豆柴の大群「まめジャー!」特集|「水曜日のダウンタウン」演出・藤井健太郎×渡辺淳之介インタビュー&ファーストサマーウイカ参加「らぶ地球」制作レポート

“一発屋”で終わらせない

──豆柴の大群は2019年の年末にクロちゃんがアドバイザーを解任され、WACK所属になることが発表されました。2020年1月にメンバーの名前が変わったタイミングではクロちゃんが好きそうな正統派から、いきなり中指を立てたアー写になり、大きな反響がありました。ちなみに新アー写発表の記事は音楽ナタリーの年間アクセスランキングの2位でした(参照:【今年のナタリー】2020年のニュースを振り返る)。

藤井 へえ。1位が福田明日香のヘアヌード写真集の記事なんだ(笑)。

渡辺 そこ勝ちたかったな!(笑)

──豆柴もかなりの反響でした。結成前に徐々に話題を集めていったという流れがあったとは言え、できたばかりのアイドルがここまで大きな注目を浴びたことは、WACKでは過去にないレベルだったと思います。

渡辺淳之介

渡辺 そうですね。「MONSTER HOUSE」「MONSTER IDOL」どちらにも言えるんですけど、回を追うごとにファンの熱狂具合が高まって、感情がエスカレートしていくのを感じました。人気も知名度も基本的に徐々にしか上がっていかないし、テレビではそれが凝縮されていましたね。もともとWAggにいたハナエモンスターは「MONSTER IDOL」企画に最初から出てたんですけど、初回オンエア後のTwitterフォロワー数は100人増えたくらいの微増で。オンエア4回目ぐらいまでで1000人ぐらいですかね。正直、「こんなテレビ出てるのにダメなんだ」と思ってたんですけど、豆柴の大群のメンバーに決まった瞬間、10万人くらい一気に増えたんです。徐々に火が点いて、結果が伴ったときに爆発した。

──「水曜日のダウンタウン」の影響力はすさまじかったですね。

渡辺 オーディションが始まった瞬間からすごいことになるとは思ってましたけど、正直ビビりましたよ。本当に驚いたのは、「りスタート」(2019年12月発売、クロちゃんのプロデューサーとしての進退が“続行ver.”、“解任ver.”、“解任&罰ver.”の3形態の売上枚数により決められた)がタワーレコード限定で発売されたときです。発売日にタワレコの渋谷店にずっといたんですけど、制服着た女の子、若いお兄ちゃんから、おじさんまで知らない顔の人たちが続々とCDを買っていくんですよ。WACKってマイノリティなコミュニティなんで、それまでは知ってる顔のやつらがCDを買ってく感じだったので。その「りスタート」が売れていく光景を見てテレビの影響力を感じました。トータルで7万枚ぐらい売ったんですけど、デビューしてからあんなに売れたのはWACK史上最速だったのですごいと思う反面、「本当に失敗できないな」とも思いました。テレビで人気のときに盛り上がっても、オンエア後に“一発屋”と言われる定石がありますよね。だからどうやって伸ばしていけばいいんだろうかと、去年の1月時点では不安がありました。改名して新しいアー写出したら「豆柴に求めていたのはこんなんじゃない」ってたくさん言われるし、どうしようかなと(笑)。

──豆柴の大群としてスタートを切ったあと、2月には予想外の炎上などもありましたし。

渡辺 あ、飲酒ネタ(笑)。あの頃は未成年飲酒ネタと僕のパワハラ動画がすげえ出回ったんですよ(笑)。

藤井 はははは(笑)。

渡辺 もう僕たちのことを陥れたくてしょうがない人が、狙いすましたかの如く炎上ネタを投下してきて、「ああ、恨まれてるんだなあ」と思いました(笑)。

──そんな中、5月には「FLASH」という曲で飲酒ネタをテーマにしたミュージックビデオを公開しました。このようなアイデアはWACKならではという感じがしました。

藤井 「FLASH」はすごくよかったですよね。あのMVも曲も。飲酒ネタが出たタイミングですでになんかやろうとはしてましたよね?

渡辺 そうですね。なぜかMVを出したあと、改めて週刊誌の「FLASH」さんからインタビューを受けるという展開もありました。

──藤井さんが豆柴の大群の1年を見て感じたことは?

藤井 ライブがあまりできてなかったからまだ未知数な部分もありますけど、これまでのWACKとは違うカラーになったのはよかったですよね。BiSHと同じようなグループが増えても面白くないし、“豆柴の色”みたいなものは出せてるし。あと一発屋云々の話で言えば、「よく持ちこたえているな」と(笑)。

渡辺 はははは(笑)。

藤井健太郎

藤井 他人事っぽい言い方ですけど(笑)。2019年の年末をピークに消滅せずに1年でレコ大の新人賞を獲れるところまで来たので。まだまだ上はあるのでもっとがんばらないといけないでしょうけど。

渡辺 結成して、これからってときにコロナ禍の状況になってしまって、彼女たち的にも「なんでだよ!」という感じですしね。でも逆に言うと、結成時の興奮状態から腰を落ち着けて活動できたとも捉えています。もし浮ついたままだったら、ダメになっていたような気もしますし。最初に予定していたデビューワンマンライブは中止になりましたけどチケットは即完していて、あのままだったら天狗になってたかもしれない。でも現状の彼女たちはそうじゃなくて「ライブができない、どうしたらいいんだ! なんとかしてやりたい」という気持ちがちゃんとあるので、地に足着けて活動できたという意味ではすごくよかったです。

