ナタリー PowerPush - 水木一郎
アニソン一筋40年!「Z」のアニキが語る音楽論
アニソンを歌うといろんなジャンルを歌える
──水木さんが考える“アニソン”の定義についてもう少し聞かせてください。
そうですね。40年ちょっと前からある、子供たちのための、あたたかくて、ハートがあって勇気づけられる音楽。それがアニソンですよね。歌詞のことを言えば、人間が失くしてはいけない大切なものについて伝えられるのがアニソンだと思うし。
──メロディにも特徴はありますか?
まず根本的にはイージーじゃないといけない。子供が聴いてすぐに覚えられて、自然と歌いたくなるような。
──サウンド的にはどうでしょう?
音楽の媒体をやってる立場からはどう思います? アニソンとJ-POPとの違いって。
──うーん、そこが難しいんですよね。アニメソングは音楽的ジャンルを問わないというか、いろんなジャンルのアニソンがあって。
そうなんですよね。「なぜ水木さんはアニソン以外浮気しないんですか?」って言われるけど、アニソン歌っているといろんなジャンルを歌えるんです。例えば「ルパン三世」みたいなすごくジャズっぽい歌も歌えれば。
──サーフミュージックみたいなものもありますしね。
演歌っぽいものも、ラテンもブルースもあったりしてね。だから飽きないですよ。
──ということは、ロックとかポップスとかそういうジャンルの問題ではなく。
魂がこもっていればいいんですよ。何を訴えたいか、何を伝えたいかっていうのがちゃんとあれば、武器の名前や主人公の名前を連呼しなくても、それはアニソンって呼べると思います。
──じゃあ逆に魂がこもってない楽曲は?
そういうのもありますね。でもそれが世の中でアニソンとして評価されちゃうと、ちょっと年寄りの言い方だけど「俺の目の色の黒いうちは許せん!」って言いたくなりますね(笑)。
アニソンを歌うのが楽しくてしょうがない
──40年間アニソン一筋でやってきたわけですが、水木さんの中にアーティストとして自分自身の思いを表現したいという気持ちはないですか?
それは今でも十分やれてるんですよ。ヒーローを通して自分を表現しているような感覚になりますから。
──じゃあ自分のメッセージを込めたオリジナル曲みたいなものは?
自分で何曲か書いて歌ったことはあるんですけど。でもなんだか気持ち悪いんだよね、入り込みすぎちゃって(笑)。ヒーローソングを通してメッセージを伝えるほうが肌に合ってる。ついでに言うと、ヒーローは強いだけではダメ。それではただのガキ大将。強い中に「どうして戦うんだろう」という葛藤や、「どうやって愛する人たちを守ろうか」という気持ちを込める。それによって哀感が出てカッコよくなるんです。
──さっきジャズが好きだというお話もありましたが、例えば「そろそろスタンダードジャズのアルバムを作ろうかな」といったような構想はないんでしょうか?
その話はずいぶん前からあるんです。10年くらい前から。日本のジャズプレイヤーも一緒にコラボしようって声をかけてくれて。
──それがまだ実現していないのには何か理由があるんですか?
それはね、笑い話だけど「もうちょっと大人になったらやってもいいかな」って(笑)。
──あはは(笑)。
もう十分大人だけどね(笑)。でも本当のことを言えば、今はやっぱりアニメソングが楽しくてしょうがないんですよ。
──頼もしいです。これからもそうやってアニソンを歌い続けていってください。
まあ、どこまでやれるかわからないけど。でもアニソンには先輩がいないんでね。アニソンがこの先どうなるか、俺の肩にかかっていると思うしね。まだまだ突き進みますよ。
──じゃあぜひ人間国宝目指して。
あはは、がんばりますよ(笑)。
THE HERO / 水木一郎
THE HERO(SPOT 30sec) / 水木一郎
DISC 1
- THE HERO
- コン・バトラーV のテーマ (THE HERO ver.) from 超電磁ロボ コン・バトラーV
- 仮面ライダー・メドレー (THE HERO ver.)
- セタップ!仮面ライダーX from 仮面ライダーX
- 仮面ライダーストロンガーのうた from 仮面ライダーストロンガー
- 燃えろ!仮面ライダー from 仮面ライダー(スカイライダー)
- はるかなる愛にかけて from 仮面ライダー(スカイライダー)
- バビル2世 (THE HERO ver.) from バビル2世
- ルパン三世 愛のテーマ (THE HERO ver.) from ルパン三世
- タイガーマスク・メドレー
- タイガーマスク from タイガーマスク
- みなし児のバラード from タイガーマスク
- 海のトリトン from 海のトリトン
- 傷だらけの栄光 from あしたのジョー2
- 宇宙海賊キャプテンハーロック (THE HERO ver.) from 宇宙海賊キャプテンハーロック
- THE HERO (Instrumental ver.)
DISC 2
- プロローグ (THE HERO ver.)
- マジンガーZ (21st century ver.)
- デビルマンのうた (21st century ver.)
- Golden Rule ~君はまだ負けてない!~ Produced by 高見沢俊彦
- 見上げてごらん夜の星を
水木一郎(みずきいちろう)
1948年東京都出身。1968年に歌謡歌手としてデビュー。その後1971年に「原始少年リュウ」の主題歌をきっかけに活動の場をアニメソングへと移す。以降「マジンガーZ」「バビル2世」「仮面ライダーX」「超電磁ロボ コン・バトラーV」「宇宙海賊キャプテンハーロック」などアニメ、特撮番組の主題歌を数多く発表し「アニメソングの帝王」の異名を得る。1999年には前人未踏の「24時間1000曲ライブ」も敢行。自身の持ち歌は1200曲を越え、近年は中国、フランス、シンガポール、タイなど海外でもライブを実施。Wikipediaにおいて、もっとも多くの言語で紹介された日本人としても知られている。