ナタリー PowerPush - LUNA SEA

JとINORANが明かす“唯一無二”の理由

ベストアルバムは「過去にやってきたものに対する感謝」

──今回のベストアルバム「LUNA SEA 25th Anniversary Ultimate Best THE ONE」をじっくり聴きました。どの楽曲にもさっきJさんがおっしゃった「いびつさ」がそこら中に散りばめられているんだけど、それと同時に脳裏に焼き付いて消えないキャッチーなメロディも共存している。そのキャッチーさはインディーズ時代から現在まで、25年一貫してると強く感じました。

J その部分はメンバーみんな絶対に外せないファクターとして、ずっと存在してます。僕たち5人はすごいアンダーグラウンドな音楽も大好きだし、実験的な音楽もハードな音楽も大好きだけど、それと同時にメロディアスさやキャッチーさというのは絶対僕らの中に存在していなければいけないもので。結局メロディっていうものも“力”なんですよね。破壊力のあるメロディもあれば鋭いメロディや熱を持ったメロディ、そして優しく包み込むメロディもある。それらが楽曲を作っていく上で、絶対的に重要視される部分なんです。その“力”を持ったメロディがLUNA SEAの楽曲の中に自然と存在してる。そういったものを常に作ってきたという自負はあります。だってどんだけカッコいいリフが生まれようが、どんだけカッコいいビートが生まれようが、そこに力強いメロディがなければ判子を押して世に出せないですよ。

INORAN(G)

INORAN ボーカリストRYUICHIのキャッチーさに対する考え方も変わらないですしね。みんな音楽の趣味や好みはバラバラかもしれないけど、キャッチーさという部分においては5人の考えは共通してると思うので、やっぱり曲作りではそこに重きを置くんです。

J でもそこは、ものすごいバランスの上で成り立ってるんですよ。ただ単に甘いメロディを乗せればいいかっていうと、それではみんな納得しないんです。だから楽曲から生まれてくる自然な温度、そこから発現するメロディを作っては壊し、作っては壊しと繰り返すこともあれば、一瞬にしてすべてが完璧な形で生まれることもある……本当、音楽って不思議ですよね。結局僕たちは全方位に向けてパワフルに響くメロディを持つ音楽が好きだったから、そういう楽曲を作り続けてこれた。その結果、いまだにこうやって輝き続けてくれる曲たちが多いのかな、なんて思います。

──そういえばベストアルバムには「The End of the Dream」以降、つまり最新アルバム「A WILL」からの楽曲は1曲も入っていませんが、これには理由はあるんです?

J 確かに僕らの25周年という括りの中に入れるべきだという声もあったんだけど、ちょっと待てと。僕は入れるべきじゃないと思った1人なんですけど、だって「A WILL」の楽曲はまだ歴史を作ってないから。「A WILL」の中の曲たちはまだライブでやったことがない曲が多いし、物語をこれから作っていくはずなのに、なんでもうベストアルバムに入れなきゃいけないんだって。過去にやってきたものに対する感謝っていう意味でのベストアルバムに、これから未来を作っていく楽曲は入れないほうがいいんじゃないかと思ったんです。

INORAN そうだね。これからのライブ1本1本で、「A WILL」の曲との関係性はどんどん変わっていくだろうし。「Ultimate Best」よりも究極のベストが将来出るかもしれないし(笑)、そのときまでのお楽しみっていうことで。

80年代バンドブームに対するカウンター

──LUNA SEAの面白さとしてもう1つ、そのしっかりしたメロディを支える演奏がとてもテクニカルなところもポイントとして挙げられると思うんですが。

J ですね。あ、自分で「ですね」と言うのもアレですけど(笑)……それは僕らが育ってきた背景も大きく関係してるんじゃないかな。バンドとして演奏してるだけでもちゃんと存在感があり、その上にさらに特別なメロディが乗る。そういう形は求めてたと思います。僕らがバンドを始めた頃って、周りにそういうバンドがあまりいなかったから。 結局技術的な方向か楽曲志向か、どちらかに寄ってましたからね。でもその2つが絶妙なテンションで混じり合うことは絶対に可能だって、バンドを始めた頃からずっと思ってたんです。

