ナタリー PowerPush - LAMA
フルカワミキ&田渕ひさ子インタビュー
「中村弘二(Vo, G)、フルカワミキ(Vo, B)、田渕ひさ子(G, Cho)、牛尾憲輔(Programming)の4人がバンドを結成する」というニュースが音楽ファンに届けられたのは今年2月のこと。LAMAと名付けられたそのバンドは、音源をリリースする前に東京・WWWにてお披露目ライブを実施し、ライブストリーミングチャンネル・DOMMUNEを介して約8万人がその模様を視聴。注目度の高さを伺わせた。
そしてこのたび、LAMAが満を持して1stシングル「Spell」を発表する。フジテレビ・ノイタミナ枠で放送中のアニメ「NO.6」のオープニングテーマに起用されたタイトル曲は、フルカワミキのキュートなボーカルが耳に残るポップなナンバー。カップリングの「one day」やタイトル曲のリミックスもそれぞれ興味深い楽曲に仕上がっている。
ナタリーではLAMAの記念すべき初音源にあわせ、バンドメンバーにソロインタビューを実施。それぞれに同じ質問をぶつけ、返ってくる答えの違いから、LAMAが持つ可能性や秘密に迫ってみた。音楽的バックグラウンドもキャリアも異なる4人がなぜ集まり、どこを目指そうとしているのか。まずはフルカワミキと田渕ひさ子、女性陣2人へのインタビューからそれを見極めたい。
取材・文 / 野口理香 撮影 / 高田梓
フルカワミキインタビュー
01. 結成のきっかけ
──まず、LAMA結成のきっかけについて教えていただけますか?
私はソロで活動してるので、自分のソロにフレキシブルに参加してくれるミュージシャンをいつも探っていたんですね。面白いことができたらいいな、って思いながら。そんな候補の中に、ひさ子ちゃんもいて。会ったことはなかったんですけど、話したら何か生まれるかもしれないな、アイデアがパパッと勝手に浮かぶだろうなと思ってた1人だったんです。
──ひさ子さんとは会ったことがなかったんですか、意外ですね。
そうですね。そんなに対バン相手にもなったことがなく。だからまずは会ってみたくて。
──ミキさんが、誰かと一緒に面白いことやりたいなと思ったときに、ひさ子さんのお名前が挙がったのはなぜですか?
パッと浮かんだのが、ギタリストで、同じ女性だってことかな。あと、私はかっこいいフィードバックを鳴らす人が好きで。そういう理由で気になってた存在でもあったんです。
──初めて会ったのはいつ頃だったんですか?
去年の12月かな。年末にカフェで(笑)。お茶を頼んで、午後のティーパーティみたいな感じで話したんです(笑)。ひさ子ちゃんと、ナカコーと、私で。
──その場でもう、具体的にLAMAという形が見えてきてました?
「LAMA」っていう言葉も、そのとき既に出てきてましたね。バンド名のつもりで言ってたんじゃなかったんですけど。どういう音がいいかっていう話にもなって、そのときカフェで流れてた音楽への感想とか、動物だったらどんな感じだろうみたいなアイデアをどんどん出しながら、3人のテンションをチューニングしていった感じ。
──「LAMA」という言葉に行き着いたのはなぜなんでしょう?「動物だったらうさぎがいいよね」「ネコがいいよね」みたいな話から「ラマもいいよね」みたいな感じだったんでしょうか。
えっと、存在としてわかりやすい猫とか犬とか馬とかじゃなくて、もうちょっと違うものだよね、っていう話になって、そこでラマが登場したんです。「どんなんだったっけ? 首長いよね?」みたいな漠然としたイメージしかないけど、居場所もある程度限定されるし。そういう存在がいいなという話に。さらに、「ラマが鋲ジャン着てる感じがいいよね」っていう話も出て、「じゃあそういう感じで」って(笑)。
──ラマが鋲ジャン。ポップなんだけれども毒がある、というのはミキさんのソロワークにも通じますね。そこでほかの2人も「いいね」って同調したのが面白いと思います。
(笑)。みんなすごくのほほーんとしてるんですよ。ひさ子ちゃんって、でっかく構えてる感じの人で。柔軟性があるというか、すごく許容力がある人なんだな、いいなあってそのとき思って。好き勝手に話してるうちに出てきた言葉がそういうキーワードだったんですよね。
02. 初対面の印象
──ひさ子さんとナカコーさんと3人で顔を合わせたときの雰囲気は覚えてますか?
覚えてますね(笑)。……ホントに茶会。茶会ノリでした(笑)。
──あはは(笑)。ではその12月のお茶会のあと、どんな感じで話が進んでいったんでしょうか?
