WACK所属バンド・くだらない1日に迫る|3rdアルバム「どいつもこいつも」インタビュー

2016年結成のロックバンド・くだらない1日が、3rdアルバム「どいつもこいつも」をリリースした。今作はエモ、オルタナティブ、激情ハードコアといったジャンルに影響を受けた、哀愁と荒々しさが融合するメロディ、ボーカル・高値の葛藤ややるせなさ、虚無感、頭を掻きむしりたくなるような憤りをヒリヒリと表現した歌詞が、リスナーの胸を打つ1枚となっている。

今作のリリースタイミングで、アイナ・ジ・エンド、BiSらが在籍する音楽事務所WACK所属バンドとなった彼ら。WACK加入に至った経緯、ニューアルバム制作の裏側などに紐解きながら、バンドの精神性や現在の心境をメンバー全員に聞いた。

取材・文 / 峯岸利恵撮影 / 稲垣ルリコ

相互作用がもたらした出会い

──くだらない1日は、2016年に結成されたバンドですが、現在は当時と同じメンバー編成ではないですよね?

高値ダイスケ(Vo, G) そうですね。福岡にいた頃、今とは別のメンバーでバンドを結成して、九州が怖くなって進学のタイミングで東京に来ました。そこからいろいろあって3年くらい1人でバンドを続けたんですけど、やっぱりちゃんとバンドをやりたいなと思って、2021年に河合さんと太陽くんに入ってもらいました。

くだらない1日

くだらない1日

河合(B) サポートで参加してたときから一緒に曲を作ったりアレンジしたりしてて。ライブの感じとか、スタイル的に全員メンバーのほうが合ってると思ったからそのまま加入しました。

──高値さんが河合さんと太陽さんをサポートメンバーに選んだ理由は?

高値 サポートメンバーを募集したときに、河合さんから「俺、暇なんだけど」と連絡をもらって、一緒にスタジオに入ったんです。そのときに感じた音のうるささやプレイスタイルが気に入って、ずっと一緒にやってもらってます。太陽くんは、前のサポートメンバーが辞めるタイミングで連絡したら、2秒でOKしてくれました。

太陽(G) くだらない1日とANORAK!とのスプリット盤(2021年発表のEP「Split」)に衝撃を受けて、自分もバンドをやりたいなと思い、soccer.というバンドを始めたんです。だから高値くんから連絡をもらったときはうれしかったです。

高値 太陽くんとの出会いはけっこう特殊で。渋谷のスタジオに入っていたときに、隣の部屋のバンドがめちゃくちゃいい音楽をやっているという話になったんですよ。後日、ライブに遊びに来てくれた太陽くんに声をかけてもらったことで、そのバンドがsoccer.だと発覚して。その後彼のライブを観て、カッコいいなと思って、誘いました。

──現状、ドラムは引き続きサポートメンバーなんですよね?

高値 はい。今は髙石晃太郎さんと、公募で来てくれた吉田隆大くんにお願いしています。今作のレコーディングも2人に叩いてもらっています。

太陽 吉田くんはR&Bやファンクが好きということもあって、僕にはあまりないルーツだったので一緒にやってみたかったんです。高石さんはプレイスタイルがすごく好きです。

河合 吉田くんはアプローチがエモやハードコア以外のところから来てるから、新しいことができそうだなと思った。ブラックミュージックのノリも自分は好きで、高石くんはパワーやスピードとかプレイスタイルと音への意識がもともとのくだらない1日にそのままフィットするだろうなと。

太陽(G)

太陽(G)

太陽(G)

太陽(G)

WACKに入って変わったこと

──新しいことと言えば、今作からWACKに所属することが決まりました。それはどのような流れで決まったんですか?

高値 社長の渡辺淳之介さんが僕らのライブを観に来て、そのときに「すごいよかったよ」と言ってくれたんです。でもその日のライブに対して、僕自身は全然納得がいってなかったので、怒りすぎて場の空気を険悪にして「帰れ」みたいな態度を明確に伝えてしまったから「ああ、もう終わったなあ。さようなら」と思ってたら、逆にそれを気に入ってくれたみたいで、所属につながった感じです。

河合 クオリティがどうとかじゃなくて、「やるせない」を間違えて飛ばして、そのまま最後の曲に入ったんだ。ライブが終わったあと、高値くんがキレてたような。

太陽 そうそう。褒めてもらったけど、僕らは「まあ現状こんな感じっすわ」って態度だった(笑)。でも、渡辺さんはバンドに対してすごく誠実で、僕らの要望や意図もすごく汲んでくれるんですよ。

河合 事務所に所属して一番変わったのは、今までふわふわしていた考え方を、自分たちでまとめなきゃいけなくなったということだと思う。高値くんは「ライブハウスにはムカつくやつが多いから出たくない」「DIYでやりたい」「有名になりたい」って、そういう真逆のことを延々と言い続けてたような気がする。それだと誰かと一緒に何かしようとしてもどうしていいかわからなくなるから、自分たちのスタンスをちゃんと確立させよう、というところに落ち着いたような。

高値 ああ……めちゃくちゃ恥ずかしい……。でもそういう矛盾は本当に感じ続けていたので、今回のWACK加入をきっかけに、考え方を変えていかなきゃなと思いました。

河合 別に変えなくていいとも思う。

河合(B)

河合(B)

河合(B)

河合(B)

めっちゃいい曲を尖った思考でブレずに作る

──くだらない1日の、現段階における方向性は?

高値 「めっちゃいい曲作る」ということですね。とても当たり前のことではあるんですけど、最近まではなぜかそこがブレていたんです。アルバムを作るにあたって、リリース日から逆算すると、この月とこの月までにはシングルを出さなきゃ……というスケジュールが立つんです。で、その期日に間に合わせるためにたくさん曲を作っては、ボツになって、喧嘩して、また作って、という繰り返しだったんです。その中で、メンバーと僕との考え方の乖離が生まれたり、僕1人が空回っていたりした時期があって……。今はそういうことが起きないように、落ち着いた状態で制作に集中していく、というのが目下の目標です。

太陽 僕ら3人ともインディペンデントな音楽が好きで始まってるし、そういう考え方をしてると思うんです。その上で、サブジャンルの音楽が好きだという前提は大事にしていきたいし、WACKと関わったからといって売れるために曲を作るんじゃなくて、自分たちが好きなものを表現していきたいよね、という再確認はメンバー内でしました。

河合 制作に集中するにしろ、売れるためにガンガン全国を回るにしろ、ジャンルとかは関係なく言ってることとやってることが噛み合ってさえすれば、バンドはちゃんと前向きに動いていくと思ってる。邦ロックっていうカテゴライズの中で売れそうなもの作りたいなら今のメンバーである必要性がまったくないし。