音楽ナタリー Power Push - mishmash*Aimee Isobe

テーマは“デヴィッド・ボウイ”と“Instagram” 新たな女性シンガーを迎えて贈る新作「Instagenic」

テーマはデヴィッド・ボウイ

──「これから先、何度あなたと。」はすごく洗練されたポップスですよね。音楽的な方向性についてはどんなイメージがあったんですか?

マスヤマ 「これから先、何度あなたと。」は僕の曲なんですけど、そのほかは「デヴィッド・ボウイをテーマにして」と、美島さんに丸投げしたんです。

美島 そうですね(笑)。

マスヤマ Aimeeもデヴィッド・ボウイが好きで、そこで気が合ったところもあるんですよね。僕は1972年の中学2年のときにライブを観に行ったんで、そのことを彼女に自慢したり(笑)。「ずるい!」って怒ってましたけど。

左からマスヤマコム、Aimee Isobe、美島豊明。

Aimee 怒ってないです(笑)。デヴィッド・ボウイはアーティストとしても尊敬しているし、パフォーマンスもすごいじゃないですか。彼の話をしてるだけで興奮しちゃうんですよ。

マスヤマ ちょうどロンドンで「David Bowie Is」という展覧会があって、そのカタログをプレゼントして。

美島 モノで釣ったんだ(笑)。

マスヤマ Aimeeとは好きな曲の話もしたんだけど、そのセレクトも面白いんですよね。

Aimee 一番好きなのは洋楽だとデヴィッド・ボウイの「Life On Mars?」(1971年リリースのアルバム「Hunky Dory」に収録)、邦楽だとはっぴいえんどの「さよならアメリカ さよならニッポン」(1973年リリースのアルバム「HAPPY END」に収録)ですね。

マスヤマ 20代中盤でそんな人、なかなかいないでしょ(笑)。彼女はYouTube世代だから、僕らのようにリアルタイムで音楽を聴いているわけでないからね。60年代も70年代も関係なく、自分で選んで聴いてる。

──なるほど。

マスヤマ あとデヴィッド・ボウイの曲って、コードはシンプルなんだけど、拍子が変化するとか、1番と2番でメロディが違うとか。デヴィッド・ボウイはそういう細かいこともやってるしね。そういうのも意識してmishmash*Aimee Isobeの曲を作っていきましたね。

美島豊明

美島 例えば「Fifteen seconds of fame.」はバンドの編成が先にあったんですよ。マスヤマさんから「アコギがあって、サックス、ソリーナ(1970年代中盤に開発された、弦楽器の音を鍵盤で演奏できる楽器)が入って」というアイデアをもらって。

マスヤマ 全然覚えてない(笑)。

美島 (笑)。実際、デヴィッド・ボウイにはそういう編成の曲がいくつかあるんですよね。

マスヤマ あと、ダイナミックレンジを広くしたいという話はしたかな。デヴィッド・ボウイのアルバムの「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」(1972年リリース)もそうだけど、アコギが鳴っている上にハードロックサウンドが入ってる曲がデヴィッド・ボウイはけっこうあるから。

アドレナリン出まくりの現場

──デヴィッド・ボウイの世界観、サウンドメイクを引用しつつ、2015年の新しいポップスにつなげるというか。

マスヤマ そう。ビジュアルもそうなんですよね。例えばこのAimeeのアーティスト写真は「Hunky Dory」のジャケットを参考にしてるんだけど、トカゲ形の大きな指輪は3Dプリンターでプロに頼んで作ってるんですよ。

──ディテールへのこだわりがすごいですね!

Aimee すごく楽しいですね。私も制作に携わらせてもらってるんですけど、もともと歌だけじゃなくてほかのクリエイティブなことにも興味があるので。大学時代も映像制作の勉強をしていたし。

──さらにリード曲「Running on empathy」のMVは映像作家のジャスティン・アンブロシーノの監督のもと、ニューヨークで撮影されたそうで。このMVにはドラマ「ポリスアカデミー」シリーズや、映画「スリーメン&ベビー」などで知られるスティーヴ・グッテンバーグが出演しているんですね。

Aimee Isobe

Aimee そうなんです! このときの撮影も楽しすぎて、アドレナリンが出まくってましたね。ずっとニューヨークに住んでいたので、そこで撮影できるのもすごくうれしくて。スティーヴとの出会いも大きかったし、いろんなことを学ばせてもらいました。大スターなんですが「Aimeeのミュージックビデオだから」って私の思いを尊重してくれて、気持ちが引き締まりました。

マスヤマ 明け方の4時くらいまで撮影していて、かなり過酷な現場だったんですけど、Aimeeはずっと楽しそうで。

Aimee やっぱり好きなんでしょうね、現場が。人前でパフォーマンスするのも大好きだし。

マスヤマ Aimeeは芸能一家で育ってるからね。お母さんが「太陽にほえろ!」に石原裕次郎のアシスタント役で出演していた女優さんだったっていうこともあるし。

mishmash*Aimee Isobe ニューアルバム「Instagenic」 / 2015年11月20日発売 / 3500円 / mmp-052 / music is music
mishmash*Aimee Isobe ニューアルバム「Instagenic」
収録曲
  1. Magenta-hued, by the river.
  2. Running on empathy.
  3. Speed your light.
  4. Fifteen seconds of fame.
  5. Albero della vita.
  6. One dream. Snow Flakes.
  7. How much longer will I have you with me?
  8. マジェンタ色の川辺で
  9. ランニング・オン・エンパシー
  10. スピード・ユア・ライト
  11. 15秒間の名声
  12. トゥリー・オブ・ライフ
  13. ひとひらの夢
  14. これから先、何度あなたと。
mishmash*(ミシュマシュ)
mishmash*

Corneliusのサウンドプログラマーを務める美島豊明と、ゲームや出版、映像などさまざまなカルチャーコンテンツを手がけてきたマスヤマコムによる音楽ユニット。作品ごとに異なるクリエイターをフィーチャーすることをコンセプトに掲げている。2012年12月リリースの1stアルバム「mishmash*Julie Watai」および2013年12月リリースの2ndアルバム「セカンド・アルバム / The Second Album」では、写真家として活躍する元アイドル / モデルのJulie Wataiをフィーチャーした。2014年6月にはダンサーの折原美樹をフィーチャーしたmishmash*Miki Oriharaを始動し、配信シングル「Ding Dawn / ディン・ドーン」「Reach Out until you can feel me. Hold tight. / 手を伸ばして、私にふれるまで、ぎゅっと。」を発表。2015年11月にAimee Isobeを迎えたmishmash*Aimee Isobe名義で、アルバム「Instagenic」をリリースする。また11月21日に東京・北参道ストロボカフェにて同名義にてライブを行う。

Aimee Isobe(エイミーイソベ)
Aimee Isobe

1990年生まれ。幼い頃から国内外のミュージカルに出演し。アメリカ・ニューヨークの芸術大学でBFA(学士)を取得し、卒業後は大学院でMBA(経営学修士)取得のため勉強を続けながら、ニューヨークと東京を拠点にアートバイヤーとして世界を回る。またアートフィルムを制作したり、キャストとして出演したり多角的に活躍している。