M!LK「エビバディグッジョブ!」特集|吉田仁人ソロインタビューで紐解くブラボーな10年と現在地

M!LKが10月23日にニューシングル「エビバディグッジョブ!」をリリースした。

11月24日に結成10周年という大きな節目を迎えるM!LK。アニバーサリーを目前にリリースされる「エビバディグッジョブ!」は、誰もが日々経験する小さなトラブルややるせなさを描きながらも「なんとかなるさ」と寄り添い日々を肯定する、前向きな応援ソングとなっている。

リリースを記念して、音楽ナタリーではリーダーの吉田仁人へのソロインタビューを行った。M!LKらしさ満点の表題曲にメンバーが込めた思い、間もなく始まる初のアリーナツアーへの思い、そして吉田が思う“M!LKの10年間”とは。じっくりと語ってくれたその言葉から、5人の現在地を感じてほしい。

取材・文 / 三橋あずみ撮影 / 曽我美芽

今が一番“M!LKらしい”ことをやれるタイミング

──結成10周年を目前にリリースされる「エビバディグッジョブ!」は、とても前向きなアッパーチューンです。

「次は応援歌っぽい感じがいいよね」というざっくりとしたテーマがありつつ、もうすぐ10周年を迎えるこのタイミングで出す曲をどんなものにしよう?と考えたとき、メンバー間で「今が一番“M!LKらしい”ことをやれるタイミングだよね」という話になったんです。思いっきり自分たちの色を出して、好き勝手できる元気な曲をやろう!と。メジャーデビュー以降のシングル曲って、特に「Jewel」(2023年リリースの1stアルバム)まではきれいめというか、“ザ・アイドル”みたいな雰囲気だったけど、今回は思い切りはっちゃけた……言うならばメジャーデビュー前の、トンチキっぽいふざけたかわいらしさも含めた雰囲気で見せていこうと。

吉田仁人

──皆さんの中で「今が一番“M!LKらしい”ことをやれる」という思いに至った明確な理由はあるのでしょうか?

10周年という節目を迎えるタイミングだからこそ「今だな」と思ったのが1つと……あと、僕らが考える“M!LKらしさ”がずっと変わっていないことがわかったんです。今回、表題曲の候補が3つくらいあって、それぞれ聴かせてもらったんですね。メンバー自身で“M!LKっぽい応援歌”を探っていったとき、王道のポップスでもアイドルソングでもなく、一番“変な曲”をみんなが選んだという(笑)。

──そうだったんですね。おっしゃるように、メジャーデビュー以降に発表されたシングルの表題曲の多数は“王道アイドル”としての姿を見せるものだったので、今回のどこか原点回帰したような楽曲の雰囲気はどんな思いから決まったものなのだろう?と気になっていたんです。

ライブの演出に入っている(塩﨑)太智が「こういう曲をライブでやりたい」とリクエストしたり、それぞれがいろんな形で楽曲に触れるようになったからこそ、最近は「こういう曲が歌いたい」とメンバー自身が発信するタイミングも増えているんですよね。僕の中では、シングルを出すことって“ライブ拡張パック”を買うみたいな感覚で。それはライブでの自分たちの表現の振れ幅を広げるためのもので、シングルを出すことで自分たちのテーマパークを増設する、というイメージがすごくあるんですよ。そういう見方で「エビバディグッジョブ!」を捉えても、今ここで「元気でキャッチーな姿」を“追加”できたのはよかったなと思います。

──なるほど。

衣装を考えるのもすごく面白かったですよ。最初はもっと落ち着いたデザインだったものを、「もっとカラフルにしちゃおう!」とみんなで話したんです。その結果、みんなそれぞれに色が付いて、僕なんか5色くらい原色が使われたド派手衣装になっちゃったんですけど(笑)、シングルでこういう雰囲気の衣装を着るのもひさしぶりだから、それも楽しくて。派手な服は好きだし、テンションが上がります。

とにかく忘れ物が多い吉田

──「エビバディグッジョブ!」は歌詞に日常の“あるある”を詰め込んだ応援ソングで、お仕事に関する悲哀の描写などは皆さんの世代的にも等身大に響くメッセージなのではという感じがします。

応援歌を作ると決めたとき、歌詞はフワッと抽象的にせず、聴いてくれる方の日常に寄り添った内容で元気が出るものにしたいなと。みんなの生活圏の応援歌にしようという思いがあって、その思いはしっかり生かされていると思います。だから僕らも歌いながら「ああ、わかる」と思いますし。M!LKらしい歌詞、かつ共感を誘う日常的な歌詞なので、普段よりも歌が入ってきやすい感覚がありますね。

──中でも「特にここは共感するなあ」と思うフレーズはありますか?

