「マジカルミライ 2025」特集 *Lunaインタビュー|夏の夜空に響かせる「輝いて」のメッセージ (2/2)

初音ミクには“王道”が似合う

──「ラストラス」のアプローチで1つ気になったのが、曲中に鼓動のような音が入るところでした。なぜこのようなアプローチを?

何か明確な意図や狙いがあるわけではなくて、この曲が展開するうえでの起承転結の“転”の部分、2番のサビに行かずにギターソロに入るタイミングで期待感を高める音を何か足したかったんです。曲がラストスパートに向かう前のドキドキ感に拍車をかけたくて、こういうアプローチにしてみました。

「ラストラス」MV

──これまでのテーマソングのインタビューでは、初音ミクとクリエイターの距離感みたいなことを語る方も多くて。例えば、自分の声をコーラスとして初音ミクに重ねる、といったアプローチは何度かあったので、*Lunaさんも何か意図があったのかなと。

特に自分自身と初音ミクを重ねる、みたいな意識はあまりなくて。初音ミクは歌声合成ソフトなので、生きてはいない。だから人間ではないし、心臓もないはずだけど、だからこそこういう音を入れたらどうなるか、みたいな思いはありました。距離感としては、*Lunaは今までも、楽曲にまつわるすべてを初音ミクでパッケージして曲を作っているわけではなくて、*Lunaとしての表現を初音ミクにサポート してもらっているような感覚に近いかもしれませんね。

──普段のボカロとの接し方についても質問させてください。近年*Lunaさんが発表している楽曲は生身のボーカリストを起用したものと、初音ミクを使用したものの2パターンがあります。表現において何か棲み分けのようなものはありますか?

まずはどちらが歌うか考えずに曲を作ってみて、人間が歌えそうにない曲をボカロに歌ってもらう、ということが多いかもしれないですね。もちろん、歌えるかどうかの判断だけじゃなくて、「この曲はボカロのほうが合うな」と思ったらボカロに歌ってもらいますし。ボーカリストの方々にそれぞれ個性があるように、ボカロにも個性があるので、曲が整ったら複数のボーカロイドで出力して、どの子の声が曲に合いそうか聴き比べて……ということをやっていて、曲をもとに最も合うボーカルを人間とボカロ分け隔てなく考えているような気がします。

「ラストラス」MV

──いろんなボーカリストの方やボカロに歌ってもらう中で、初音ミクというボカロの特徴はどこにあると感じていますか?

最も聴き慣れているボーカロイドだからかもしれませんが、変な癖が付いていない“王道”というイメージがありますね。“王道”というのは人によって感じるものが違うかもしれませんが、例えば「ラストラス」みたいな曲調はもちろん初音ミクに合った曲だと思います。

初音ミクは“つながり”を作る

──YouTubeで「ラストラス」のミュージックビデオが公開されていますが、動画制作はどのように?

MVに関しては、いつもの*Lunaのものとは違って、クリプトンさん主導で進行していたので基本的にはお任せでした。いつもの*Lunaの作品だったら、アウトプットされるときは1つの作品として世に出す感覚ですが、今回は音楽クリエイター班と映像クリエイター班に分かれていたイメージです。

──動画にはすでに数多くのコメントが付いていますが、ファンの反応を見て何を感じていますか?

MVが公開された直後に死ぬほどエゴサをして、皆さんの反応をチェックしてみたところ、あまり叩かれていないようでひと安心しました(笑)。

──なぜ心配になったのでしょうか?

テーマが1つ与えられて、あとは「好きなように作ってください」というオーダーだったので、もしボカロファンの方々が喜んでくれなかったときの責任は完全に自分にあるのではないか、と考えてしまって。あくまで自分の好きなものを作れば大丈夫なはず、という思いはありつつ、皆さんに楽しんでもらえるかどうかは、聴いてもらわなければわからないですから。

「ラストラス」MV

──「マジカルミライ」のイベントで披露される際に、楽しみにしていることはなんですか?

照明の演出がすごく楽しみですね。去年のライブで「ノヴァ」を演奏してもらったときのライティングがめちゃくちゃよくて。広い会場の天井に星空を広げたような演出が忘れられないので、今年の「星河一天」というテーマでどんな景色を見せてくれるのか、今からすごく楽しみにしています。それと、コール&レスポンスのパートでどう盛り上がってくれるかも気になります。

──どうコールを打とうかと、SNSで相談している方もいますね。

そうなんです。あまり考えていませんでしたが、皆さん「輝いて」を「輝いて」としてコールするか、「かが」を省いて「やいて」と歌うかでけっこう意見が二分していて。どうやって楽しむかは自由なので、皆さん好きなように歌ってもらって全然問題ないのですが、作り手としては「輝いて」と全部歌ってもらいたいと考えて作っていました。初音ミクから「輝いて」という言葉を受け取ると同時に、その場いる全員が「輝いて」とお互いにエールを送りあう、そんな素敵な空間を想像しています。もちろん、このインタビューを読んだからと言って強要するわけではないので、好きに歌っていただければ大丈夫です。

「ラストラス」MV

──最後に、毎年「マジカルミライ」のテーマ曲を担当した方に聞いている恒例の質問をさせてください。*Lunaさんにとって初音ミクはどういう存在ですか?

人生において、いろんなきっかけをもらった存在ですね。インターネットで自分の曲を発信するとなったら、歌わせる人がいないと成り立たない。そのハードルを越えやすくしてくれたのは間違いなく歌声合成ソフトであり、初音ミクだと思います。個人的にはインターネットにおける音楽文化が少し落ち着いてしまった時期があったように感じていて、それを乗り越えて今のように再び盛り上がるようになったのは、いろんな方の積み重ねや成長があったからだと思うんです。例えばネットの音楽を聴いて青春を過ごした人たちの中には、社会人になり、こういうカルチャーを作る側になった方もたくさんいるでしょうし。初音ミクという存在が、*Lunaの活動を含めていろんな人と人をつなげるものになってくれたことには本当に感謝しかないですね。

「ラストラス」MV

公演情報

初音ミク「マジカルミライ 2025」

  • SENDAI会場
    2025年8月1日(金)~3日(日)宮城県 仙台サンプラザ、仙台駅周辺
  • OSAKA会場
    2025年8月9日(土)~11日(月・祝)大阪府 インテックス大阪 3号館・4号館・5号館A
  • TOKYO会場
    2025年8月29日(金)~31日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール

イベント公式サイト

プロフィール

*Luna(ルナ)

2012年に音楽活動をスタートさせる。初音ミクをはじめとするボーカロイドを使ったオリジナル楽曲を多数発表しながら、星街すいせい、健屋花那、NornisといったVtuberや天月-あまつき-、あらきといった歌い手への楽曲提供もしている。2025年4月に初のワンマンライブ「夏のプラネタリウム」を開催。同年8月に開催される「初音ミク『マジカルミライ 2025』」のテーマソングとして「ラストラス」を提供した。