三浦風雅×Rake「君が君でいられるように」インタビュー|「100万回の『I love you』」でつながった2人が今歌う意味

三浦風雅のメジャー1stアルバム「君が君でいられるように」が7月13日にリリースされた。

自身が音楽活動を始めるきっかけとなった楽曲「100万回の『I love you』」の作者であるRakeとコラボレーションすることをかねてから切望していた三浦。彼はメジャーデビューを機に今作でRakeに楽曲提供をオファーし、その夢を見事実現させた。

音楽ナタリーでは三浦とRakeへのインタビューを実施。2人をつないだ「100万回の『I love you』」に対する思いや、Rakeが三浦のために書き下ろした表題曲「君が君でいられるように」と、予約限定F盤のボーナストラック「君と僕のI love you」について深く掘り下げる。

取材・文 / 秦野邦彦撮影 / 山崎玲士

高校卒業まで2年間歌い込んだ「100万回の『I love you』」

──三浦風雅さんは今回音楽ナタリーの特集に初登場ですので、まずはメジャーデビューからの1年を振り返りつつ、今作でRakeさんとご一緒されるまでのいきさつを教えてください。

三浦風雅 そもそも僕が音楽活動を本格的に始めたきっかけが、高校の卒業式の日に歌ったRakeさんの「100万回の『I love you』」のカバー動画がTwitterでバズったことなんです。そこからメジャーデビューに至るまで5、6年かかったんですけど、環境もすごく変わりましたし、自分が今までやってきたことがまったく通用しないということをまざまざと感じた1年間でした。今回のアルバムは自分の中ではメジャーデビューしてからの1年間がすごく詰まった1枚になったと思っています。

──三浦さんが「100万回の『I love you』」を歌っていたことは、Rakeさんの耳にも届いていたんですか?

Rake もちろん。三浦くんのファンの方から「私が応援している三浦風雅くんがRakeさんの「100万回の『I love you』」を歌っているので、ぜひ聴いてください」とか「今度仙台で風雅くんの路上ライブがあるので、ぜひRakeさんも来てください」といった熱いメッセージが僕のインスタに届いていたんです。あの曲はたくさんの方がカバーしてくださっているんですけど、何10万回と再生が伸びてる動画はそれほど多くないので、ありがたいなと思いながら。しかも動画のシチュエーションがいいじゃないですか。卒業のときに歌って、周りの友達の「えっ、うまくない?」みたいな声が入っていたり(笑)。作り手として本当にうれしいですよね。この曲は最初、友達に薦められたって言ってたよね?

三浦 友人がギターをやっていて、いろんなジャンルの音楽に詳しかったんです。それで高校1年の終わりに「風雅の声に合う曲あるからちょっと聴いてよ」って薦められたのがRakeさんの「100万回の『I love you』」なんですけど、ファルセットの感じとか歌っててめちゃくちゃ気持ちよくて! それから学校帰りにカラオケに行っては歌いまくる生活をして、高校生活の最後にいつも歌ってるこの曲を思い出に歌おう、という話になったんです。

左から三浦風雅、Rake。

左から三浦風雅、Rake。

Rake じゃあ、2年ぐらい歌い込んでくれたんだ?

三浦 フリータイムで入って何度も何度も歌ったので、次に入った人は履歴を見てビックリしたと思います(笑)。

Rake そりゃ驚くよね(笑)。僕はもともと洋楽ばかり聴いていたんですけど、20歳の頃にふと、とびっきりのJ-POPを作ってみようと思ったんです。スタジオで練習してる合間の休憩時間にイントロのコードが急に浮かんで。そこからとびっきりのJ-POPといえば「愛してる」だろうと、それまでの自分の恋愛や失恋体験をさかのぼったら5分ぐらいで「『愛してる』の言葉じゃ 足りないくらいに君が好き」のフレーズがバーンと出てきたんです。本気で人を好きになったら離れたくなくなるじゃないですか。その思いを「改札の向こう側 人ごみに消えてゆく」という部分に込めたんです。僕の地元である仙台駅の景色を思い浮かべながら。仙台駅の改札はまっすぐ伸びていて、20mぐらい先まで行ってもまだ見えるぐらいなんです。これが東京の新宿だったら人ごみに一瞬で消えちゃうから余韻も情緒もないんだけど(笑)。

