ナタリー PowerPush - 栗コーダーカルテット
祝・コツコツやって15周年! リコーダーとともに歩んだ歴史をたどる
フォロワーは出てこなかった
──リコーダーをメインに据えたバンドというのは、15年前でも斬新だったと思いますし、今もなお……ちょっとおおげさですけど、他の追随を許さない感じがありますよね。
近藤 追随を許さないというより、追随してくる人がいないっていう(笑)。
栗原 フォロワーが出てきて追われるんじゃないかと思ってたんですけど、全然出てこない(笑)。
関島 そんなに難しいことはやってないんで、誰でもやろうと思えばできると思うんですけどね。楽譜集まで出して、手の内もすべて見ていただいているわけなんですが。
──でも楽曲は子供から大人まで幅広い世代に受け入れられています。その理由ってなんだと思いますか?
関島 それは編成というよりも、メンバーが理由なんじゃないかなと思うんですよね。けっこう歳がいってから組んだバンドなんで、それまで歩いてきた道も違うし、栗コーダー以外にそれぞれいろんなことやってますから。そういう他のところで培ってきたもの、現在進行形で培ってるものを栗コーダーに持ってくることで、広がりが出ているような気がするんですよね。
──あとはリコーダーという楽器の魅力も間違いなくありますよね。絶対に誰でも一度は吹いたことがある。そんな楽器って他にないですもんね。
栗原 そうですね。そういえば始めた当初はそんなことを思ったりしてましたね。みんな吹いたことあるからいいんじゃないかなって。うっかり忘れてましたけど(笑)。
近藤 最初の1年間ぐらいはリコーダーでどこまでできるかっていうことを、かなりがんばってやってた時期でしたね。どこまで可能性が広がるかっていう。
関島 今はリコーダーと他の楽器を組み合わせることによって、むしろリコーダーの音色が生きるなぁっていうことをやったりはしてますね。
高校球児みたいな感じだと思うんだよね
──リコーダーってすごく身近な楽器である一方で、オーケストラで使われる楽器でもあるわけですよね。テクニックを追求しようと思えばどこまでも追求できてしまう。そういう部分で、栗コーダーが大事にしているマナーみたいなものってあるんですか?
川口 オーケストラの人たちは、例えばものすごく速いフレーズとかを巧みに吹きこなしたりもするんですけど、ちょっと僕たちの吹き方はまた違うんですよね。
栗原 うまい人は、スロウな曲ではビブラートをゆっくりかけて歌いこんだりとかするもんね。でも僕らはそれがなくって、いつも“ピー!”という音しか出ない(笑)。
──アハハハ。でも、ちょっと言い方が悪いかもしれないですけど、栗コーダーの音色ってどこかぶっきらぼうというか、そういうところが懐かしかったりもするし、すごく心地良いんですよ。親しみやすいというか。
川口 そういうのはあると思いますね。例えばフルートを吹いてるのと変わらないくらいの巧みな表現の笛だと、なんかちょっと距離を感じますよね。とは言え、ぶっきらぼうにわざと吹くというわけではなく、丁寧にはやってるんですけどね。
関島 要は、曲に呼ばれた吹き方で吹いてるってことだと思うんですよ。僕は曲によっては、けっこうビブラートをかけることもありますし。
栗原 どの曲もひたむきにやってるっていうことじゃないですかね。たぶんね、ここだけの話ですけど、すごくうまくなった人はあんまりひたむきじゃなかったりするときがあると思うんですよ。
川口 おぉ、爆弾発言!(笑)
近藤 それでなんかいまいち魅力がないとかね、そういうことがあると思うんですけど。わりと僕らはいつでも曲に対して全身全霊というか。
川口 高校球児みたいな感じだと思うんだよね。なんとかがんばってスクイズで点を取るみたいな。コツコツと打っていくみたいな。
関島 あんまり余裕しゃくしゃくすぎても面白くない場合があるかもしれないしね。
栗原 その人の持ってる技量みたいなものがあって、それに対して音楽がちょうどいいくらいの距離感を保ってるのが大事なのかもしれないですね。ちょっとできないくらいのところを一生懸命やるっていう、その分量が魅力なのかなと思ってますね。距離がありすぎるとね、ライブでこけたりするしね。
近藤 始めた当初はよくわかんないもんだから、すごい難しい曲やって(笑)。
栗原 ライブで失敗してね。1人落ち、2人落ち、最後は関島さんだけが演奏してたっていう(笑)。
CD収録曲
- カントリーマーチ
- ペジエ
- ボンネットバス
- 遠くの友達
- つみきのいえ メインタイトル ~guitar version~
- 光ノトキ
- 午前3時の植物園
- 小組曲「ピタゴラスイッチ」
[I] オープニングテーマ
[II] ピタゴラ装置BGM
[III] スーの登場のテーマ
[IV] テレビのジョンのテーマ
[V] ジョンにズームアップ!
[VI] きょうのトピックBGM
[VII] エンディングテーマ - おじいさんの11ヶ月
- カントリー・ロード
- 帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)
- 快獣ブースカ
- 遙かなる大地より
- アパオの海外出張
- サンセットドライバー
- 夏から秋へ渡る橋
- 純な賛美
- 亡き王女のためのパヴァーヌ
初回盤DVD収録曲
- ハイウェイスター
監督:野村辰寿 [ROBOT] + 細川晋 - おじいさんの11ヶ月
監督:佐藤匡 [ユーフラテス] - 溜め息の橋(feat.湯川潮音)
監督:中島信也[東北新社] - PoPo Loouise(feat.UA)
監督:坂井治 [ROBOT]
栗コーダーカルテット
(くりこーだーかるてっと)
栗原正己(リコーダー、ピアニカ他)、川口義之(リコーダー、サックス他)、近藤研二(リコーダー、ギター他)、関島岳郎(リコーダー、テューバ他)から成る4人組。それぞれに作編曲家そして演奏家の顔を持つ4人がなぜかリコーダーを携えてお気楽に活動を始め早15年。1997年に1stアルバム「蛙のガリアルド」を発表。以後6枚のオリジナルアルバム、ベスト盤、ライブ盤、DVD、楽譜集、サウンドトラック、オムニバス参加など関連作品の数は50を超える(NHK教育TV「ピタゴラスイッチ」、映画「クイール」、映画「≒草間彌生~わたし大好き~」、NHKアニメ「アリソンとリリア」テーマ曲、NHKみんなのうた「PoPo Loouise」、映画「山形スクリーム」など)。2005年にカバーしたスター・ウォーズ「帝国のマーチ」のヒット以降、ウクレレや身近な楽器を使った脱力系バンドとしてテレビ、ラジオで取り上げられることもしばしば。共演したアーティストは春風亭昇太、あがた森魚、吉沢実、THE SUZUKI(鈴木慶一+鈴木博文)、劇団ダンダンブエノ、竹中直人、原マスミ、UA、湯川潮音、GOING UNDER GROUNDなど幅広い分野にわたる。結成15周年の今年はスクリーンデビューも果たし、さらに精力的に活躍中。