重視にすると、とにかく韻を踏んじゃうんです。そういう意味では初期衝動的な感じというか、ラップをやり始めた頃に近い作り方でした。

モン吉が考える若手ラッパーの特徴

──同じくヒップホップスタイルの曲だと、「LOOP MAGIC feat. NillNico」はトラップのビートを使っています。

この曲のトラックはTICTOC(チクタク)くんという、地元でヒップホップをやっていた頃からの友達が作ってくれました。彼から若いラッパーについていろいろ教わったんですけど、最近またヒップホップシーンが面白くなっていますよね。

──そうですね。「フリースタイルダンジョン」の放送で一気に盛り上がって、どんどん若い子にも注目されるようになったし。

トラップが流行ってからは3拍とか5拍を使った曲が増え始めて、みんなのスキルも上がってると思いましたね。今はトラップの人気が落ち着いてきたので、「また違ったスタイルが注目されるのかな?」と感じてます。

──そういった意味では、トラップを用いた「LOOP MAGIC feat. NillNico」はモン吉さんと若い世代のラッパーをつなぐヒップホップチューンになっていると思います。フィーチャリングで参加しているNillNicoくんはどこで知ったんですか?

彼はTICTOCくんに紹介してもらったんですけど、僕とは10歳以上年齢差があるから「若いなー!」って感じましたね(笑)。ラップを聴いても若々しくて。

──やっぱり感覚は違いますか? スキルやセンスというか。

違いますね。若手のラッパーは言葉の意味よりも、響きを重視している感じで。パンチのあるキーワードがすごく多い一方、それ以外のところは聞こえ方に注目しているんじゃないかと。中には「海外の方かな?」と錯覚するような歌い方をしている人もいて、もう海外アーティストの曲を聴いているようで。若い子たちは国外の楽曲もたくさん聴いているから、そのスタイルが染み付いているんでしょうね。こういう部分は今っぽいと思いました。

──なるほど。

あと、この曲のギターのフレーズは、Ovallの関口シンゴさんがInstagramに上げていたギターのサウンドをサンプリングしました。本人に直接メールして、インスタの音源をそのまま使ってます。最近の若い子もWeb上に公開されている音源をそのままサンプリングすることが多いみたいだし。

──それこそヒップホップの原点っぽい感じがしますね。

弾き直してもらわないほうがむしろ今っぽいですよね。