みゆな「眼」インタビュー|“眼”を見開いて進め 宮崎で芽吹いた16歳の才能

女性にモテたい

──みゆなさんはこうやって話していると天真爛漫な感じですけど、「ふわふわ」はダークな雰囲気の曲ですよね。「ギャップがある」と言われませんか?

まだライブに来られていない方やアニメで最近知ってくださった方は私のことをクールだと思っていることが多くて、「曲とのギャップがすごいね」とよく言われます。私、うるさい人間なんですよ(笑)。ライブではMCのときによく笑われます。大人っぽさを意識して音楽を作っているから、「ギャップがある」と思っていただけることはうれしいことなんですけど……どうなんですかね? 話すまでクールだと思ってました?

──すごいクールか、その真逆かのどちらかだと思っていました。

あはははは!(笑) 完全に後者です。歌っているときだけは、カッコつけたいんです。特に女性にカッコいいと思われたいのでクールな雰囲気を出すけど、しゃべってみたらイメージが崩れちゃう(笑)。

──みゆなさん、Twitterでも「みんな大好きやねんけど 特に女の子のリスナーさん大好きやねん」と発言されていましたよね。

ただ単に女性から好かれたくて。女性がすごく好きなんです。散策中にかわいい女性を見つけてニヤニヤするのが好きで(笑)。カッコいい男性よりも、かわいい女性をよく探してます。

──どうして同性に目が行くのでしょう?

男っぽくなりたかったんです。「女性にモテたい」って小さい頃から思ってて。それで髪をショートにしたり、ズボンをよく履いたりしてました。例えば椎名林檎さんは男性人気も高いですけど、女性にとっても憧れの対象だったりするじゃないですか。クールで美しくて、みんなに憧れられている感じが素敵だなと思って。だから私も「女性にモテたい」と思うようになったんだと思います。

──みゆなさんが椎名林檎さんのほかに「好きだ」と公言されているNakamuraEmiさんも、女性ならではの強さを持っているアーティストですよね。

女性って内面を隠したり、「どこまで他人に素を出していいものか?」と考えたりすると思うんです。「こんなことをして品がないと思われたらどうしよう?」とか。そうやって日常的に感じるモヤモヤを秘めたりするけど、椎名林檎さんもNakamuraEmiさんも世間や人間の苦い、おいしくない部分をちゃんと出して、感じたことをリアルに伝えてくれる。だからこそ歌が胸に迫るというか。それがすごくカッコいいなと思うんです。“なかなか言えないだろうけど、叫びたい思い”みたいなものを表現できるアーティストに、私もなりたいと思っています。

──取り繕わずありのままを表現するのがカッコいい、ということだと思うんですが、そう思ったのにはきっかけがあったんですか?

みゆな

私、初めて歌詞のメッセージにリアルさを感じたのがONE OK ROCKさんの曲で。そこから高橋優さん、椎名林檎さん、NakamuraEmiさんと好きになっていったんですけど……今挙げた方たちの歌詞に書かれていることって、ただの「がんばろう」じゃないと気付いたんです。

──なるほど。

例えばNakamuraEmiさんの「YAMABIKO」に「歩き出した山道は ガラスの破片が多いんだ」から始まる一節があるんですけど、すごくカッコよくて「こんな表現ができるんだ!」と衝撃を受けたんです。しかも、周りの目を気にせずに自分の色をさらけ出しているのがめちゃめちゃ素敵だと思って。自分の届けたいものをまっすぐ届けている姿勢にものすごく惹かれました。「メジャーデビュー」という曲には「人を気にして書いたら このデビューはおじゃんだろう」という歌詞があるんですけど、「確かにそうだな」と思いますし。自分はまだ若いからこそ、この「メジャーデビュー」を“忠告の歌”として受け止めて、私も音楽で自分なりの色を出せたらと思います。

自分にとってはどれも応援歌

──そんな志のもとできあがったのが、「眼」なんですね。

はい。タイトルは、「今まで目をそらしてきたこともちゃんと見つめ直そう」とか、「明日の未来とか、ちょっとした夢を見つめよう」という思いを込めて付けました。私これまで、過去の自分や嫌なこととは目を合わせないようにして生きてたんです。そうやって逃げたことが正解なのか、間違いなのかはわからないんですけど。でもこれからの自分はみんなに見てもらう立場だし、自分もいろんなものを見つめていくはずだから、この作品を1つのきっかけにしようと思って。だからタイトルを「眼」にして、ジャケット写真も目の周りに葉っぱの芽を描きました。