──LUNA SEAが結成された1989年というと、日本の音楽シーンはバンドブームまっただ中で、翌年くらいから少しずつ下り坂になり始めた時期ですよね。当時はもちろん良質なバンドはたくさんいたけど、ブームも末期になっていくにつれて演奏技術が乏しくてもデビューできてしまう、ヒットしてしまうというケースが増えていった印象があります。

J 僕らも実際あのシーンを間近で見ていた世代ですけど、毎週のように歩行者天国からスターが生まれて、1カ月後にはもうデビューしてるような状況でしたよね。それってうらやましいと思う反面、大丈夫か?ともあの頃なりに思っていて。ある一面ではそれがあったからこそ「僕らはああならないようにしよう」とか、LUNA SEAのスタンスが決まったと言っても過言じゃないんです。自分たちの本質を確実に伝えられるサウンド、活動の仕方、バンドのあり方を追求して……だから当時のシーンに対するカウンターだったとも思いますよ。そして、そんな僕らに共感してくれた仲間たち……周りのバンドもそうだし、全国の多くのファンのみんなもそうだし、そういったエネルギーがうねりに変わっていったんだと思います。

──結果としてそのスタンスがLUNA SEAのオリジナリティになったわけですし。

J だと思いますね。そういう意味では自分たちの未来を見つめるのにとてもいいタイミングだった気がします。

ベストアルバム「LUNA SEA 25th Anniversary Ultimate Best THE ONE」
[CD2枚組] 2014年5月28日発売 / 3542円 / ユニバーサルJ / UPCH-1982~3
ライブアルバム「NEVER SOLD OUT 2」
[CD2枚組] 2014年5月28日発売 / 3121円 / ユニバーサルJ / UPCH-1980~1
CD BOX「LUNA SEA 25th Anniversary Ultimate Best THE ONE +NEVER SOLD OUT 2」
[CD4枚組+ブックレット] 2014年5月28日発売 / 7441円 / ユニバーサルJ / UPCH-9944
LUNA SEA(ルナシー)

RYUICHI(Vo)、SUGIZO(G, Violin)、INORAN(G)、J(B)、真矢(Dr)からなるロックバンド。1989年にこの5名がそろい、ライブ活動をスタートさせる。1991年にYOSHIKI(X JAPAN)主宰の「Extasy Records」から1stアルバム「LUNA SEA」をリリース。翌1992年には2ndアルバム「IMAGE」でメジャーデビューを果たした。1994年のシングル「ROSIER」がロングヒットを記録し、東京ドームや横浜スタジアムなどでライブを行うなど日本を代表するロックバンドに君臨する。以降、「MOTHER」「STYLE」「SHINE」といったアルバムを大ヒットし、1999年5月には東京ビッグサイトで10万人を動員した野外ライブを実施。しかし2000年11月に“終幕”を発表し、同年12月26、27日に行われた東京ドーム公演をもってバンドの歴史に幕を下ろした。

終幕以降も各メンバーはソロアーティストとしてのキャリアを重ね、精力的な音楽活動を展開。2007年12月24日には東京ドームで一夜限りの復活ライブを行い、好評を博した。翌2008年5月にはhide(X JAPAN)のメモリアルライブにも出演。正式な再結成を望む声が高まる中、2010年8月に“REBOOT”と称して本格的な再始動を発表した。同年11月からは東京ドーム3DAYS公演を含むワールドツアーを敢行。2011年3月には1stアルバム「LUNA SEAのセルフカバーアルバム、2012年3月には20分を超える大作1曲のみを収録したシングル「THE ONE -crash to create-」をリリースし、音楽ファンを驚かせた。そしてシングル「The End of the Dream / Rouge」「Thoughts」「乱」の発表を経て、2013年12月に13年5カ月ぶりのオリジナルアルバム「A WILL」を発売。結成25周年を迎える2014年5月29日には国立代々木競技場第一体育館でスペシャルライブ「LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE -The Unfinished MOON-」を実施し、同年6月7日からは約9カ月におよぶ全国ホールツアー「LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE TOUR THE LUNATIC -A Liberated Will-」をスタートさせる。