milet|生きる道を証明する新たなアンセム

miletが新作「Prover / Tell me」を2月19日にリリースした。

今作には、テレビアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」の2ndクールエンディングテーマ「Prover」と、スペシャルテーマソング「Tell me」を収録。アニメの世界観に合わせてアンセミックなサウンドに挑んだ「Prover」は1月からオンエアされ、視聴者から熱い支持を受けている。今回音楽ナタリーでは、miletに、楽曲制作の舞台裏を聞いた。

取材・文 / 廿楽玲子

私自身も自分の新曲を聴くのがうれしい

──デビューして4枚の作品をリリースするなど、2019年は怒濤の1年でしたね。11月に大阪と東京で行われた初のワンマンライブも大盛況でした(参照:初リキッドワンマン大成功のmilet、2020年春に全国ツアー開催)。

楽しかったです! そして、貴重な体験をさせてもらってると思いました。今の時代は音楽があふれてるじゃないですか。ストリーミングで聴きたいときに聴けるし、好きな曲だけシャッフル再生で聴くこともできる。その中でビビッときたアーティストにフォーカスしていろんな曲を知ろうというのは、けっこう踏み込んだ行為だと思うんです。あの日のライブに来てくれたのはそうやって私と出会って、足を運んでくれた人たちなんですよね。

──「誰に聴かせるでもなく自分の好きなように作った曲を、こんなに多くの人に聴いてもらえるようになるなんて」というMCが印象的でした。聴き手という存在から受ける刺激も大きいんだろうなと。

聴いてくださる方とはライブくらいでしかお会いできないけど、この世界に入ってファンの方を含めいろんな人を知って、「こんな考え方もあるんだ」と感じることが全部私の経験になっていると思います。それがまた曲を作るうえで1つの要素になっていくと思うし。

──自分の中にある情景を曲にしていたmiletさんですが、今は聴き手を意識して曲を作ることもあるのでしょうか?

最初にメロディを作るときは考えてないけど、歌詞を書くときは意識してるかも。自分でも不思議なんですけど、私の中にはプロデューサーとしてのmiletと、ただのファンみたいな聴き手のmiletがいて、自分の曲を聴いて楽しむスタンスもあるんです。だから聴き手の気持ちもちょっとわかるというか、私自身も自分の新曲を聴くのがうれしいんですよ。

──では、もしこの世に自分しかいなくなっても歌を作ると思いますか?

作ってるんじゃないかな。昨日もそんなことを考えてたんですけど、たぶんこの世に歌がなくても死にはしないけど、あったほうが楽しい。私の中にはいろんな私がいて、そのうちの1人が別のmiletを励ますために歌を作るかもしれないです。

milet

どの存在にも感情移入できる作品

──さて、今回の新曲「Prover」はテレビアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」のエンディングテーマとして現在オンエアされています。「FGO」シリーズはアニメシリーズが何作もあり、さらにゲームやコミックスなどメディア展開も広く展開されている人気作ですね。

そうなんです。今回私は「FGO」2クール目のエンディングを歌ったんですけど、そこから観始めた私のファンの方が「わかんないよー!」って大混乱していて、それはちょっと申し訳ないなと思ってるんですよ。

──miletさんはもともとご存じだったんですね。

私はずっと「FGO」シリーズのファンで、今もゲームをやってるし、アニメも観ていました。だからプロデューサーに「『FGO』って知ってる?」と聞かれたとき、「ええっ、何? 『FGO』で何かやるの!?」って大興奮でした。これは私にとって1つの大きな区切りになるなと……それくらい「FGO」のテーマソングをやるというのは大ごとなんです。

──そうだったんですね。miletさんにゲーマーな一面もあったとは。

ふふふ(笑)。私、ゲーマーです! ゲームは自分が主人公になって物語を進められるのが楽しくて好き。「FGO」シリーズはゲームが原作なので、ゲームをやっていればアニメのストーリーも追いやすいんですけど、そうじゃないと流れをつかむのが難しいですよね。

──なのでまずは、miletさんがこの作品のどこに惹かれるのかをお聞きしたくて。

主人公が対峙したり仲間になったりする相手には、神様や歴史上の偉人、ビーストのような別世界の生き物もいて、生きる目的も死ぬ目的もそれぞれまったく違う。そうやって異なる価値観や概念を持った者たちが集まって織り成すストーリーなんです。でも、みんなどこか同じ部分で孤独や愛を感じているような気がする。そこが私にとって一番大事なところです。

──人間の倫理や常識を超えた世界の話なんですね。

そう、だけどどの存在にも感情移入できる部分があって、それがすごいと思います。例えばキングゥという登場人物の中にはエルキドゥという別の存在がいる。1人の中に違う存在が同居しているんです。そして、これはさっきも言いましたけど、私も自分の中にいろんな自分がいるという感覚に通じる気がしていて。

──そういえばデビュー曲「inside you」のときにもそんなお話をされていましたね。人間の中にはいくつもの顔があって、ときどき違う面がふっと表れる気がすると。

そうなんです。それぞれ違う顔なんだけど、それは1人の人間からできたものだから、どこか同じ心を持っている。その感覚と「FGO」の世界観に似たものを感じて、すごく共感するんです。

──この作品を通して自分の内面を覗くような感覚もある?

ありますね。