「クソ野郎」という気持ちをガソリンにして生きるしかない
──名称非公開の第1弾楽曲「事勿れ主義イズダウト」は、もちろんANCHORさんによる作詞・作曲・編曲です。
いかさん 昨日、ミュージックビデオの撮影だったんですよ。朝から夜中まで撮影してたんですけど、本当にあっという間で、今日起きたときに「あれは夢だったのでは……」って。
ムロ わかります(笑)。
ヒューガー 最後の撮影場所が閉館後の水族館だったから、余計に夢みたいでした(笑)。
──(笑)。1stシングルとしてこの曲が選ばれたのはどうしてですか?
いかさん 最初からこれって決まってたのかな?
ムロ どこかのタイミングでANCHORさんが決めたんだと思います。おそらく、メンバーが確定したあとじゃないかな。この4人じゃなかったら、別の曲になっていたかもしれない。
──なるほど。アッパーで攻撃的な楽曲ですが、最初に聴いたときの印象は?
ムロ 私は「こっちか!」と思いました。エモーショナル系の曲でお客さんの心をつかみに行くのかなと思っていたんですけど、その予想をいい意味で裏切られたというか。
いかさん まったく媚びてないよね。「これ、大丈夫?」と思うくらい。
ヒューガー 「喧嘩しようぜ」ですからね。
古森 「中指立てろ」とか。
ムロ (笑)。しかもレコーディングが終わったあとに32小節増えたんです。
古森 アウトロの部分ですね。そこの歌詞がまたすごくて。
ヒューガー 歌詞が追加されたことで、その前の部分に対する捉え方も変わってきた。
いかさん そうだね。全体を通してめちゃくちゃパワフルだし、とんでもないエネルギーを感じます。歌詞で言うとやっぱり「中指立てろ」が印象的でした。僕、中指を立てたことなくて。心の中ではめっちゃ中指を立ててきたんですけど、「いかさんはそんなことしないよね」って自分を枠の中に収めてしまうところがあって。
ヒューガー わかります。
いかさん 「事勿れ主義イズダウト」は、そんな自分の癖を取っ払ってくれる曲だなと思いました。まだちょっとストッパーがかかることがあって、MVの撮影の練習のときはうまく中指を立てられなかったですが(笑)。
ヒューガー 中指を立てる振付があるんですけど、いかさんの手を見たら、指がハートマークみたいになってて(笑)。
古森 ためらっちゃいますよね(笑)。
いかさん でも、ここからぶち壊していきたいです!
ヒューガー 私はBiSのときもさんざん中指を立ててたんですよ(笑)。抵抗がなかったと言うと違うのかもしれないけど、中指を立てるような精神はずっと私の中にあって……「死にたくない」という気持ちと「明日死んでもいいように生きる」という気持ちが両方生まれて、グチャグチャになることがあるんです。この曲に「死んでやんねえぞ」という歌詞がありますけど、まさに自分の気持ちだなって。
──ヒューガーさんの本心とリンクしている歌詞なんですね。
ヒューガー はい。「こんな世界でさ なけなしの寿命削って言ってやる 死んでやんねえぞ」という歌詞がありますけど、私、500年くらい生きたいんですよ。
いかさん わかる(笑)。
ヒューガー やりたいことがいっぱいあって、寿命がぜんぜん足らないなって。なのでこの歌詞を歌えることがすごくうれしいし、自分の本心を込められると思ってます。
いかさん 「死にたくない」というマインドって、「いつ死んでもいい」と表裏一体というか。成果を出せているかどうかにかかわらず、今まで全力で生きてきたからこそ、別に明日死んでもいいと思ってしまうんだろうなと。
ヒューガー 今、自分の感情の解像度が上がりました(笑)。なんていうか、「クソ野郎」という気持ちをガソリンにして生きるしかなくて。いろんなことに対して「クソが!」って思うけど、それを燃料にないと生きていけない。ずっとそんな感じですね。
クリエイティブなことって楽しいんだな
古森 私の場合は、さっき話したように事なかれ主義で。表立って活動する以上、あんまり尖ったことは言わないようにしようと考えちゃったりするんです。もちろん心の中では「おい!」と思うこともあるけど、何か言うとすぐに突かれがちな世の中なので。でも、「おい! なんだよ!」って怒っていいと思うんですよね。それはANCHORさんの曲を聴いて感じたことでもあります。普段は事なかれ主義だけど、「事勿れ主義イズダウト」を歌うとき、名称非公開として活動しているときは、自分の思いを音や歌に乗せていこうって。そういうふうに背中を押してくれる曲だと、今は捉えています。
──実際に歌っていく中で、曲の捉え方が変わった?
古森 はい。何回も聴いて、レコーディングして、できあがった楽曲をまた何度も聴いて。そうやって自分の中に落とし込んでいきました。
ヒューガー もぐちゃんはめちゃくちゃたくさんの人、動画の視聴者と向き合ってるから、言っていることや歌にすごく説得力があると思う。
──登録者数50万人超えのYouTuberですからね。1人でそれだけの数の視聴者と向き合うのは確かに大変だと思います。
古森 でも、アイドルやアーティストのほうがお客さんと距離が近いと思うんです。その分、心のHPが減っていくだろうし、私よりももっと大変じゃないかなって。
ヒューガー お互いに尊敬し合ってます!
──ムロさんにとって、「事勿れ主義イズダウト」で特に印象的な歌詞は?
ムロ 話し出すと止まらないんですけど(笑)、「一回くらいじゃあ 転けたって大差無かったんだ」ですね。この歌詞を見たときに、もうなんも怖くねえやと思えたので。あとはさっきも話していたアウトロの32小節。私たちそれぞれの思いを書き起こしてくれたような歌詞だし、歌うたびに泣きそうになります。
古森 うん。ぜひ聴いてほしいですね。
──MVの撮影はいかがでした?
