NAKAKI PANTZインタビュー|気鋭のイラストレーターが描くMAISONdesの“顔” (2/2)

高橋留美子先生に一発でOKをもらいたい!

──ここからは、3月15日に発売されたMAISONdesのミニアルバム「ノイジールーム」についてお伺いできればと思います。NAKAKIさんにとって、この作品はどんな1枚になりましたか?

「とりあえず1回聴いてみて!」と言いたくなるような、耳に残る曲ばかりで。歌い手さんとボカロPさんの才能がぶつかり合って、化学反応が起きている作品だと思います。アートワークに関してはデザイナーさんが私の絵柄と、MAISONdesの世界観と、「うる星やつら」のキュートな空気感を1つに落とし込んでくれて。MAISONdesは、私にいつも夢みたいな世界を見せてくれるなあという印象です。

──本作には完全生産限定盤と期間生産限定盤の2形態があります。ジャケットイラストはどのように描き進めていったのでしょうか?

CDショップで見かけときに手に取ってみたくなるような絵にしないと、と思いながらデザインしました。あたるくん(「うる星やつら」の主人公)の部屋をイメージしてほしいという依頼をいただいたので、私が以前から描いてみたかった箱庭のような四角いお部屋をモチーフに、華やかだけど、収まりがよく、というイメージで描いています。いつもは女の子を描くことが多いので、あたるくんを描くのはけっこう難しかったけど、最終的にはちゃんと自分のタッチで描けてホッとしました。「うる星やつら」関連のイラストは、すべて高橋留美子先生に監修してもらっているので、「高橋先生に一発でOKをもらいたい!」という気持ちで描きましたね。

──高橋先生の監修があったんですね。

直接お話しはしていないんですけど、イラストに赤を入れてもらう形でやりとりをしました。その中で、高橋先生のラムちゃん(「うる星やつら」のヒロイン)に対するこだわりが見えて。例えば、ツノの角度やサイズ感、もみあげの長さ、胸の露出度まで、細かい指定がありました。高橋先生はきっとスッと描けちゃうと思うんですけど、別の人が描いたラムちゃんを見ると、どこが違うのかやっぱりすぐわかるんだなと。ご指摘の通りに修正していくと、ちゃんと高橋先生のラムちゃんっぽくなりました。

MAISONdes「ノイジールーム」(完全生産限定盤)ジャケット

MAISONdes「ノイジールーム」(完全生産限定盤)ジャケット

──期間生産限定盤のジャケットはいかがですか?

こっちはとにかくポップなお部屋にしたくて。これまでMAISONdesでは明るめのお部屋を描いたことがなかったので、“令和ギャル部屋”みたいなイメージで色合いを意識的に変えています。「うる星やつら」が連載されていた「週刊少年サンデー」から連想して「Sunday」と書かれた雑誌を置いたり、「アイウエ / トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」のCDアートワークにも登場させたクッションをもう1度描いてみたり。小物に注目して見てほしいです。

MAISONdes「ノイジールーム」(期間生産限定盤)ジャケット

MAISONdes「ノイジールーム」(期間生産限定盤)ジャケット

流行とアップデート

──イラストを制作するうえで、いわゆる“令和感”は重要になってきますか?

そうですね。絵描きとして、ミーハーでいることってすごく大事だと思うんですよね。流行をキャッチして、技術や絵柄をアップデートしていかないと、いずれ誰にも見てもらえなくなってしまうと思うので。

──時代に取り残されてしまいますね。

例えば「ちゃお」「りぼん」「なかよし」のような商業誌って、いつも読者の年齢層が一定じゃないですか。だからずっと“今”の小学生にウケる絵柄を探り続けている。私は、アーティストと商業イラストレーターの中間でいたくて。そのためには、今流行っているものを自分なりに解釈して、日々アウトプットする必要があるんです。

──長く活動していくために、大切なことだと思います。

今の段階ではまだ、誰かの思い出にはなりたくなくて。できる限り、旬でいる努力をしています。「あのイラストレーター、そういえば流行ってたなあ」と思われないように(笑)。

──現代はTikTokなどのプラットフォームでカルチャーが短期消費されていく時代ですが、そういったSNSにおけるカルチャーの広まり方について、NAKAKIさんはどう思われますか?

めっちゃ難しいんですけど、TikTokがある以上、そういう消費のされ方になるのは仕方ないと捉えています。たぶんMAISONdesの管理人さんは「ちょっと覗かん? 1曲聴かん?」くらいの軽い感覚でいる気がして。そこを入り口にして、新しいアーティストさんのことを知れるのはいいことだなと思います。令和に使う言葉じゃないけど、“ナウい”やり方だなと(笑)。

──NAKAKIさんが今後、MAISONdesとタッグを組んでやってみたいことなどはありますか?

MAISONdes縛りの展示会をやってみたいですね。場内にMAISONdesの曲を流して、アートワークやラフ画を展示したり、MVに登場する女の子の衣装を飾ったり。そういうワクワクすることをたくさんしていきたいなあ。

プロフィール

MAISONdes(メゾン・デ)

「架空の六畳半アパート」を標榜する音楽プロジェクト。過去にはyama、ニト。、asmi、すりぃ、Aimer、和ぬか、空音、meiyo、花譜、ツミキ、美波、SAKURAmoti、安本彩花(私立恵比寿中学)らをフィーチャリングゲストとして迎えた楽曲をリリースしている。「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」はTikTokで楽曲ランキング4週連続1位、2021年音楽ランキングで3部門1位を獲得。TikTokの総使用投稿数は220万超え、総再生回数は27億回を超えている。2023年3月15日に1stミニアルバム「ノイジールーム」をリリースした。

NAKAKI PANTZ(ナカキパンツ)

福岡県出身のイラストレーター。2019年に地元・福岡で初の個展を開催し、本格的に活動をスタート。強く、かわいく、自分らしい女性のイラストレーションが話題を集め、多くのファッションブランド、広告ビジュアル、MVデザインなどのクリエイティブを手がける。2022年10月に初の作品集「CHERISH」を発売。