LiSA×八木海莉×三月のパンタシア×ASCA「魔法科高校の劣等生」第3シーズンを語り合う (3/4)

アニメ「魔法科高校の劣等生」第3シーズンの放送を記念した前後編の特集。LiSA、八木、みあ(三月のパンタシア)、ASCAの4人がお互いの楽曲についてじっくりと語り合う。前編ではLiSAのオープニング主題歌「Shouted Serenade」と、八木のエンディング主題歌「recall」をフィーチャーしたが、後編では三月のパンタシアの「スノーノワール」とASCAの「紫苑の花束を」という2曲のエンディング主題歌を中心にトークを繰り広げる。

【後編】主題歌に込めたメッセージ

楽曲からも物語の移り変わりを感じてほしい

──この座談会記事がアップされる頃にはアニメ「魔法科高校の劣等生」第3シーズンもそこそこ話数が進んでいるはずですが、見どころを挙げるとすれば?(※取材は4月上旬に実施)

LiSA 第3シーズンは「ダブルセブン編」「スティープルチェース編」「古都内乱編」に分かれているんですけど、こんなにもいろんな物語が1クールの中で展開していくことって、そうそうないと思うんです。

ASCA 怒涛の展開ですよね。1クールの間に舞台も変わっていくし、登場人物たちも人間的に成長していくし……それこそ海莉ちゃんが話してくれた七宝琢磨くんもね、心を入れ替えちゃったりして。

八木海莉 そうですそうです。七宝くんの今後にも期待です。あと、私はついこの間、第3シーズンの先行上映会を観に行ったんですけど、監督のジミー ストーンさんが「(司波)深雪は私服では同じ服を二度と着ないから、アニメを作っていると服がめちゃくちゃ増えて大変です」とおっしゃっていて。

一同 (笑)。

左からLiSA、八木海莉、みあ(三月のパンタシア)、ASCA。

左からLiSA、八木海莉、みあ(三月のパンタシア)、ASCA。

八木 服のパターンにA、B、C、D……とアルファベットを振っていったら、Zまで行ってしまって2周目に入ったというお話だったので、すごいこだわりだなと。

LiSA そういうこだわりも大事だよね。深雪の服もそうだし、3つの物語が続いていく時間の流れの描き方とか、ディテールにも私は注目しています。

みあ その3つの物語の中で、各編の主人公と言えるいろんなキャラクターが登場するから、きっと誰かに共感できるはず。そういう意味では、「誰に一番共感できたか」「誰が自分に一番近かったか」みたいな話を友達とかとしても楽しいと思うし、みんなで観て盛り上がってほしいです。

ASCA 第3シーズンは、それぞれに濃い3編をギュギュッと凝縮してお届けすることになるので、たぶん、あっという間にどんどん場面が切り替わって、季節も移ろっていく。だから原作小説をご存知の方もまた違った楽しみ方ができるだろうし、3曲あるエンディング主題歌の1つを担当させてもらった身からすれば、楽曲からも今言った移り変わりを感じ取ってもらえたらうれしいです。

どうしても深雪に感情移入してしまうんです

──「スティープルチェース編」のエンディング主題歌は、三月のパンタシアの「スノーノワール」ですね。作詞はみあさんとくぅ(NEE)さん、作編曲はくぅさんです。

みあ 三月のパンタシアは楽曲のテーマごとにいろんなクリエイターの方とコラボをしていて。今回は深雪の、(司波)達也への思いが強すぎるがゆえに歪んでいく感情を描いてほしいという、明確なテーマをいただきました。ただ、歪んだ感情とはいえ根底にあるのは愛情だから、自分の恋が叶わないこともわかっている切なさもはらんでいる。そういったダークな熱情を表現するならどなたとご一緒するのがいいかと考えたときに、私が大好きなNEEというバンドが浮かんで。NEEの曲はロックなバンドサウンドでありつつボカロみたいな音色も感じるし、J-POP的なメジャー感もあればプログレ感もあるみたいな、いろんな要素のごった煮で情報量が多いんですけど、歌とメロディがすごく耳に残るんです。一緒に「魔法科」の楽曲を作れたらきっと面白いことになるだろうと、私から三パシチームに「NEEとやりたいです」と提案しました。

──実際、面白いことになりましたね。三パシがこういうファンクっぽい曲を歌うのも新鮮です。

みあ 歌詞もくぅくんと共作させてもらって、すごく面白かったのが、くぅくんは深雪が言わないような言葉も歌詞に入れてくるんです(笑)。個人的には歌ってみたさもあったんですけど、作品に寄りそう意味で、深雪らしい言葉に私が置き換えたり、いろんなやりとりを重ねながら作っていきました。

ASCA 私は「これはみあちゃんしかできないな!」と思った歌い方があって。それは、サビの「迷わずに支えるよ」のところで……。

みあ あ、けっこうハイトーンのところ。

ASCA めっちゃかわいくないですか?

みあ いや、そこはかわいくならないように意識していて……。

ASCA 意識してたんですか!? ヤバい、それなのに「かわいくないですか?」って言っちゃった。

みあ 私の歌はハイトーンになればなるほど、声の性質もあって聞こえ方がかわいくなってしまうところがあって。でも「スノーノワール」はちょっとダークな、歪んだ熱情を歌っている曲だから、あんまりかわいくならないように、なるべくクールに歌うように意識はしていたんだけど……かわいかった?

