ナタリー PowerPush - LAGITAGIDA

オータケコーハン&あら恋・池永 インストロックの快楽を語る

「違和感や雑味がきちんと入っていることが重要」

──先ほど言っていた「いろんな音楽」の中には、オータケさん自身もそう評されることが多いだろう、いわゆるバカテクギタリストのいるフュージョンバンドなんかも入っています?

オータケ これが、いわゆるスーパーギタリストみたいな連中とかって全っ然好きではなくて(笑)。同じようにテクニカルであっても、もっと変態的な人が好きなんですよね。(フランク・)ザッパだったり、(エルメート・)パスコアールだったり、あとはジョン・ゾーンだったりとか。で、最近特に日本ではそういう変態的なロックとかポストロック的なものって主流ではなくなってきている感じがあって。70年代とかにあったようなファジーなギターソロとか、すごく吹っ切れてる感のある演奏をする連中がいないなっていうふうには常々感じていて。だったら、それをやってみたいじゃないですか。他人のやっていないことなんだし。そんなことを考えていたら、どんどん今みたいなスタイルに近付いていったんだろうなって思ってます。

池永正二

池永 確かにバカテクには憧れてなさそうやもんね。結果的にバカでテクニカルなギタリストにはなれたけど(笑)。だからLAGIを聴いていると“うまいでしょ感”は前面に出てこない。実際はめちゃくちゃ難しいことをやってるんですけど、最終的な落としどころとしては、ドンドンドンと来て、バーン!ってなるというか(笑)。すごくわかりやすいところに落ち着いてて、いいなって思いますけどね。

オータケ そうですね。やっぱり小難しくはなりたくないんですよ。カチッとしちゃうのはすごくイヤなんで。だから今回のアルバムの「TUTELA!!」のときに限らず、レコーディングでクリックを聴くことはほとんどないですし。ギターソロとかについても、むしろミスタッチとか、そういう違和感や雑味がきちんと入っていることが重要なんだと思ってますし。

池永 確かにそんな感じがあるよね。うまいでしょ感よりもドカーンって放出するライブ感のほうが強いもん。ただ、ウチで弾いてもらうときは、まったく別なんですけどね。

オータケ そうそうそう。

池永 録音ではミスタッチは絶対ボツだし、クリックはもちろん絶対聴きますし、っていうかベーシックトラックが打ち込みだからね(笑)。

オータケコーハン=あらかじめ決められた恋人たちへ

──だからオータケさんと池永さん、LAGITAGIDAとあら恋って面白いコンビだよなって思うんですよ。

池永 だいたいジャンルからしてLAGIはプログレで、ウチはダブですからね(笑)。プログレダブってあんまりないですから。

──しかも池永さんはミスタッチを嫌うし、クリックをしっかり聴かせるし。なのになぜ池永さんはオータケさんにあら恋に参加してもらおうと思ったんですか?

池永 まあ最初にお話した通り、縁ですよね。縁があって一緒にやってみたら面白かったっていう……。あんまり言葉にはできないかなあ。

オータケ ぶっちゃけ、何も考えてないんだと思うよ(笑)。

左から池永正二、オータケコーハン。

池永 うん、わかんない(笑)。でも決め付けないし、型にハメないっていうオータケくんの性格ややり方がすごくフィットしたんですよ。プログレってプレイヤーもファンもけっこうストイックだから「プログレしかやらない」「聴かない」っていう人も多いと思うんですけど、オータケくんの場合はプログレはあくまで窓口の1つ。……窓口っていうのもヘンやけど。

オータケ でもそういう感じですね。やっぱりいろいろな音楽が好きだから。プログレも聴くし、普通の歌モノも聴くし、「COOKIE SCENE」で見たあら恋も聴くし(笑)。しかもあら恋は弾いていてもものすごい気持ちいいし、なんかダブバンドに参加することもそれはそれで自然なんです。

池永 だからやりやすいんですよね。「ここでなんかちょっと冷めた感じになって」って言ったら、それに応えてくれつつ、でもプログレっぽい、ものすごいヘンな連符を入れてきたりして。ダブにプログレ的な要素を自然に入れられるギタリストって、たぶん世界的に見てもすごく珍しいと思うんですよ。しかも、メンバーじゃないのにギターソロが長いっていう。まあ、それはオレの指示ではあるんですけど(笑)。

