百田夏菜子(ももいろクローバーZ)のライブBlu-ray / DVD「Talk With Me ~シンデレラタイム~」が、彼女の28歳の誕生日である7月12日に発売された。
本作には昨年10月16、17日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された百田初のソロコンサート「Talk With Me ~シンデレラタイム~」の模様を収録(参照:ももクロ百田夏菜子が初のソロコン開催、2日間の“シンデレラタイム”で見せた多彩な表現力)。ももクロとゆかりの深い本広克行監督が演出を手がけたこのコンサートでは、バンドやダンサーを交えながら円形ステージで展開された重厚かつコンセプチュアルなパフォーマンスと、いつもと変わらない百田の天真爛漫なMCとのコントラストに会場に集まった大勢のファンが夢中になった。
音楽ナタリーではBlu-ray / DVDの発売に合わせて百田にインタビュー。これまでソロでの音楽活動を積極的に行ってこなかった中、なぜいきなりSSAという大舞台でソロコンを初開催したのか、セットリストにはどのような思いが込められていたのか、ピアノの弾き語りで初披露したソロの新曲「ひかり」はどのように作られたのか。時間の許す限りたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 近藤隼人
「うん」と言っちゃいました
──毎年ソロコンサートを開催し、ソロアルバムも発売している佐々木彩夏さんや高城れにさんと比べると、百田さんはソロの音楽活動に積極的なほうには見えなかったのですが、なぜ昨年のタイミングで初のソロコンを開催するに至ったのでしょう?
うーん、なんでなんですかね?(笑)
──(笑)。百田さんが「開催したい」と自発的に言い出したわけではなかった?
これまでも定期的に「どう? ソロコンやる?」みたいなお話をスタッフさんからもらってたんですよ。それは冗談も入った、あくまで軽い感じの提案で、そこから話が膨らんでいくことはなくて。でも、あるときに「あっ、やろうかな」という気持ちになったんです。開催に向けたスケジュールを具体的に話し出したのがいつ頃のことだったか、ちょっと覚えてないんですけど、新しく挑戦できることとして初めてのソロコンをやらせてもらおうと思いました。
──それまでも別に、「自分はソロコンはやりたくない!」と頑なに開催を拒んでいたわけでもなかったんでしょうか。
そうですね。ネタとして「ソロコンやりたがらないもんねー」みたいにメンバーやスタッフさんからいじられることはあったんですけど、「絶対にやりたくない」と考えていたわけではなかったです。なんと言うか、ソロコンを開催するということが自分の視野に入ってなかったんですよね。想像していなかった。
──そんな中、百田さんの気持ちやさまざまなタイミングなどが合致して、開催が実現したのが昨年の秋だったと。それがさいたまスーパーアリーナ2DAYSという大規模な公演になったのには何か理由があったんですか?
実は会場や日程が決まるまでいろんな段階があって。最初はもっと小規模な会場で考えていたんですよ。でも、いろんな方にコンサートを観ていただけたらいいなと思ったら、何日も会場を押さえなきゃいけなくて、会場側のスケジュールが合わなくなってしまったんです。コロナが少し落ち着いてきたタイミングでもあったので、どこの会場も予約がキャンセル待ちという状況で。しかも不動産の物件みたいに、一度申し込んだらいついつまでに本当にやるかやらないかを決めなきゃいけない、というルールがあって、いろいろと会場と日程を決めるのが大変でした。そんな状況の中、自分たちと会場のスケジュールを照らし合わせたときに、ちょうどSSAが空いていたんです。SSAも最初は予約が埋まっていたんですけど、急に空きが出たという話をスタッフさんから聞いて。
──そうだったんですね。当初はライブハウスやホール会場くらいをイメージしていたんですか?
