mei ehara|他者の存在から浮かび上がる感情

「Ampersands」に影響を与えた4つのモノ

文・写真 / mei ehara

ジェームス・アーマーの絵

レコーディング中、2019年の暮れに吉祥寺で開催されていたジェームスの個展。
私はそれまで存在も知らなかったけれど、ジャケットにジェームスの絵を使用したことを知った知人友人の中にはちらほらと彼のことを知っている人がいた。
私はとあるお茶屋の店主の紹介で開催を知って、レコーディング終わりに滑り込みで個展へ向かった。
ジェームスの絵は(本人にも伝えたけれど)、描かれている人物たちが、仲が良くも悪そうにも見える。
協力し合っているようにも、無関心で身勝手にも見える。自由であるようにも、強制されているようにも見える。
そういうどちらでもない社会的な雰囲気と鮮やかな色合いがなんとも面白く、今回のアルバムに合うような気がして、ジャケット制作をお願いした。

アニメ「ドラゴンボール」シリーズ

自宅の作業部屋に飾っている「ドラゴンボール」のセル画。

制作がのってくると、「ドラゴンボール」を必ず観てしまう(Netflixありがとう)。

殆ど「アアッ!」「……クッ!」「ヤアアアアアアア!」「◯◯ーッ!(キャラクター名)」しか言わない戦闘シーンがとにかく続く。
何度も観てきて内容も展開も台詞もだいたいはわかっているから、真面目に凝視している必要もない。
音楽に限らず、執筆やデザイン仕事をしている間も同じで、悟空たちの激しい闘いをBGMに作業をすると何故かとても集中できる。

柿の木

ぼやっとしてると、柿の木のことを考えたり頭にその姿を思い出したりしてしまう。
2019年3月から、猫二匹+恋人と今の家で暮らしている。その前に一人暮らししていた部屋は、ベランダから手の届く距離に柿の木が一本立っていた。あまり立派な柿の木ではなかったけれど、春夏秋冬の季節毎に変化する姿にとても生命力を感じていて、本当に愛着があった(遊びに来る友人たちにも好評だった)。
それまで柿の木などじっくりと観察したこともなければ、興味もなかったが、その部屋で暮らした数年間の間にすっかり柿の木の虜になってしまって、今の家へ越した時は、その柿の木との別れが悲しくて悲しくて寂しくて寂しくて仕方がなかった。柿の木がそばにいる生活が終わってしまったと。
ところが今、私の作業部屋、机のすぐ右の窓から外を眺めるとすぐ、大きな木が立っている。引っ越し当初は葉も落ち、裸同然だったために全く気付かなかったのだが、実はその大きな木は柿の木だった。これでもう、私の制作人生には、より一層柿の木が欠かせなくなったと思う。

トッド・ラングレン「TODD」

レコーディングで、「どんな音にしたい? 例えばこのアルバムの音が好きとかある?」とエンジニアさんに質問される。
アルバムを作り始めた時段階から、ゴールやお手本となるものが決まっていて、そこを目指して制作していれば共通言語になってやりやすいと思う。
けれど私はこれをなかなかうまく伝えられない……。音楽知識の乏しさもある。イメージを感情的な言葉や表現で伝えがちなのだ。
そこで私は、とにかく好きな音楽を一番良い(と思われる)状態で聴きたい。そうすることで理想を見付けたいと思い、好きなアルバムのオリジナル盤を購入することにした。
いくつか買ったのだが、中でもトッド・ラングレンの「TODD」。これは特別に感動した。CDでは何度も聴いていたけれどLPは所持しておらず、初めてアナログで聴くことになった。「『A Dream Goes On Forever』は、こんなにも奥行きがあって、宇宙を漂うような浮遊感と寂しいムードがあったのか~~!」などなど思い……。
そもそもオリジナル盤の良さなんてものはマニアックなもので、幻想かもしれないけれど、とても良い経験だった。勉強勉強。