Liaインタビュー「実は普通の人間でした」|17年ぶりのアルバム「SAGARIBANA」は原点回帰 (2/2)

「REBORN」を歌いながらリボーン

──今作でその“新たな引き出し”を最も強く感じたのが、個人的には5曲目の「REBORN」でして。

そう! 最初にデモを受け取ったときに、一番驚いたのが「REBORN」だったんですよ。基本的に、私はまずアップテンポの曲がめちゃくちゃ不得意なので。

──と思ってらっしゃるだろうなというのはわかります。聴き手としてはまったくそうは思いませんが。

そうなんですよ。アニメのオープニング主題歌を歌わせてもらう機会が多かったこともあって、ファンの人たちの中には「Liaといえばアップテンポやミドルテンポ」というイメージを持たれている方も多いんですけど、自分の中では“歌い上げるバラード”が一番の得意分野なんです。ロングトーンできれいにビブラートが出るストレートな歌唱というのが自分の武器だと思ってずっと大事にしてきたものなんですね。だから「REBORN」のサビみたいな、ノンビブラートで細かく音程を上下させる表現というのはそれとは正反対で、ある意味逃げてきたものなんですよ。でも、歌えば歌うほどだんだん慣れてきて、なんだか楽しくなってきちゃって(笑)。

──(笑)。「REBORN」を歌いこなすまでの過程で、Liaさん自身もリボーンしたわけですね。

そうそう(笑)。「『REBORN』歌いながらリボーンしてんなー」と思いながら録っていました。ある種の食わず嫌いじゃないですけど、自分で勝手に「これは自分がやる必要はない」と決めつけていたものが、やってみたらこれはこれで自分らしく歌えることがわかった。誰のマネにもなっていないし、「こういうアップテンポなカッコいい曲であっても自分らしく歌えるんだ」という発見があって、また新たな引き出しが増えた感覚ですね。

──一見正反対と思えるところに“Lia節”を乗せるからこそ際立つ、という一面もありますよね。

ああ、なるほどね。確かにそれはあるかもしれないです。

Lia

──そういった技術的な部分もそうなんですけど、歌われている内容的にも、今のLiaさんのアーティストとしてのあり方がそのまま描かれていますよね。

もう、そのまんまですね。うん。

──なんならこれがタイトル曲でもよかったのでは?と思うくらいです。

そういう案も実際に出たんですけど、直接的すぎるかなと思って。

──確かに(笑)。しかも「REBORN」をアルバムタイトルにしちゃうと「REVIVES」とほぼ同じになっちゃいますしね。

そうそう、それもあります。

──実際のアルバムタイトルは「SAGARIBANA」となりました。まったく直接的ではない、とても詩的なタイトルですよね。

サガリバナは主に沖縄の石垣島や西表島で見られる花で、私はなんのゆかりもないし「なんで?」って感じはあるんですけど(笑)。でも、夜に咲いて朝には散ってしまうというはかない生態が歌い手としての自分に通ずるものがあるなと思ったし、花言葉が「幸福が訪れる」なんですよ。私が歌を通じてファンの皆さんに伝えたいことは「とにかく幸せになってほしい」ということなので、それも含めて自分というものをすごく表してくれているお花だなと思って。もともとアルバムを作ろうとなったときに掲げたテーマが「歌に託した祈り」だったので、まさにタイトルにぴったりだなと。

──夜に咲くというのはすごく不思議ですよね。

なんで夜咲くんですかね? GOOD之介がこの曲を作ったのも、たまたま石垣島へ行ったときに仲よくなったおじさんから「サガリバナの歌を書け」と言われたことがきっかけらしいんです。その曲を私が歌うことになって、まさかのアルバムタイトルにもなって……その巡り合わせも不思議ですよね。「甘い香りに包まれながら」という一節がある通り、本当に特徴的な甘い香りがするんですって。その香りを知らない私が歌うのもどうなんだろう?という気持ちもあるんですけど(笑)。

──知る前と知ったあとで違う表現もできそうですし、それはそれでよさそうです。

そうですね。

──そんなアルバムタイトルも含めて、あらゆる角度から「Liaというアーティストはこういうものですよ」と表明する作品になりましたよね。

そう。最初からこういうものを作ろうとしたわけじゃなくて、作っていったら自然とそういうものになっていきました。それが今回の素晴らしかったことの1つですね。「この曲順にこういう曲を入れましょう」というやり方ではなく、自然に生まれたような……リボーンじゃないですけど(笑)、そういうアルバムになったなと思います。

私、どんな人だと思われてるんだろう

──11月23日には東京・豊洲PITにて、約2年半ぶりの国内単独公演となるライブ「Lia SUPER LIVE 2025」が行われます。

はい。詳細についてはこれから詰めていく段階ではあるんですけど、今回に関してはこのアルバムを引っさげて臨む形になるので、いい形でお披露目ができたらなと思っています。本当にいい曲がそろっているので。

──ライブで聴きたい曲がありすぎて困るくらいです。

ホントですか? え、例えばどれを?

