ナタリー PowerPush - 舞花
10代のひりひりした感情を赤裸々に歌う2ndシングル&1stアルバム完成
衝動のまま、湧き上がってくる感情を封じ込めた。そんな舞花の2ndシングル「教えてよ ~miseducation~」は、包み隠さない心の叫びと、それを力強く表現したボーカルが圧巻のナンバーだ。学校教育への不満を始めとするエッジの効いた言葉たちには、彼女と同世代のリスナーの多くが共感するのではないかと思う。
本作のリリース翌週には、早くも1stアルバム「Possible」を発売。10代ならではのみずみずしい感性と、すでに完成された感のあるソウルフルな歌声。このインタビューでは、今後が楽しみでならない新世代の才能に、さまざまな角度から迫ってみた。
取材・文/川倉由起子
中1で買ってもらったギターはしばらく放置してた
──アーティスト写真を見てから実際の舞花さんにお会いすると、ギャップに少し驚きますね。もちろんいい意味で、ですが。
あははは(笑)。よく言われます。でも逆に私を知ってる人に言わせると、この写真のほうがビックリするみたいで。普段はこんなカッチリした格好もしないですし、もっぱらTシャツにジーンズなので。
──あぁ、今日もそんな感じですもんね。すごく自然体で。
はい。でも、写真ではアーティストとしての“強い意志”を感じていただきくて。アーティスト写真やジャケット写真など、毎回アートワークにもこだわりを持って作らせてもらってるんです。
──なるほど。では早速ですが、今回はナタリー初登場ということで、舞花さんが音楽を始めたきっかけからお伺いしたいと思います。最初に手にした楽器はギターだったと聞きましたが?
そうなんです。中学1年生のときに親から買ってもらったんですが、すごく難しくてそこから1年くらい放置しちゃって(笑)。その後、中2になって久々に弾いてみたら、なんとなく去年よりはラクに押さえられるなって思って。友達にもギターを習いたいという子がいたので、一緒に近くのギタースクールへ通い始めたんです。
──ちなみに、当時はどんな音楽が好きだったんですか?
アヴリル・ラヴィーンですね。「Let Go」というアルバムが大ヒットしていた時期で、弾き語りでカバーしてました。で、高校生になったら、そんなカバー曲とオリジナルの自作曲を2~3曲だけ用意して、路上ライブを始めて。地元・熊本のアーケード街で、シャッターの閉まったお店の前で歌ってました。
──家でひとりで歌うのではなく、やっぱり誰かに聴いてほしいという気持ちがあった?
そうですね。路上だと人に聴かせるという緊張感もあるし、ちゃんと歌おうって思うことで、より上達するというか。声も思いっ切り張れるので、毎回ワクワクしながらやってましたね。
共作者である母親とは“友達親子”
──舞花さんがデビューのきっかけをつかんだのは、高校2年で出場したヤマハ主催のコンテスト「The 1st Music Revolution」。このときは、オリジナル曲で参加したんですか?
はい。どうせ出るならオリジナルで勝負したほうがいいよねって話をしてて。
──それは誰と?
お母さんです。母は私の音楽活動をずっと応援してくれてて……というか、今は楽曲制作の大切な共作者でもあるんですよ。楽曲のクレジットは“舞花&YUMI”と表記しているんですが、このYUMIというのが、実は母なんです。過去に音楽経験があるわけではない普通の主婦なんですが、私が音楽を始めてから一緒に曲を作ったりするようになったんです。
──それはすごいですね。今でも、お母さんと一緒に楽しんで制作してるんですか?
まさにそうですね。母はいつも私のやりたいことに賛成してくれるばかりか、むしろ引っ張ってくれてる感じ。普段から本当に仲が良くて、周りからは「友達みたいな親子だね」ってよく言われます(笑)。
──素敵な関係ですね! 実際の楽曲制作は、どんな感じで進めるんですか?
歌詞に関しては、昔は「こういうことを言いたいなら、もっと伝わる言い回しがあるんじゃない?」なんて、客観的な目線からアドバイスしてくれてましたね。最近は母が何か言うことはあまりなくなりましたけど。同じようにメロディについても「もっと雰囲気をガラッと変えたほうがいいんじゃない?」とか。最近だと、たまに母が先に曲を持ってくる場合もあります。いずれにしろ2人でいろいろ意見を出し合って、一緒に作り上げていくという感じです。
人生は、ディズニーのようにハッピーエンドなもの
──2ndシングル「教えてよ ~miseducation~」は、4月のデビューシングル「never cry」から約2カ月ぶりのリリースとなります。この間に、メジャーデビューしたことで何か変化はありましたか?
まずは、いろいろな場所で曲を流していただいたり、多くの人がCDを購入してくれたりして、スタートとしては本当にありがたかったなと。自分だったら、新人アーティストの、しかもデビュー曲を買うなんて勇気がいると思うんですよ。だから、今回買ってくださった方には本当に感謝してます。
──ひとりの音楽リスナーとして客観的に考えると、そういう思いが込み上げてくると。
そうですね。私は“アーティストとしての誇り”みたいなものもちゃんと持ち続けていたいんですけど、それと同時に、純粋な音楽ファンとしての気持ちも忘れたくなくて。「音楽が好き」っていう純粋な気持ちは、私が音楽を続けていく上で一番のエネルギーになるから。これからも絶対失いたくない気持ちなんです。
──その「エネルギー」という言葉に関連するんですけど、舞花さんの楽曲を聴いていると、すごくエネルギッシュなものを感じるんです。ネガティブなことがあっても、それをポジティブに変えるパワーがあるというか。
私の中では、そこが芯になってる部分だからかな。すべてはいつかハッピーエンドになる、というか、基本、人生はハッピーなことだと思っているので。自分自身の根っこがポジティブだから、思ってることを書いたら自然とポジティブな詞になっちゃうだけなんですけどね(笑)。正直、結構傷付きやすいし、浮き沈みも激しいんですが、でも最終的にはわりとポジティブな方向に落ち着くことが多くて。あ、例えて言うならディズニーみたいな感じですかね。
──それは、どういうことでしょう?
ディズニーってどのお話でも、主人公がいろいろな紆余曲折を経て、最後にはポジティブで壮大なハッピーエンドを迎えますよね? なんとなく、人生もそんな感じなんじゃないかなって思ってて。だから、どんな状況でも、作品にはそのときどきのリアルな心境を閉じ込められたらいいなって思ってるんです。
舞花(まいか)
1990年生まれのシンガーソングライター。中学1年生の誕生日にプレゼントされたギターを武器に、高校1年生の頃から地元・熊本のアーケード街で路上ライブを始める。2007年、ヤマハ主催の音楽コンテスト「The 1st Music Revolution」に参加。九州エリアファイナルでグランプリを受賞し、続けて九州代表としてジャパンファイナルに出場した経験を持つ。
2009年3月、インディーズシングルとして「never cry」を九州地区限定で発売し、完売させる。その後2010年1月に「Never Never Never give up」をタワーレコード限定発売。4月に1stシングル「never cry」でメジャーデビューを果たした。