ASCA かわいかった。

一同 (笑)。

ASCA それがすごくいいスパイスになっているというか。全体的に意識されたクールさ、ダークさが漂う中で、「迷わずに支えるよ」だけはみあちゃんの持っているかわいさがにじみ出ちゃってる感じ。それが、深雪を連想させもするんですよ。「深雪、乙女やなあ」みたいな。

みあ 歌われている感情としては一途な乙女心という側面も確かにあるから、よかったのかな?

ASCA よかったんです。歌としても、表情豊かでドラマチックなものになっているんじゃないかな。

みあ よかった。ありがとね。

司波深雪

司波深雪

──みあさんは、深雪が主人公のスピンオフアニメ「魔法科高校の優等生」のオープニング主題歌「101」でも深雪のことを歌っているので、もはや深雪のスペシャリストといいますか。

みあ 「魔法科」にはSF的な面白さや魔法を使ったバトルシーンの見応えもあるし、見どころがたくさんなんですけど、私はどうしても深雪に感情移入してしまうんです。彼女の、達也のことが大好きだけれど、どこまで踏み込んでいいのかわからなくて戸惑う気持ちとかに。というのも、三月のパンタシア自体が青春時代の淡くて切ない、ときに痛みを伴う感情を歌っていて。私自身も片思いだったり叶わぬ恋だったり、お互いに慕い合っているのに引き裂かれてしまう運命みたいなものに、ものすごく惹かれる性癖を持っているんですよ!

みあ(三月のパンタシア)

みあ(三月のパンタシア)

ASCA 熱量がすごい(笑)。

みあ お互いがお互いにとって大切な存在であるにもかかわらず、どこかで一線を引かなきゃいけない。そういう関係性に魅せられてしまうんです。でも、それって程度の差こそあれ多くの人が抱いたことのある感情なのかなとも思っていて。例えばすごく仲がいい、大好きな相手がいたとして、その人に自分の「好き」という気持ちを伝えたいけれど、伝えたら関係が破綻してしまうかもしれない。だから、切ないけど、そばにいられればいいみたいな。深雪も、今まではお兄様のそばにいられるだけで幸せを感じていたと思うんですよ。だけど、私がエンディングを担当させてもらった「スティープルチェース編」では、その気持ちが爆発しちゃうところもあって。個人的には、そんな深雪の感情の移ろいに注目しながら楽しんでおります。

初恋の痛みと大切な人を失った痛み、両方に寄り添いたい

──そして「古都内乱編」のエンディング主題歌が、ASCAさんの「紫苑の花束を」です。作詞はASCAさんとminami rumiさん、作編曲は篤志さんですね。

LiSA この曲のASCAは本当に、今までのASCAとはガラッと変わっていて。

ASCA ありがとうございます。挑戦しました。

LiSA 何を変えたの? 声の弱さとか強さみたいなところじゃないと思ったから、何が違うんだろうかと気になってたの。

ASCA まず、声の出し方から変えました。今までの発声だと、このサウンドに合わなかったんですよ。「古都内乱編」ではとあるキャラクターの初恋が描かれているので、作品サイドからは「初恋」というテーマをいただいていたんですね。ただ、一方で「古都内乱編」には悲しい別れを迎えてしまう局面もあって。初めて恋心を抱いた相手の言動に一喜一憂しちゃうみたいな初恋特有の痛みと、大切な人を失ってしまった痛み、両方の痛みに寄り添いたいと思って「紫苑の花束を」を作ったんです。なので、まだ悲しみに浸っている状態という前提でいろんな発声を試した結果、たどり着いたのがこの歌い方で。

LiSA うんうん。

ASCA 今まで私は、特にサビでは声を張って歌うことが多かったんですよ。パワーで押し切るみたいな感じで。でも今回は基本、サビはロングトーンも含めてファルセットで歌っていて。初挑戦ではありますけど、これで通用するのか不安です。

一同 (笑)。

ASCA 不安もありつつ、私は「Howling」(「魔法科高校の劣等生 来訪者編」オープニング主題歌)という楽曲で「魔法科」に関わらせてもらってたくさんの出会いをいただきましたし、「Howling」があったから海外で歌う機会がすごく増えまして。「魔法科」という作品を背負って、世界中で楽曲をお届けすることができたんです。その経験からサウンドに対する考え方も変わってきて、海外の方が初めて聴いても楽しめる楽曲を作っていこうという流れが今あるんです。「紫苑の花束を」もそういう流れの中でトライした楽曲ですね。

ASCA

ASCA

──近年のASCAさんはダンスミュージックにも力を入れていますが、「紫苑の花束を」もトラックはハウスですね。

ASCA ミックスしていただいたエンジニアさんも、わかりやすく言うとグラミー賞にノミネートされるような楽曲のサウンド感を普段から追求されてる方なので、音作りもまったく新しくなっていて。この曲も海外に向けてどんどん発信していきたいです。

LiSA ASCAはもともとこういう音楽を聴くの?

ASCA 聴きます。

LiSA それを自分もやろうって思ってできるのがすごいよね。

ASCA できてますか?

LiSA うん。ASCAはいろんな歌い方できるけど「このチャンネルあるんや!?」と驚いて。

ASCA 聴いてくださった方をびっくりさせたいという思いもあったので、すごくうれしいです。

2024年6月7日更新