LiSA「REALiZE」インタビュー|“戦いの声”の運命が導いた「スパイダーバース」日本語吹替版主題歌 (2/2)

今までの人生を恨む前に、まだやることがあるだろう

──歌詞については当然、作品の世界観や物語を意識して書いたのだと思いますけど、メッセージとしてLiSAさん自身が伝えたいことと乖離はないのかなと感じました。

そうですね。デビュー10周年を過ぎたあたりから本当に「次の一手」のようなことをすごく考えていて。コロナ禍もあって動きづらい状況の中で「どんなふうにLiSAを進めていこうか」という道筋をずっと探していたし、新しい自分を見つけ出したい、新しい自分にワクワクしたいという気持ちが強かった。「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」でスパイダーマンという運命を意図せず背負ってしまったグウェンやマイルスの中に芽生える正義や正論、それを信じて進んでいく感情と、私自身が新しく何かをやっていきたい、今までの人生を恨む前にまだやることがあるだろうという思いには共通するものがあると思ったので、そのまま歌詞にしてみたらすごく作品にマッチした内容になりました。

──「最低だ」というギョッとするひと言で始まったかと思えば、「期待 願い 奇想天外 怒り 燃料だろ」などのまくしたてるような言葉の羅列のあとに「これは僕にしか出来ないんだ」というフレーズでハッとさせたり……作詞家としてどんどん巧みになっているなと感じるのですが。

あははは、ホントですか? うれしい(笑)。

──「LANDER」を聴いたときにも感じたことですが、言葉の響きや流れ、単純な聴き心地のよさで聴き手の意識をコントロールしながら、きちんと強いメッセージを放つような巧みさがあるなと。何かコツでもつかんだんですか?

いやいや(笑)。作詞についてはデビューしたときが1年生で、この10年で学んだことはたくさんあります。いろんな作詞家さんと出会って、楽しみながら作品を作り続けてこられたことが、今になって花開いているところはあるかもしれません。

──サウンド面も含めて、好き勝手やりながらクライアントのニーズにも応える、みたいな地肩の強さを感じましたし、それは長年一緒に作ってきた堀江さんをはじめとする皆さんの経験値や結束力も大きいと思いますけど。チームワークにプラスしての海外ミックスという新機軸、もう少し聴いてみたいです。

そうですね。とはいえ今回はやっぱり海外のアニメーションというのが要因として大きかったので、タイミングが合えばですかね。「調理場が変わるとこんな味になるんだ!」という発見があったから、クセになりそうですけど。

LiSA

“戦い”のための声が導かれた運命

──LiSAさんは「スパイダーマン」という作品自体にはどのような思いを持っていますか?

「スパイダーマン」は私が子供の頃からみんなが夢中になっていた作品で、私の友達にもフィギュアをめっちゃ集めている子がいたんです。子供から大人まで、世界中に熱狂的なファンがいる作品ですよね。私が最初に映画で観たのは中学生の頃だったかな? すごくドキドキしたし、そんな作品に大人になった今関わらせていただくことになったとき……「あ、私ここだったんだな」と思いました。

──ここだった?

自分の声が持っている要素の1つであるスピード感とか、LiSAがいろんなアニメ作品でやってきたサウンド感みたいなものって、“戦い”のためのものだなと思うんです。私自身がいつも戦闘モードな精神性だからというもあると思うけど(笑)、こういう戦いの物語に似合うんだなというのを改めて感じさせてもらえて、なんというか「間違ってなかったな」と思えたんです。それは「REALiZE」という言葉が持つ「気付く」「理解する」にもつながりますけど、この「スパイダーマン」シリーズの最新作で主題歌を歌うアーティストに指名してもらえたこと、名前を挙げてもらえたことに対して、自分自身が思ってきたLiSA像は間違ってなかったんだなって。

──なるほど。わかります。

前作(2019年3月に日本公開された「スパイダーマン:スパイダーバース」)を観たとき、私、すっごい泣いちゃったんですよ。「スパイダーマン」という作品全体に言えることですけど、みんなが憧れるヒーローの華やかさとは真逆の孤独さ、手のひらを返されて友達が敵になる瞬間とか、「ヒーローになったからといって幸せなことばかりじゃない」という描かれ方をしていますよね。アヴリル・ラヴィーンに憧れていた私が、LiSAとして活動していく中でわかってきた部分と重ねて観てしまう。自分の経験と照らし合わせてより思い入れが強くなったというか。「スパイダーマン」という作品では主人公が代わって物語が受け継がれていく。同じように、いろんな人が受け継いできたこの「スパイダーマン」というシリーズの中で、今、私に「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」の日本語吹替版主題歌を歌うという立場が巡ってきたことに運命的なものを感じます。

