音楽ナタリー Power Push - 町あかり

あのコは自然派、歌謡乙女

テレビ朝日系「musicるTV」に出演したり昨年7月に実施された電気グルーヴのワンマンライブのオープニングアクトに抜擢されたりと、インディーズでの活動ながら多くの話題を集めてきた町あかり。昭和歌謡を彷彿とさせる歌声や衣装で老若男女問わずファンを増やし続ける彼女が、ビクターエンタテインメントよりメジャーデビューを果たした。音楽ナタリーでは6月24日にデビューアルバム「ア、町あかり」が発売されることを記念しインタビューを実施。歌謡曲を知ったきっかけや楽曲制作の裏側、シンガーソングライターとして活動を続ける理由などたっぷりと語ってもらった。

取材 / 臼杵成晃 文 / 高橋拓也 撮影 / 上山陽介

音楽への芽生え

──町さんの音楽は昭和歌謡ファンの琴線を刺激する不思議な懐かしさがありますけど、町さん自身はディープに歌謡曲を掘り下げるマニアでは……。

町あかり

ないんです。全然。

──どういう過程を経てこの音楽にたどり着いたのか、詳しく聞かせてください。子供の頃は活発なタイプでしたか? それとも大人しいほう?

大人しい子ではあったと思うんですけど、スポーツは好きでしたね。ほんとに普通の子で(笑)。でも絵を描いたり、自分で絵本を作ったりしてました。オリジナルのキャラクターを考えて、それでお話を作るのがすごい好きで。

──絵本やお話は誰かに見せたりしていましたか?

学校に持っていって同級生に作ったものを見せたりはしてたんですけど、周りがマネしてくるから対抗してまた違うのを作る、みたいなことをずっとやってました(笑)。

──あはは(笑)。学校のみんなとはうまくやれてました?

やってましたよ! そこは大丈夫です(笑)。

──当時学校で流行っている音楽というと……。

小学生の頃はモーニング娘。さんが流行ってる時期だったんですけど、私はまだ音楽自体に興味がなくて。

──中学生のときにサザンオールスターズを聴いたことが音楽に興味を抱くきっかけなんですよね。

町あかり

はい。たまたまテレビ番組で「君こそスターだ」(2004年7月発売のシングル)を歌ってるのを観て。

──初期のサザンではなく。

リアルタイムで活動しているサザンを観て。なぜか突然「聴いてみよう」と思って、「さくら」(1998年10月発売のアルバム)とかを借りて聴いてましたね。

──そこから沢田研二さんや岩崎宏美さんといった、プロフィールで「影響を受けたアーティスト」に挙げている歌手の音楽にたどり着いたのはどういう経緯で?

中学校3年の頃に懐メロ番組を観て「けっこういいなあ」って思い始めて、サザンがデビューした1978年ってほかにどんな人が歌ってたのかな、みたいな感じで調べるようになりました。そのあと高校1年生のときに阿久悠さんの追悼番組が放送されていて、それでジュリー(沢田研二)を知って。

──「両親が当時の音楽を聴いていた影響で」というよくあるパターンではなく。

全然。両親にはむしろ「なんでそんなの聴いてんの?」って言われます(笑)。

カシオトーンがあったから

──高校時代にはすでに作曲活動を始めていますよね。なぜ自分で作ってみようと思ったのでしょうか?

いろんな音楽を聴いているうちに歌うのがとっても好きになって、人前でも歌ってみたいと思ったんです。それでいろんなところにデモテープを送り始めたんですけど、カバーだけだとちょっとなあと思って、オリジナル曲も作るようになりました。オーディションも受けましたね。

──人前で歌いたいという気持ちが芽生えて、すぐにデモテープを用意するってなかなかの行動力ですよね。周囲にも同じように音楽活動をしている仲間がいたんですか?

町あかり

いなかったです。本当に1人で。

──町さんがおそらく最初に作った曲だという「横浜のすずめ」はマイナーコードの歌謡曲テイストですけど、何か参考にした楽曲はありますか?

何も考えないで曲を作って、こうなった感じですね。歌謡曲っぽいものを作ろうとか、そういうこともまったく考えず。

──曲作りの方法やアレンジは独学で?

はい。子供の頃にピアノを習ったりしていたわけでもないので、少しずつ試しながら覚えていって。曲作りは、例えば「もぐらたたきのような人」なら「サビで同じ言葉を繰り返したいな」と思って、まずは言いたいことを書いて、それに鼻歌でメロディを付けて、がんばってコードを当てはめています。

──町さんの曲は、独創的な歌詞やメロディはもちろん、サウンドもすごく特徴的ですよね。なぜカシオトーンをメインにした音作りに行き着いたのでしょうか。

町あかり

カシオトーンが家にあったから(笑)。いつもカシオトーンに入っているプリセットのリズムを使っているんです。ほかに新しく買おうとはまったく思わなくて。

──ポンチャック(韓国のポピュラー音楽。2拍子のリズムにキーボードの伴奏を乗せ、メドレー調に楽曲をつなげていく)の影響ではないと思うんですけど、おそらくよく言われますよね。

すごく言われます。ポンチャックの存在はあとで知ったんですよ。

──あの音色も含めてのファンもきっとけっこういると思うんですよね。自分ではゴージャスなアレンジを施したいけど結果としてこの音になっているのか、それとも好みでこの音色を選んでいるのか、どっちなのかなと思っていて。

もともとは「夜のヒットスタジオ」みたいな、バンドやストリングスがいる感じのものをイメージしてたんですけど、カシオトーンにそんな音入ってないから(笑)。今はこの音も好きですけど、特別気に入ってやっていたわけではないんです。

メジャーデビューアルバム「ア、町あかり」2015年6月24日発売 / 2000円 / Victor Entertainment / VICL-64357 / Amazon.co.jp
「ア、町あかり」
収録曲
  1. ア、アイシャドウ
  2. もぐらたたきのような人
  3. それ分かる!
  4. さっきも聞いたわその話
  5. No Problem(お安い御用)
  6. ちょっとここじゃあ言えません
  7. 夢という小鳥
  8. 横浜のすずめ
  9. コテンパン
  10. お悩み相談室
町あかり(マチアカリ)

町あかり1991年生まれの女性シンガーソングライター。高校時代から作曲を行うようになり、大学在学中の2010年8月よりライブ活動を開始。2013年5月にテレビ朝日系「musicるTV」にて自身の活動が取り上げられ、綾小路翔(氣志團)、ヒャダインに絶賛された。同年10月には初のアルバム「町あかり全曲集 その1」をリリース。2014年7月に東京・LIQUIDROOMにて行われた電気グルーヴのワンマンライブでは、オープニングアクトとして出演を果たした。2015年4月にビクターエンタテインメントからメジャーデビューすることを発表。同年6月24日にデビューアルバム「ア、町あかり」をリリースする。