──過去も未来にも目を背けず、芽を出して歩んでいこうと。

みゆな

はい。それに加えて「小さかった自分がやっと芽を出せたよ」という思いも込めてます。

──収録曲には先ほども少しお話のあったテレビアニメ「ブラッククローバー」のテーマ曲「ガムシャラ」「天上天下」も並んでいます。

「眼」の収録曲は、自分にとってはどれも応援歌です。「ガムシャラ」も「天上天下」も「がんばって前を向いて行こうぜ」という思いを歌った曲だし、あと「たんぽぽ」は自分が中学3年生で不登校になったときに作った歌なんです。歌詞はそのときの自分のちっぽけさを、たんぽぽの綿毛に例えて書きました。綿毛はすぐに飛んで行っちゃうけど、ちゃんと根を張らないとつらいことにも耐えられなくなっちゃうからがんばろう、という自分への応援歌です。

──「たんぽぽ」はそんな時期に書かれた曲だったんですか。

はい。不登校で授業を受けていなかったから、テストを受けても案の定解けなくて。テスト中に窓の外を見ていたら「たんぽぽ」が浮かんできて、気付いたら回答用紙の裏に歌詞を書いてました。人生で初めて作った「ふわふわ」も学校へ行っていない時期に作ったものなんですよ。今思えば、学校へ行けてなかったからこそ、いろんなものに目を向けられたのかなとも思います。学校からは逃げていたけど、別の世界を見つめることができた。ギターに触れるようになったし、歌を作るようにもなって……その結果、今こういうふうになってる。これまでの経験が歌の土台になって生かされているんだなと思ったら「人生捨てたもんじゃないな」って思います。なんか恥ずかしいな(笑)。

自分の中の“種”だったものが、芽吹いたものばかり

みゆな

──今のみゆなさんは、すごく前向きになれているんですね。

私、小学生の頃からずっと「悩みすぎだよ」と周りに言われていたんですよ。1つの悩み事がいろんな方向へ広がっちゃうから、たくさんのことを深刻に考えてしまうようになって。特に「自分はこんなふうに生きていていいのか」とか「自分が大人になったときにどうすればいいのか」とか、先々のことを考えていました。大人になったときの自分をものすごく想像して、悩んでいたんですよ。

──小学生らしからぬ悩みですね。

だからなのか、同級生とは話が合わなかったんです。友達もそんなに多くなかったし、自分からクラスメイトを避けるようになって。次第に大人の方と多く関わるようになっていきました。で、今では20歳くらいの方と遊ぶことが多いんですけど、そういう方たちの話を聞くと、自分になかった視点を持てるんですよ。「20歳ってこんな悩みがあるんだな。じゃあ30歳はどんな悩みがあるんだろう?」と、知りたくなって。そうやって好奇心を持てるようになって、気持ちが変わっていったのかもしれないです。今では「どんどん話してごらん」とか言って、人の相談を受けるようにもなりました(笑)。

──あはははは(笑)。

それでいろんな人の悩みを聞いたら、みんなそれぞれまったく違う悩みを持っているんだとわかって。価値観も広がったし、たくさんのことを受け止められるようになりました。前は人と関わることって大切じゃないと思ってたけど、関われたからこそこんなに高いビルでインタビューを受けて(笑)、こんなお話ができるし。中学生のときには想像も付かなかった体験ができているから、縁を大切にしていきたいなと思います……すごい話がそれちゃったけど(笑)。

──あはは(笑)。そんなふうに、「眼」にはみゆなさんの人生を映し出すような曲が並んでいますが、RADWIMPSの「なんでもないや」をカバーしたのはどうしてなんですか?

この曲を聴いたときに大きく心を動かされたから。「ふわふわ」と同じくらい、私がここに来れた理由の曲なので、どうしても最初の作品でカバーしたかったんです。改めて、「眼」という作品はすごく思いが深いというか……「みゆな」のスタートになった曲が詰まっていると思います。自分の中の“種”だったものが、芽吹いたものばかり。「これからがんばっていくんだ」という自分への決意でもあるし、たくさんの方にとって、生きるための力の源になってほしいなという思いもこもっています。

みゆな

2019年2月12日更新