三浦 「改札の向こう側」にはそういう思いが込められていたんですね。

──「100万回の『I love you』」は東日本大震災の際、たくさんの人たちの心の支えになった歌でもありましたね。

Rake 2011年の3月9日にCDリリースした直後に震災が起きて、僕自身も仙台で被災しました。ライフラインのない生活だから、東京のレコード会社のスタッフさんともなかなか連絡が取れない状態で、プロモーションが一切できなかったんです。でも僕自身が動けない間、有線やラジオでたくさんかけていただいて。2カ月半ぐらい経ってようやく音楽活動を再開できるとなったときは、「あれっ? この曲みんなすごく知ってくれてるけど、どういうこと?」みたいな浦島太郎状態だったので、いまだに不思議な感じですね。避難所にいた方から「ラジオでこの歌を聴いてすごく元気もらいました」という声をたくさんいただいて。ラブソングではあるんですけど、恋人だけじゃなく、友達とか家族、もしかしたら会えなくなってしまった人に向けての歌として皆さんに聴いていただけたのかもしれないです。

自分はなぜ歌ってるんだろう

──三浦さんもコロナ禍の最中の2021年7月にメジャーデビューをされたので、思い通りにプロモーション活動ができず悔しい思いをされたんじゃないでしょうか(参照:三浦風雅、月9「ナイト・ドクター」オリジナルナンバーでメジャーデビュー)。

三浦 それまで路上ライブを含めて頻繁にやっていたライブが一切できなくなって、何をしていいかわからない状況がしばらくありましたね。目まぐるしく変わっていく環境に追い付くのに必死で。今回のアルバムに入っている曲にも自分の感情の変化がすごく表れています。メジャーデビュー曲「Start」を出して、タイトルのように前向きな気持ちになれないまま自分を見失ってしまって。「CANVAS」は、自分が自分でいることが何より自分にしかない色になると思って作詞したんです。そこからは徐々に前向きな気持ちで踏み出せています。

三浦風雅

三浦風雅

Rake 去年の7月って、世の中がすごくピリピリしてた時期だもんね。路上ライブをしてる人もいないし。

三浦 路上ライブに来てくれていたファンの方と会えなくなったのはつらかったですね。ライブ自体は最近ようやく少しずつできるようになりましたけど、ライブハウスに来るのはまだ抵抗があったり。「ライブをしてるときの風雅くんが好き」という方が多かったので、それができなくなった期間に離れてしまった方もたくさんいらっしゃいますし、このアルバムを機に改めてスタートしていかないと!と思っているところです。Rakeさんはどうでした?

Rake シンプルに“人は1人で生きていけない”というのは、むちゃくちゃ感じましたね。たまに高校時代からの古い男友達とZoomでオンライン飲みをやると、8時間くらいしゃべっちゃって、気付けば朝になっていたとか(笑)。

三浦 僕は自分の思いを直接面と向かって届けたくて路上ライブに出ていたので、それがなくなってから本当にキツかったんです。配信ライブはやっていたからファンの皆さんとつながれてはいたんだけど、パソコンの画面には僕の顔しか映っていないから「自分はなぜ歌ってるんだろう」みたいなことまで考えてしまって。

Rake 確かに風雅くんの路上ライブって、お客さん1人ひとりに語りかけるように歌ってるもんね。来てくれた方の顔を見ながら「今日は来てくれてありがとう! 一緒に楽しい時間過ごしましょうね」って。ライブ配信だと相手の顔が見えないもんね。

Rake

Rake

三浦 歌ってる最中も「路上ライブいつやるの?」というコメントがたくさん届くから「いや、自分もできることならやりたいよ!」って(笑)。その時期は精神的にキツかったです。

Rake なるほどね。でもさ、生配信だとチャット機能があるから、歌ってる間にいっぱい書き込みが来るじゃない? 「私ここの歌詞好き」とか「ここで手を上げたい」とか。ちょっとアレンジ変えてやったら「今日のこのバージョン好きかも」とか。俺はそういうみんなの心の声が聞こえてくるのが楽しくて、けっこう好きでした。