音楽ナタリー Power Push - mishmash*Aimee Isobe

テーマは“デヴィッド・ボウイ”と“Instagram” 新たな女性シンガーを迎えて贈る新作「Instagenic」

Corneliusのサウンドプログラマーとしても知られる美島豊明と、プロデューサーのマスヤマコムによる音楽ユニットmishmash*。プロジェクトのたびにさまざまなジャンルのクリエイターやパフォーマーを招き、質の高いコラボレーションを実現してきたmishmash*だが、今回はニューヨークで舞台を中心に活動してきた25歳の女性シンガー・Aimee Isobeをフィーチャーし、mishmash*Aimee Isobe名義によるニューアルバム「Instagenic」をリリースする。

片渕須直が監督を務め、青木俊直がキャラクター原案を手がけたアニメーションによるミュージックビデオが話題を集めている「これから先、何度あなたと。」と、映像作家ジャスティン・アンブロシーノがMVを監督した新曲「Running on empathy」を含む本作には、美島、マスヤマ、Aimee Isobeのほか高野寛がギタリストとして参加。さらにでんぱ組.incやtofubeatsらの作品を手がけるデザイナーのスケブリこと杉山峻輔がアートワークに携わるなど、魅力的なコラボレーションが繰り広げられている。

今回音楽ナタリーでは、美島、マスヤマ、Aimee Isobeの3人にインタビューを実施。「Instagenic」の制作プロセスについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介

フィーチャーするのがかわいい女子じゃないとダメ

──今回mishmash*は、新ボーカリストとしてAimee Isobeさんをフィーチャーしています。まずはこのプロジェクトが始まった経緯を教えてもらえますか?

左からマスヤマコム、Aimee Isobe、美島豊明。

マスヤマ はい。最初はシンガー兼写真家のJulie Wataiさん、次はコンテンポラリーダンサーの折原美樹さんと一緒にやって、次はどうしようかと考えているときにAimeeと出会いまして。Aimeeはニューヨークでミュージカル出演などの経験があって、歌って踊れる人なんですよね。あと前からmishmash*でライブをやりたい、というのがあったんです。ライブに対応できる人を探していたわけではないんだけど、彼女だったらできるんじゃないかなと。

Aimee Isobe 光栄です。マスヤマさんと知り合ったのは、Julieさんとの2枚目のアルバム「セカンド・アルバム」が出た直後くらいなんですよ。

マスヤマ 2013年の終わりですね。

Aimee それで、このお話をいただいたときはビックリしましたね。私は舞台が中心で、こういう音楽プロジェクトは初めてだったので。でも、mishmash*はいつも面白いプロジェクトをやっているイメージがあったから、ワクワクしました。

マスヤマ 今思い出したけど、カラオケで歌ってもらったんですよ。

美島 あ、そうなんだ。

Aimee オーディションみたいな感じで(笑)。BoAさんの曲とかを歌ったのかな?

美島豊明

マスヤマ そう。それで美島さんにはAimeeの資料を渡して、曲を作ってもらって。でも、そんなに具体的に曲について相談してないよね?

美島 そうですね。Aimeeさんがキーがどこまで出るのかを確認するくらいで。

マスヤマ ただフィーチャーするのがかわいい女子じゃないとダメっていうのが、大枠としてあるくらい(笑)。

美島 そうじゃないとやる気が起きないんで(笑)。

始まりは片渕須直のアニメMV

──mishmash*Aimee Isobeのプロジェクトは、まず楽曲の制作からスタートしたんですか?

マスヤマ いえ、その前に「これから先、何度あなたと。」のMVの話が先にあったんです。Aimeeの前にアニメクリエイターの片渕須直さんと知り合っていたので。初めて片渕さんと会ったのは、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のオフ会だったんですけどね(笑)。キャラクターの原案を描いてくれた青木俊直さんとは「ウゴウゴルーガ」(1992~4年にフジテレビ系で放送された子供向けバラエティ番組)をやっていた頃からの知り合いなんですけど、彼が“あま絵”(「あまちゃん」の登場人物を描いたイラスト)をFacebookやTwitterにアップしていて。彼にはmishmash*Julie Wataiの「セカンド・アルバム」のときにもイラストを描いてもらっていたんですけど、打ち合わせで話を合わせるために僕は「あまちゃん」を全部観たんですよ。で、その後、青木さんも参加している「あまちゃん」のオフ会で片渕さんと会って、「一緒に何かやりましょう」という話になったんです。