──まあ全部ですけど……個人的に一番生で聴きたいのは「Leave my heart」ですかね。

いい曲ですよねー! あれは歌っていてめちゃくちゃ気持ちがいいんです。歌詞に英語が入ってることもあるし、今回のアルバムの中ではもともと私が得意としている方向性に近いので、安心感がある(笑)。

──語りかけるような歌い方がされる曲なので、ライブで語りかけられたいです。

私も語りかけたいんですよ(笑)。“ひと言ひと言を大切に歌う”というのが自分の強みの1つなので……しかも、Liaのファンでいてくれている方たちって、そういう表現の機微をちゃんとわかってくれるんです。音楽に対する理解度が高い、というんですかね。それがすっごくありがたいことだなと思っています。

──それがLiaさんに伝わっているのは、ライブという場があってこそですよね。録音された音源を届けるだけでは、そういう生のリアクションは得られないですから。

私は、ライブというのはコミュニケーションの場だと思っていて。ただ“歌という芸”を披露するだけの場ではなくて、私が歌ったことに対してみんなのキラキラしたパワーが返ってくる、私もすごく元気をもらえる場所なんです。

Lia

──そもそも音楽というもの自体がコミュニケーションですからね。聴いてくれる人がいて初めて成立するものなので。

そうですよね。だから本当に、来てくださる皆さんにリラックスして楽しんでいただけるようなライブを……けっこう、いつも序盤は緊張しているお客さんも多いんですけど(笑)。「なかなかライブに足を運ぶことがないんです」っていうインドアな方も多いので。

──しかもLiaさんのライブが初めてだと、「Liaって本当に実在するんだろうか?」と半信半疑で来る人も多いでしょうし。

そう、皆さんそう思っているみたいで。私、どんな人だと思われてるんだろう(笑)。こういうインタビュー取材を受けるときなんかも、「Liaさんって意外とお話される方なんですね」と言われることが多くて。最近はスタッフからも「そういう部分を、もう出していっていいんじゃないですか?」と言われているんですよね。

──その意見には僕も同意です。女神のようなLiaさんももちろん魅力的ですけど、もっと素を出していったら、人として好きになるファンが激増しそうな気がします。

ありがとうございます。「今後は素を出していく」にもう1票入りました(笑)。

──というか、今回のアルバム自体がそういうものですよね。“人間宣言”みたいな作品というか。

そうですね。「実は普通の人間でした」っていう感じなので。

──その先のお話も少し伺っておきたいんですが、さすがに次のアルバムがまた10数年後ということには……。

ならないです(笑)。ここからがまた新たなるスタートですし、先日のファンクラブイベントでもクラウチングスタートのポーズを披露したくらいなので(笑)。今後Liaという存在がどういうふうに皆さんにアプローチしていけるのかを考えると、いろんなことができそうだなと思っているんです。チームLiaの中でも「忙しくなっちゃうね」という話をしていて。

──そのワクワク感は今こうしてお話を聞いているだけでもひしひしと感じますし、作品からも伝わってきます。

今までは「Liaってどうあるべきなんだろう?」というところで、「これまでに残してきた足跡を尊重しつつ、自分がいるべきところに立って歌う」というスタンスを取ってきました。でも、これからはもっと新しいことをしてもいいと思うし、自分がしたいことを自分らしく表現していったらきっとファンのみんなもついてきてくれるのかな、となんとなく想像できるようになってきて。それはやっぱり、25年間やってきた結果そこにたどり着けたということだと思うんですよね。どこか途中で自分よがりなことをしていたら、今こうなっていなかったかもしれないから。風に任せて、波に任せてきたのがよかったのかなと。だから今があるのかなと思います。

──まさに「REBORN」の歌詞そのままじゃないですか。

そうですね(笑)。だから本当に今回のアルバムは、これまでとは全然別物だと思います。レコーディングの時点ではあまりそういうふうには思っていなかったんですけど、できあがってみると自分でも「あ、なるほどね」と腑に落ちたところはあって。おかげさまで、これからがとても楽しみになりました。

公演情報

Lia SUPER LIVE 2025

2025年11月23日(日・祝)東京都 豊洲PIT

プロフィール

Lia(リア)

バークリー音楽大学を卒業後、アメリカ在住中にゲーム・アニメ「AIR」の主題歌「鳥の詩」で歌手デビューを果たす。その後「CLANNAD ~AFTER STORY~」「Angel Beats!」「FORTUNE ARTERIAL 赤い約束」など多数のアニメ作品の主題歌を担当。代表曲の1つで2010年5月にリリースされた「My Soul,Your Beats!」はBillboard JAPAN年間インディーズセールスチャートで第1位を獲得。また2011年には歌唱参加したアルバム「Calling All Dawns」が「第53回グラミー賞」において「最優秀クラシック・クロスオーヴァー・アルバム賞」を受賞した。2020年11月に歌手活動20周年を記念したベストアルバム「Lia 20th BEST」を発表。2025年11月に6枚目のオリジナルアルバム「SAGARIBANA」をリリースした。