オータケ 僕、ライブで「ラセン」のソロを弾いてるときちょっと不安になりますからね。「みんな、メンバーでもないヤツのギターソロなんか聴きたいのかな?」って(笑)。

──でも、あのギターソロってライブで一番アガる瞬間じゃないですか。

池永 そうなんですよ。だって3月に「六本木アートナイト」っていうイベントに出たんですけど、そのときのレポート記事の写真っていうのが、オータケくんがソロを弾いているところを抜きで撮ったやつでしたからね(笑)。もう立ち姿からカッコいいし、あと、いい意味でプレイが硬いんですよ。

オータケ 硬い?

池永 要求にある程度以上は応えてくれるんだけど、モロにオレの言った通りには行かへんよね。例えばORANGE JUICEみたいなペロペローって感じの柔らかいギターを弾いてもらいたいな、と思っても、なんかそのペロペロの中にキュインキュインを入れたり、ペロペロした音で○連符みたいなのを弾いたりして。それがいい意味での逸脱感やセッション感を生んでくれるから、あら恋を観ていてもオータケくんのギターが目立つんでしょうね。

どオータケ、どLAGITAGIDA

──「TUTELA!!」ってオータケさんの硬い部分を満天下に見せつけたアルバムですよね。

池永 “どオータケ”ですよね(笑)。

──はい(笑)。どオータケであり、どLAGITAGIDA。ギターはキュインキュインしまくるし、リズム隊は変態的な変拍子を刻みまくるし。すごくアグレッシブなアルバムですよね。

オータケ やっぱり現状に対して思うところっていろいろあるじゃないですか。だからこそ攻撃性や怒りはやっぱり必要だと思うんですよ。

池永 なんで金がないねん!とか(笑)。

オータケ そう「なんでオレには金がないんだ」みたいなところから始まって、じゃあなんで金がないのかって理由を探ってみたら、今の世の中の状況っていうものが見えてきて、また新しい怒りも生まれてきたりとか。

LAGITAGIDA 1stアルバム「TUTELA!!」 / 2013年7月3日発売 / 2300円 / levitation / LEVT-001
LAGITAGIDA 1stアルバム「TUTELA!!」
収録曲
  1. Incident On The Moon
  2. TUTELA!!
  3. Sufferers
  4. Drastica
  5. Surplus Population
  6. Fooneral
  7. Sensya
  8. Terrible Boy
  9. Copeten
  10. Spiral Nebula
LAGITAGIDA(らぎたぎだ)
LAGITAGIDA

オータケコーハン(G)、コーノタケヒト(B)、A(Dr)によって2010年4月に結成されたインストロックバンド。2011年4月に1stミニアルバム「CaterpiRhythm」をリリースすると、演奏テクニックを全面に押し出したスリリングなサウンドや激しいライブパフォーマンスが話題となる。2012年1月に2ndミニアルバム「CartaMarina」を発表。3月にはアメリカで開催された世界最大の音楽コンベンション「SXSW」に出演し、帰国後は東京や関西を中心にライブを実施した。その後約1年間の制作期間を経て、2013年7月に1stフルアルバム「TUTELA!!」をリリース。現在ではサポートにkAoru ikArAshi(Key)を加えた4人で活動している。

あらかじめ決められた恋人たちへ
(あらかじめきめられたこいびとたちへ)
あらかじめ決められた恋人たちへ

ピアニカ奏者兼トラックメイカーの池永正二を中心に結成された叙情派エレクトロダブユニット。2003年に初のフルアルバム「釘」を発表して以降、2005年に「ブレ」、2008年に「カラ」、2009年にライブレコーディングした音源を編集したアルバム「ラッシュ」とリリースを続け、エッジの効いたエレクトロニカサウンドに、ピアニカの叙情的な音色を重ね唯一無比の世界観を表現した。また2011年にバンドレコーディング作品「CALLING」、2013年に2曲30分からなるコンセプトミニアルバム「今日」など、チャレンジングな内容の作品を続々発表。バンドの活動のほかにも、リミックス提供や映画 / 劇中音楽の制作などで高い評価を得ている。