ナタリー PowerPush - 空想委員会

100円のネクタイがつかんだ“現実”

学校生活を歌い続けていいんだってNUMBER GIRLが教えてくれた

──学校をコンセプトにした活動はいつ頃からですか?

三浦 歌ってる内容はずっとこういう感じなんですけど、意識したのはけっこうあとで。ただ、衣装に関しては「委員会だからシャツとネクタイは義務ね」って言ってました。

岡田 3期メンバーになって、最初にしたことってネクタイ買いに行ったことなんです(笑)。

佐々木 しかもスーパーで100円のを(笑)。ステージで同じ衣装のほうが統一感があって印象に残りやすいっていう三浦さんの意見に納得して。

岡田 より空想委員会をわかりやすく見せるためには?って感じですね。

佐々木 「独占禁止法」(2011年12月発売のミニアルバム「恋愛下手の作り方」収録)が大きかったんじゃない?

三浦 そうだね。そういう歌を作っちゃって、そういうPVも作ったので、そこからちょっとずつって感じですかね。あとは学校を絡めた企画とかをやるのが僕たち自身、楽しくて。

──歌ってる曲も学校生活をモチーフした曲が多いですよね。

三浦隆一(Vo, G)

三浦 高校のときに抱えていたモヤッとしていたものがずっと残ってて。その気持ちを吐き出す方法として音楽を始めたんです。独り言から始まっているので、そもそも共感してもらえるとは思ってなかったですけど。ただやっぱり歳を重ねるにつれて「いつまであいつそんなこと言ってるんだ」とか、社会的な見え方とかあるじゃないですか。でもNUMBER GIRLの向井(秀徳)さんがずっと17歳の感情を歌い続けるのを見て「ああ、いいんだ!」と思って。それを表現としてやっても大丈夫なんだなってNUMBER GIRLが教えてくれました。

──ご自身は学生じゃないのに、まだ学生の歌が歌えるのはなぜですか? 日記に当時の気持ちを書き残していたとか?

三浦 全然ないですね。何がきっかけなのかはわからないんですけどふと思い出すことがあって。高校のときの感じは鮮烈に今も覚えてるので。相当根が深いんじゃないでしょうか(笑)。

──それはマイナスな感情のほうが強いんですか?

三浦 プラスはほぼなかったです(笑)。一番多感な時期に感じてた、モヤモヤしてる感じがまだ残ってる。今回も曲作ってみて、まだ出るかと自分でも驚いたんですけど(笑)。この感じ、まだ続きそうですね。

「恋愛って素敵だよね」を歌うかもしれない

──モヤモヤが出なくなったら……っていう不安はないですか?

左から岡田典之(B)、三浦隆一(Vo, G)、佐々木直也(G)。

三浦 もし学生時代のモヤモヤが出なくなったときにも僕は別のことを思ってると思うんで、そこは自分で楽しみな部分でもあります。今回のアルバムでも最近のことを歌ってる曲もあるし。当時のことを歌ってはいるけど今の感情でもあるし、過去のことを歌ってるっていう感じでもないんですよね。

岡田 この先三浦さんが考えてることはどんどん変わっていくと思うんですよ。ただ普通の人とは違う観点から物事を見たり、ちょっと変わった表現をするのが三浦さんの面白いところなので、考えてることが変わっていったとしても不安はないですね。

佐々木 歌詞に関しては、僕と岡田くんは一切何も言わないんです。できあがったものを見て、共感する部分もあるし、そういう見方するんだっていう驚きもあります。

岡田 それをより伝えるにはどういうふうに演奏しよう?っていうところに楽しみがあったりするよね。

佐々木 三浦さんが書く曲を何百万倍もカッコよくするのが僕と岡田くんの役割。それに、三浦さんの書く歌詞って嘘じゃないんですよね。自分の思ってることをそのまま出してる。そこは今後も変えられないというか、変わらないところだと思うのでそこは楽しみな部分ですね。

三浦 もしかしたら「恋愛って素敵だよね」みたいになるかもしれないしね(笑)。俺にも「愛こそすべてだよね」みたいな曲が歌える日が来るかもしれない。

岡田典之(B)

佐々木 そうだね、楽しみだね。三浦さんの充実した恋愛の話。

岡田 今のところ想像できない……(笑)。

三浦 いやー、なさそうだな(笑)。

──今「恋愛偏差値が低い」がキャッチフレーズになっていますが、うまくいかない恋愛や、マイナスな感情だけを歌いたいということではない?

三浦 そういうふうにいなきゃとも思ってないですし、嘘になっちゃうと思うんです。嘘をやるくらいだったら音楽はやらない。そのとき思ってることをしっかり本音で歌っていきたいです。

メジャーデビューアルバム「種の起源」 / 2014年6月4日発売 / キングレコード
通常盤 [CD+DVD] / 2800円 / KIZC-255~6
お試し価格盤 [CD] / 2000円 / KICS-93066
収録曲
  1. カオス力学
  2. 八方塞がり美人
  3. 残響ダンス
  4. エリクサー中毒患者
  5. ラブトレーダー
  6. 主の機嫌
  7. To DARWIN(instrumental)
  8. ドッペルゲンガーだらけ
  9. 「ユートピア」検索結果
  10. 空想進化論
  11. 自然選択説(※通常盤のみ)
空想委員会(クウソウイインカイ)

空想委員会

三浦隆一(Vo, G)、佐々木直也(G)、岡田典之(B)からなる3人組ロックバンド。2011年にリリースしたインディーズデビュー作「恋愛下手の作り方」がタワレコメンに選ばれ、一気に知名度を上げる。その後もハイペースでCDをリリースし、各地のイベントやフェスに出演。2014年2月にはゲスの極み乙女。との共同ツアーを開催し、話題を集めた。2014年6月にキングレコードから「種の起源」をリリースし、メジャーデビュー。恋愛に対する不平不満や、ひねくれた感情を書いた独特の歌詞が、学生を中心に多くの共感を呼んでいる。