ファーストサマーウイカとの邂逅

──1月には豆柴の大群のメジャー1stアルバム「まめジャー!」がリリースされました。

渡辺 今回のアルバムはメジャーデビュー以降の集大成みたいな部分もあって、バラエティに富んでます。メンバー作詞の曲も多くて、「DADDY」(ミユキエンジェル作詞)のようにストーリー性を感じられる楽曲もあるので、いろんな人に楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。

──アルバムには「水曜日のダウンタウン」でのクロちゃんのダイエット企画と連動した楽曲がスマプラで追加収録されるということですが。

「水曜日のダウンタウン」特別企画
「豆柴の大群“フィーチャリングゲスト”ランクアップチャレンジ」

クロちゃんが1カ月ダイエットを行い、減量した体重によってゲストが大物になっていく企画。

-1kg
熊切あさ美
-2kg
菊地亜美
-3kg
西村歩乃果(ラストアイドル)
-4kg
坂元葉月(わーすた)
-5kg
藍染カレン(ZOC)
-6kg
最上もが
-7kg
有安杏果
-8kg
ファーストサマーウイカ
-9kg
松井珠理奈(SKE48)
-10kg
生駒里奈

藤井 企画自体はもちろん僕ら番組チームのほうで考えたんですが、結果すごくいいラインナップですよね。

渡辺 びっくりするくらいのラインナップですよね(笑)。クロちゃんの減量数に応じてランクアップと言いつつ、むしろこの順番でいいの?と思うくらい豪華なゲストで。

──クロちゃんは1カ月のダイエット中に失恋もしつつ、最終的に8kgの減量に成功。その結果、ファーストサマーウイカさんと豆柴がコラボすることになりました。1期BiS、BILLIE IDLEでの活動経験もあるウイカさんに決まったというのは何か不思議な縁を感じますね。

渡辺 そうですね。僕のサラリーマン時代、最初にマネージメントをしたグループにいた子がファーストサマーウイカですし、こういう形で一緒になるとは思わなかったのでうれしいです。僕がマネージメントをした子たちの中だと彼女が一番幅広く活躍していて、成功していますよね。クロちゃんのダイエット企画のキャスティングには僕も携わっていたので、ウイカに電話で協力してほしいと伝えたんですよ。ウイカは藤井さんのことを大好きだし、「水曜日のダウンタウン」に以前から出ていることもあって、「絶対やりたいです」って前のめりで言ってくれました。僕としても「ちゃんと相手してくれてよかったな」と。電話に出てくれないかもってちょっと思いましたから(笑)。

藤井 元所属の売れた子にもちゃんと相手してもらえる立場になったと(笑)。

渡辺 もし僕がウイカの立場だったら、昔BiSで活動してたことを隠しますけどね(笑)。でも彼女は包み隠さずに話してくれるし、古い関係とかもすごく大事にしてくれました。ちょうど彼女もソロシングル(2月22日に配信されるメジャーデビューシングル「カメレオン」)を出しますし、BILLIE IDLEの解散後もずっと歌をやりたかったみたいなんですよね。

地球の未来は明るい

──「らぶ地球」はどういう内容の曲になるんですか?

渡辺 楽曲はクロちゃん作詞で、クロちゃん曰く「地球を明るくしたい」というテーマがあって。パンチの効いたすごくいい歌詞になってます。クロちゃんはコロナ禍の状況でみんなを元気にしたいという気持ちを歌に込めたと言っていて、曲調も非常に明るい感じです。かなり大きなテーマの曲なんですけど、モーニング娘。が「♪日本の未来は」と歌っていましたし、今は地球の未来を歌ったほうがいいんじゃないなというのは、僕も思ってるところです。

藤井 やっぱりクロちゃんの歌詞は面白いなって思うものも多いですね。あとメンバーの歌声も個性がしっかりあっていい感じだなあと。

左から藤井健太郎、渡辺淳之介。

──では最後に豆柴の大群にメッセージをお願いします。

藤井 本人たちの手応え的にはどうなんですかね? やれてる実感と物足りない感じと半々ぐらいでしょうか。

渡辺 そうですね。たぶんやれてる部分に感謝しているのと、「あれ? もっと売れてたよね」っていうのと(笑)。

藤井 Twitterのフォロワーがじんわり減ってますもんね(笑)。

渡辺 減ってますね(笑)。でも減り方は少ないと思いますけどね。

藤井 言い方が難しいですけど、きっとマシなほうですよね。きっかけは作ってあげられたけど、そこから先は自分たちの勝負ですし。いろんな人の手は借りながらですけど、やっぱり「よく堪えたな」という印象もあるので、そういう意味では及第点な気がします。これからもっともっと売れてもらって、「水曜日のダウンタウン」発だってことも忘れられるぐらい、ちゃんと“普通のアーティスト”になるといいですね。入り口はちょっと特殊な感じでしたけど、こういう世界に飛び込んだ以上はいい思いして、お金もしっかりもらってチヤホヤされてほしいので、がんばってもらいたいですね。