いかさん 私にとっては6、7年ぶりの本格的なMV撮影だったんですよ。以前はほぼ1人で作っていたし、それが当たり前だったんですけど、今回4人で撮っていたら「あのときって孤独だったのかも」と思って。当時もファンのみんながいたし、寂しさは感じてなかったですが、それでもどこかに孤独はあったんだろうなと……。あと、名称非公開のMV撮影はシンプルに楽しかったです(笑)。モノ作りするとき、ずっと“苦しい”が近くにあったんですよ、実は。今回の撮影で「クリエイティブなことって楽しいんだな」って改めて感じられたし、そうして作ったもののほうが多くの人に伝わると思います。
ムロ 確かに!
ヒューガー 確かに×100ですね(笑)。
ムロ ふざけていたわけではなくて、ずっと真剣に撮影していたんだけど、めっちゃ楽しくて。
ヒューガー 前のグループでは「うまくやんなきゃ」という気持ちも強かったんです。でもこの4人でレコーディングや撮影をするときはプレッシャーみたいなものは全然なくて、とにかく楽しい。いかさんが言う通り、そのほうがファンの皆さんにも楽しんでもらえると思います。
古森 しかもすごく熱量のある現場だったんですよ。あんなにたくさんのスタッフの方がいる撮影は初めてだったし、メンバーはもちろん、関わってくれた人たちの思いが乗って、すごいエネルギーでした。
ムロ うん、熱量がとにかくすごかったです。
いろんな形があっていい
──9月14日には、ヒューリックホール東京で初のライブが開催されます。その先のビジョンも描いていると思いますが、今の時点では、名称非公開をどんなグループにしていきたいと考えていますか?
ムロ 私は「ANCHORさんの楽曲を必要な人に届けたい」という思いがこのグループで活動するきっかけだったので、グループとしてはもちろんですが、私自身が表現者としてしっかり成長していきたいと思っています。
いかさん 自分のことで言うと、最初は「ガールズグループに自分が?」という大きい疑問があって(笑)。準備期間やレコーディング、MVの撮影を通して、徐々に実感が湧いてきている段階なんですよ。見たことのない景色に出会えるだろうし、ファンの皆さんにも「カッコいい」と思ってもらいたいけど、まだ自分でうまく想像できていなので、ビジョンのすり合わせをやっていこうと思っています。そのためにメンバーのみんなにも力添えをもらいたいですし、日々を強く生きていたいなと。
ヒューガー 私はまず、この3人がめっちゃ好きです。
ムロ・いかさん・古森 (笑)。
ヒューガー 初のライブで大きい会場を準備してもらって、すごくありがたいなって。この4人でやりたいことはたくさんあるんですよ。手持ち花火とか(笑)。何よりまだ見ぬお客さんに会いたいし、一緒にいろんなところに行けたらなと。日本は大きいけど、地球はもっとデカいじゃないですか(笑)。海を越えてみたい気持ちもあるし、とにかくいろんなことをやりたいです。
古森 私もメンバーのみんなといる時間が楽しいです。メンバーのことを尊敬しているし、ANCHORさん、スタッフの皆さんも素晴らしくて。そういう人たちと楽しい空間や最高の作品を作っていって、その輪が少しずつ広がったらいいなと思ってます。9月14日のライブに向けてめっちゃ気合いが入っていて、まずはカッコいいスタートを切りたいですね。
いかさん めちゃくちゃ体力付けないと。
ヒューガー まだ1曲しか振付がないのに、「こうなったらいいな」っていろいろ想像しちゃうんですよ。
ムロ 私もめっちゃイメトレしてる(笑)。
ヒューガー ライブは9月だけど、その日まであっという間だろうな。たくさんの方に来てもらいたいです。
──期待しています! 最後に、名称非公開というグループ名はどうやって決めたんですか?
ムロ 準備段階での仮のプロジェクト名が名称非公開だったのですが、それがそのまま公式の名称になりました。
いかさん 別の候補があった気もするけど、どこかに行っちゃいましたね(笑)。
ムロ 前に名前の意味を聞きましたが、これは私たちが言うよりANCHORさんからいつか話してほしいと思っています。
──4人それぞれにキャリアがありますが、このグループでは今までとは違う何かを生み出そうとしている。そういう意味では、名称非公開という名前はぴったりですよね。
ヒューガー 確かに。「事勿れ主義イズダウト」にも「形なんてどうだっていいよ」という歌詞があって。
古森 “これ”って決めないってことですよね。いろんな形があっていいという。
いかさん うん。今って「自分は何者なのか」って定義する時代なのかなと思っていて。それは性別だったりLGBTQだったり、死生観だったりするんだけど、名称非公開という名前には「自分と向き合ってみようぜ」みたいなニュアンスもあるのかもしれない。
ヒューガー そうですね。それこそ最初のムロさんが言ってた……。
ムロ 否定も肯定もしない。
ヒューガー はい。だからこそ、自分もこのグループにいていいんだなって思えるのかもしれないですね。
公演情報
名称非公開 LIVE 2025 supported by GiGO
2025年9月14日(日)東京都 ヒューリックホール東京
プロフィール
名称非公開(メイショウヒコウカイ)
ムロ葉菜子(ex. BiS、ex. NARLOW)、古森もぐ、ヒューガー(ex. BiS)、いかさんによる4人組。楽曲提供およびプロデュースをANCHORが担当している。ムロを中心に2025年5月に結成され、同月にデビュー曲「事勿れ主義イズダウト」を配信リリース。同年9月に東京・ヒューリックホール東京にて初ワンマン「名称非公開 LIVE 2025 supported by GiGO」を開催する。