とりあえず何か手を付けたいなっていう考えがあったから、まずは方向性を探りながら音素材を作っておいて、データのやり取りで音とか曲を作っていこうっていう感じになって。あと、3人で話したあとに、「メンバーがもう1人欲しいな」って気持ちが生まれて。生ドラムを入れるよりは、打ち込みだったりプログラミングだったりができる、フレキシブルな人がいいなあっていう考えから、牛尾くんに声をかけることにしたんですね。私はソロで牛尾くんとかかわりがあったから、彼のできることもわかってたし。牛尾くん以外の3人も、パートはギターとかベースとかガチッと決まってそうに見えて、曲や素材を作るときは自分のパートにとらわれないし。なので、牛尾くんみたいな人がいてくれたほうがよりスムーズに進むんじゃないかなってパパパッと浮かんだんですよね。
──LAMAに誘ったとき、牛尾さんはなんて答えたんですか?
なんだったっけな。私が直接言ったわけじゃないんですけど、なんか牛尾くんは「やるやる!」っていう感じだったみたい(笑)。
──じゃあ活動の始まりは、データのやり取りによる素材作りから?
そうですね。年が明けて……でもアー写のほうが先だったような気がします(笑)。そうだそうだ! どういう音楽にするかって具体的に詰めてるミーティングの最中に、スタッフから「アー写を先に撮りたいんですよ」って言われたんですよ。ちゃんとやるんだったらとりあえず写真を、と。決意表明みたいなものですかね。
──アー写の撮影のときにひさ子さんと牛尾さんは初めて会ったそうですが。
そうそうそう! それまではメールとかで「こういう進行になっております」ってやり取りしてただけで(笑)。牛尾くんも多分「え? え? え?」って転がされるようにスタジオにやってきたような感じ。
──そんなスピーディな感じで進んでいたんですね。でも、顔を合わせなくても密な関係が築けていて、さらにそういう人同士で音を鳴らすときちんとカッコいいものが作れてるっていうのは、非常に今っぽいですね。
うん。音を聴いて、それに対して柔軟に発想を広げられるような人たちなので。あるワンフレーズを聴いて、それに対してみんなが出してくるカードも楽しみだし。
──ちなみに、どんなふうな音にしていこうかって話し合いのときには具体的なジャンルだったりバンド名だったりは挙がったんですか?
うーん……なんだっけな……。いろんなジャケットを見ながら、このへんの流れもいいねみたいな話をしたり……あとはその場に流れていたBGMを聴きながら、リズムはこういう感じでみたいな……本当に抽象的な話を汲みとって。
──ああ、なるほど。こういうのがいい、ああいうのがいいというより、今お互いが気になっていることを少しずつ出し合って、見えているものをすり合わせていったような感じ。
うん。あとはもう音を出しながらですね。最初に作り込み過ぎちゃうと窮屈になるし。だから今も、制作しながら探っている状態です。
──今も制作が進行中なんですか。じゃあ、バンドとして練れていく過程にあるんでしょうか。
そうですね。できた曲を全部並べて聴いてみたら「おお、こんな感じになるんだ」っていう発見もあるだろうし、そこから「こうしてみようか」っていう発想も生まれるだろうし。新たに見えてくるアイデアを広げたり、これは余分だなっていう音を削ぎ落としたり。そういうことを、4人集まって作業しながらリアルに感じとりながら一緒に作っていってます。
──LAMAというバンドは、ファンが結成の段階からその存在を知っているので、バンドとして成長していく過程も見られるのが興味深いと思います。
メンバーそれぞれの活動を知ってる人もいるだろうけど、でもバンドとして謎な部分は残したいんですね。「えっ、このバンドの音楽どうなるの!?」っていうワクワク感をくすぐれたらいいなとも思うし、自分たちもそう思いながら新鮮な気持ちでやりたいし。だから最初から方向性をばっちり決めることもできるけど、そうじゃなくて幅を持たせながら自分たちも遊びたい。発掘したり発見したりっていうことを楽しみたいな、と。「謎だよね」って言いながらやれる環境をね(笑)。
LAMA(らま)
中村弘二(Vo, G)、フルカワミキ(Vo, B)、田渕ひさ子(G, Cho)、牛尾憲輔(Programming)の4人からなるロックバンド。2010年12月結成。2011年4月、東京・WWWでKIMONOSと対バンを実施。これがお披露目ライブとなる。この模様はライブストリーミングチャンネル・DOMMUNEにて生中継され、約8万人が視聴した。同年8月に1stシングル「Spell」をリリース。