──片渕須直さんといえば、「ちびまる子ちゃん」「魔女の宅急便」「マイマイ新子と千年の魔法」などに携わっている、日本を代表するアニメクリエイターですよね。

マスヤマコム

マスヤマ ええ。彼を交えて、今までとは違うことをやりたかったんですよね。とにかく「観たことのない絵が見たい」という欲望が強くて。アニメの世界で片渕さん以上の才能を持つ人はなかなかいないし、しかも出会ったのが頼めそうなタイミングだったんですよ。今は長編(2016年公開予定の映画「この世界の片隅に」)に入ってるから、絶対無理ですし。

──ええ。

マスヤマ 「これから先、何度あなたと。」のMVって、青木さんも片渕さんも好きな「あまちゃん」の世界なんです。女の子が2人いて、電車が出てきて、トンネルもあるっていう。青木くんは「女の子しか描きたくない」という人なので(笑)。あとはAimeeの歌ですよね。最初は舞台っぽい歌い方だったんですよ。遠くまで届かせるような歌い方というか。

美島 ヘッドフォンをして歌う方法に慣れてなかったからね。そこまで声を張らなくてもいいよっていう。

Aimee Isobe

Aimee 腹式呼吸の世界で生きてきましたから(笑)。

マスヤマ カヒミ・カリィみたいな歌い方もあるんだよという話をして。映像ができたあと、もう一度歌だけ録り直したんですよ。

Aimee 歌ったことがないジャンルの曲調でしたからね。最初はちょっと歌いづらくて……。

美島 すいません(笑)。こちらはAimeeの声が素直だから、やりやすかったけどね。

Aimee 自分としてはあとに録ったほうがいいかなって思いますね。時間が経つにつれてすごい中毒性を感じるようになったんですよ。歌詞もトリッキーで面白いし、今はもう頭の中でずっとリピートしてます。

マスヤマ リフから作ってるからね。今回の曲はポップス寄りだと思いますよ。Julieさんのときはもっと音響的でしたけど、今回はメロディが耳に残る感じというか。

mishmash*Aimee Isobe ニューアルバム「Instagenic」 / 2015年11月20日発売 / 3500円 / mmp-052 / music is music
mishmash*Aimee Isobe ニューアルバム「Instagenic」
収録曲
  1. Magenta-hued, by the river.
  2. Running on empathy.
  3. Speed your light.
  4. Fifteen seconds of fame.
  5. Albero della vita.
  6. One dream. Snow Flakes.
  7. How much longer will I have you with me?
  8. マジェンタ色の川辺で
  9. ランニング・オン・エンパシー
  10. スピード・ユア・ライト
  11. 15秒間の名声
  12. トゥリー・オブ・ライフ
  13. ひとひらの夢
  14. これから先、何度あなたと。
mishmash*(ミシュマシュ)
mishmash*

Corneliusのサウンドプログラマーを務める美島豊明と、ゲームや出版、映像などさまざまなカルチャーコンテンツを手がけてきたマスヤマコムによる音楽ユニット。作品ごとに異なるクリエイターをフィーチャーすることをコンセプトに掲げている。2012年12月リリースの1stアルバム「mishmash*Julie Watai」および2013年12月リリースの2ndアルバム「セカンド・アルバム / The Second Album」では、写真家として活躍する元アイドル / モデルのJulie Wataiをフィーチャーした。2014年6月にはダンサーの折原美樹をフィーチャーしたmishmash*Miki Oriharaを始動し、配信シングル「Ding Dawn / ディン・ドーン」「Reach Out until you can feel me. Hold tight. / 手を伸ばして、私にふれるまで、ぎゅっと。」を発表。2015年11月にAimee Isobeを迎えたmishmash*Aimee Isobe名義で、アルバム「Instagenic」をリリースする。また11月21日に東京・北参道ストロボカフェにて同名義にてライブを行う。

Aimee Isobe(エイミーイソベ)
Aimee Isobe

1990年生まれ。幼い頃から国内外のミュージカルに出演し。アメリカ・ニューヨークの芸術大学でBFA(学士)を取得し、卒業後は大学院でMBA(経営学修士)取得のため勉強を続けながら、ニューヨークと東京を拠点にアートバイヤーとして世界を回る。またアートフィルムを制作したり、キャストとして出演したり多角的に活躍している。