LiSA

「全部解禁!」のホールツアーに向けて

──「REALiZE」のリリースに合わせてさまざまな活動が控えているかと思いますが、秋には全国ホールツアー「LiVE is Smile Always~LANDER~」の開催も決定しています。ワンマンとしては昨年4月の日本武道館公演(参照:LiSAがデビュー記念日に日本武道館に帰還!新たな自分の誕生を見せた全身全霊のステージ)以来ですね。最近は各所でライブの声出しがOKになっていて……。

いや、めちゃめちゃうらやましいなと思って周りのみんなのことを見ていました(笑)。声出しをして、フェスに行って、みんな楽しそうだなって。私ももちろん声出しできる想定で考えていて……「全部解禁!」という気持ちでツアーを迎えたいなと思ってセットリストを組んでいます。

──最新アルバム「LANDER」と新曲「REALiZE」を携えてのツアーとなりますし、今現在のLiSAさんの最新モードが見られるツアーになるのかなと期待しています。ひさびさに歓声を聞けば昔を懐かしく思い出すこともあるだろうし、改めて「やり直す」という気持ちもあるかなと思いますが。

そうですね。でも「LANDER」も「REALiZE」も飛び級で別の世界に来たというよりは、デビューからの延長線で新しい出会いの中で生まれたものなので、変わらない私のままで「最近会ってなかった友達とひさしぶりにどんな話をしようかな」くらいの気持ちでライブをしようかなと思っています。この新しい世界で、みんなとまた新しいものを作っていける、その第1歩を踏み出していけたら。こんなに長くライブしてなくてうまくやれるのかどうかもわからないから、そのための準備はしっかりしておこうと思いますけど。

──ブランクが空いてしまったのは心配ですか?

プレッシャーはなくはないです(笑)。でも、ひさしぶりのホールツアーで、そういう距離でみんなと会えるのもひさしぶりなので。「みんなに会える」ということと「歌を歌える」ということ、まずはそれを楽しみたいです。なんというか……子供が産まれて生活が変わっても、結局やりたいことや好きなものは全然ブレないんだなと思いました。奇抜な言葉を発しなくなったりとか(笑)、急に壮大な愛を歌い始めたりとか、私はそうはならないんだろうなって。

──まだわからないですよ。1年くらい経ったら真逆のことを言ってるかもしれないし。

あはははは! もちろん気持ちのうえで変わった部分もあるし、そういう要素は進んで取り入れていこうと思ってますけど、そもそもの性質はたぶんそんなに変わらない。なんなら、もっと攻撃的になるんじゃないかと思います。

公演情報

LiVE is Smile Always~LANDER~

  • 2023年9月30日(土)千葉県 森のホール21
  • 2023年10月1日(日)千葉県 森のホール21
  • 2023年10月8日(日)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2023年10月9日(月・祝)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
  • 2023年10月14日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年10月15日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2023年10月20日(金)新潟県 新潟県民会館
  • 2023年10月21日(土)群馬県 高崎芸術劇場
  • 2023年10月28日(土)石川県 本多の森ホール
  • 2023年11月3日(金・祝)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年11月5日(日)愛媛県 西条市総合文化会館
  • 2023年11月24日(金)北海道 函館市民会館
  • 2023年11月26日(日)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2023年12月1日(金)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年12月2日(土)大阪府 フェスティバルホール
  • 2023年12月9日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2023年12月10日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2023年12月16日(土)東京都 東京ガーデンシアター
  • 2023年12月17日(日)東京都 東京ガーデンシアター

プロフィール

LiSA(リサ)

6月24日、岐阜県生まれ。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。2014年1月に初の東京・日本武道館でのワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。2019年4月にシングルとしてリリースしたテレビアニメ「鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編」のオープニングテーマ「紅蓮華」がヒットを記録し、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2020年には映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」で「第62回日本レコード大賞」大賞を受賞した。2021年5月にソロデビュー10周年を記念したミニアルバム「LADYBUG」をリリース。2022年4月に日本武道館2DAYSを含むライブツアー「LiVE is Smile Always~Eve&Birth~」を行い、11月に通算6枚目のオリジナルアルバム「LANDER」を発表した。2023年6月、映画「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」の日本語吹替版主題歌として制作された新曲「REALiZE」を配信リリース。