はい。地元の静岡や、今まであまり行ったことのない地方の会場で開催できたらとも思ってたんですけど、結局よくお世話になっているSSAに(笑)。ただ、「SSAか、大きいな……」と最初は思いましたね。ももクロで何回もライブをやらせていただいている会場ではありますが、自分1人でステージに立つイメージができなくて。でも、会場を押さえないとまた予約が埋まってしまうから、SSAでソロコンをやるのかやらないのか、早めに決断しなくちゃいけなくて……なんかもう「うん」と言っちゃいました(笑)。このタイミングでやるならこの会場しかないという状況でしたし、何よりたくさんの人に観ていただけるならと。
1対1で話しているようなライブにしたかった
──そこからは覚悟が固まって、やるからにはお客さん全員を満足させるものにしようという気持ちに?
ですね。会場が決まってからは、それに合わせていろいろと固めていきました。そもそもSSAが会場の候補に上がってきた段階で、演出の本広(克行)さんには「SSAってアリですかね……?」と相談していて。そうしたら「大きい会場でやるならこうしよう」と話が広がっていったんです。なので、会場がSSAに本決まりしたあとはスムーズに内容が固まっていきました。
──本広監督はこれまでも映画「幕が上がる」や、東京・明治座公演「ももクロ一座 特別公演」でももクロの魅力を引き出してきた方ですが、ソロコンの会場や日程が確定する前から演出を担当することが決まってたんですね。
はい。SSAに決まる前からお願いしていました。演出を誰に依頼しようかと考えたときに、例えばまったくはじめましての方にお願いしたら、それはそれで自分でも見たことのないもの、ファンの方にとっても新しいものをお届けできるのかなと思ったんですけど、やっぱりいつも応援してくれている皆さんに喜んでもらいたいという気持ちが一番にあったので、私のことを知ってくれている人にお願いするのがいいかなって。基本は私が「こういうのがいいんじゃないか」と思ったことをもとにコンサートを作らせていただいて、本広さんにはどちらかと言うとファンの方目線で協力していただいたんです。そういう作り方のほうがいいバランスのコンサートになるんじゃないかと思いました。
──アリーナの中央に円形のセンターステージが作られたり、“シンデレラタイム”の始まりと終わりを告げる時計の音の演出があったりと、コンセプトや世界観がしっかり固められていた印象でしたが、そのあたりも百田さん発信のアイデアだったんでしょうか?
ライブタイトルも含め、すべて私が「こんな感じがいい」と言ったことがもとになっています。本広さんは「想像するものを形にするからなんでも言ってほしい」と話してくださって。セットリストについても「どんな曲が入ってもいいよ」と言ってくれました。何かを注文されることはなくて、私が出した企画書みたいなものに対して、「だったらこういう感じで見せたらいいんじゃないか」と意見を返してくれ、たくさん力を貸してくださいました。唯一、本広さんから言われたのは、「『愛・おぼえていますか』を歌ってほしい」ということだけで。
──「Talk With Me ~シンデレラタイム~」というライブタイトルはどのようにして決めたんですか?
タイトルはライブの内容より先に前に決まりました。コンサートを観てくださる方に私を近くに感じてもらいたかったし、私も観てくださる方の近くにいたいと思っていて。360°の円形ステージにしたのも、そういう考えがあったからなんです。1対1でお話しているような、そういう距離感で私を感じてもらえるようなライブにできたらいいなと思ったので、「私とお話ししましょう」というシンプルな意味を込めて「Talk With Me」というタイトルにしました。
──なるほど。「シンデレラタイム」のほうは、コンサートを魔法のような特別な時間に感じてもらいたい、というような意味でしょうか?
「シンデレラタイム」にはいろんな意味が込められているんですけど、お仕事のために静岡から東京に通っていた時期、いつも帰りの時間になると、「ほら、シンデレラタイムだから早く帰らないとだよ!」って現場で周りから言われてたんですよ。私にとって東京に来てお仕事をしている時間が非現実的というか、夢のような時間で。同じように、コンサートがファンの皆さんにとって非現実的な時間になったらいいな、嫌なことを忘れて一緒に楽しんでもらえる時間にできたらいいなと思って「シンデレラタイム」とタイトルに付けました。
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本広監督からの熱いリクエスト