僕が歌ってる「鍵はどこ行った? あった! なんだ、そっか。待って、スマホがないな」は僕自身のことなんですよ。レコーディングが終わって振り入れをするくらいのタイミングで気付いて、「もしかしてこれ、僕の忘れ物グセを取り入れたの?」とスタッフさんに聞いたら「そうだよ、今気付いたの?」って。よく忘れ物をすることすら忘れていたという(笑)。

吉田仁人

──そうだったんですね(笑)。

「よし準備OK、出かけよう」と家を出たら鍵を持っていなくて、戻って鍵を取ったら今度はスマホを置き忘れる、ああ電気もついてるし……みたいなことを毎回やるんです。とにかく細かい忘れ物が多いんですけど、“特大”だったのは品川駅のホームにスマホを置いたまま、朝ごはんだけをウキウキ持って新幹線に乗り込んだこと。すぐにスタッフさんが回収してくれたので事なきを得たんですけど、その方には土下座してお礼にスタバをご馳走しました(笑)。

──完全に当て書きなんですね。

空港に着いて「よーし、帰るぞ!」と勢いよく飛行機を飛び出したら、ショルダーバックを忘れたり(笑)。どうやら常習犯らしいです。そんなわけで、僕に限らずメンバーの「そういうところあるよね」というエピソードが歌詞には組み込まれていますね。

──レコーディングはいかがでしたか? ミュージカルのように情感豊かで楽しい聴き心地の曲なので、こだわりを持って取り組んだポイントなど教えてもらえたら。

それこそ「鍵はどこ行った?」からの一連の流れはブースの中で一旦絶望しました(笑)。レコーディングのスタッフさんにも「シチュエーションを思い浮かべて心情を再現してほしい」とリクエストされましたね。それとは反対に、サビは底抜けに元気よく。皆さんの聴き心地がよくなるように、すっごい笑顔で歌いました。

太智の歌の“M!LKっぽさ”

──仁人さん以外の4人の歌についても印象を聞かせていただけますか?

太智の声は相変わらず“M!LKっぽい”ですね。僕の声も多少は“ぽい”と思うけど、何より太智の声が“M!LKっぽさ”の核を成しているというか。太智の声があることで「M!LKの歌だな」という実感が湧くくらい、特徴のある歌声だなと毎回思います。(山中)柔太朗は僕が鍵をなくした直後の「いつものパターン チックタックタック」というパートを歌ってますけど、力を抜いた歌の感じがすごく柔太朗っぽいですね。僕が慌てふためいてるときの「はいはい、またやってるわ」っていう(笑)、彼のオフっぽさがよく出ていていいなと思いますよ。なんと言うか、全体的にうまくなってますよね? 歌もそうだけど、個性の出し方が。

──それぞれしっかりニュアンスのある歌を歌われているなと思いました。

そう。みんなの歌い方が変わってきて、雰囲気がすごく出てきたから聴いていて飽きないんです。「エビバディグッジョブ!」の、メロを繰り返さずにどんどん展開していく構成が僕はすごく好きで。ワンハーフで歌ったらもったいないなと思うくらいどのパートも楽しいし、どのパートもメンバーの個性が光っているからこそ、純粋にいい曲だなと思います。

吉田仁人

──(佐野)勇斗さんで言ったら、少しこなれた感じが大人っぽさを感じさせますし……。

そう、余裕感がありますよね。それは感じます。逆に(曽野)舜太の歌のテンション感は、いわゆる等身大。彼のまっすぐなところがよく出てると思うし。あ、思い出しました。歌割りに関して1ついいですか? 「早く歯を磨け」という部分を勇斗と太智が歌っているんですけど、ここだけはちょっと不満がありまして。

──その理由は?

普段の生活の中で、“オンタイム人間”なのが太智。で、僕が2分前行動くらいの人間なんですね。あとの3人は「もう行くよー!」と必ず言われる側の人間なんですよ。だから僕が「早く歯を磨け」って言ったほうが絶対説得力あるのになあと。そういう個々のキャラクターも相まって、勝手にではありますが、歌ってる側はめっちゃ楽しいですね。勇斗と太智の声を聴きながら「俺のほうが早いけどな」と、心の中で思ってます(笑)。

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