思春期に四六時中考えていたくだらないこと
──では、メジャーデビュー作となる「明日へ」について聞かせてください。昨年7月にミニアルバム「願い」をリリースされましたが、前作が弾き語りメインだったのに比べ、今作はしっかりアレンジされた楽曲が収録されていますね。
「願い」はオーディションの副賞みたいな感じだったし、作り方はかなり違っていると思います。今作ではプロデューサーの河野圭さんに作曲していただいた曲もあるし、新しく体験することが多かったので。
──1曲目の「ここにいること」は“この先も いつまでも 共に… 愛しい人よ”という歌詞が心に残るバラードです。琴音さんにとって思い入れのある楽曲だとか。
はい。この曲を作ろうと思ったのは音楽活動の境目みたいな時期だったんです。それまではずっと母親が付いてくれたんですが、「ビクターロック祭り」のあとはスタッフの方が付いてくれるようになってきて。弾き語りだけではなく、プロのギタリストの方、ピアニストの方と一緒にやることも増えて、ライブの形態も変わったんですよ。
──琴音さんにとってそれは大きな変化ですよね。
そうなんです。だから初めて作った曲と同じように、改めて母に対する感謝の気持ちを形にしたいと思ったのがきっかけですね。曲としては自分の思いだけではなくて、聴いてくれた方の解釈でいいと思っていて。家族、恋人、友人など、大切な人と重ねて聴いてもらえたらうれしいですね。
──ストリングスを取り入れたアレンジも印象的でした。
基本的にギターと歌だけでやってきたので全然違いますよね。いろいろな楽器が入ることで厚みが出てくるし、その点はありがたいなと思います。メジャーのアーティストとしてCDを出すのはこれが初めてだから、わからないことだったり、つかめていないことも多いんですけど。
──2曲目の「戯言~ひとりごと~」は、軽快なビートと“思い描くこと 命の限り そうすれば皆いつだって美しい”というメッセージ性のある歌詞が1つになった楽曲です。
この曲を書いたのは高校1年生のときですね。中学生から高校生になる頃って思春期というか、誰もがいろいろと物事を考える時期じゃないですか。自分もそうで、四六時中くだらないことを考えて自分の世界に入っていて(笑)。友達と話していても、会話の中の言葉が引っかかって、そのことについて考えているうちに話を聞いてなかったりすることもけっこうありました。「戯言~ひとりごと~」にも、そういうときに考えたことが出ていると思います。
──「戯言~ひとりごと~」という曲名ですが、自分の“戯言”が作品としてリリースされることによってたくさんの人たちに共有されるのはどんな気持ちですか?
自分が思っていることを曲にするのは、心の内をさらけ出すことなので最初は怖かったんです。知らない人にそれを聴いてもらうときに、「理解されないかも」「否定されたらどうしょう」という気持ちになってしまって。自分の曲を否定されることは、自分の考えや思いを否定されるようなものだから……。でも身内以外に「いいね」と言ってくださったり、「曲を聴いて元気をもらえた」と伝えてくださる方が増えてきて、「また作ってみようかな」という気持ちになりました。今はだいぶラクになりましたね。「共感しました」と言ってもらえると「こう思ってるのは自分だけじゃないんだな」って安心するので。
──続く「夢物語」は、ホーンをフィーチャーしたソウルフルなナンバーで、琴音さんの音楽の幅広さを感じさせる楽曲ですね。
実はこの曲、しばらく封印していたんです。一生懸命に作った楽曲でも、しばらく経つと「何か違うな」と思うものがいくつかあって。そのたびに「曲作りは難しいな」と感じていました。「夢物語」もそういう曲の1つで、最初はギター1本で歌っていたんですけど、「これってどうなんだろう?」と考えてしまって。今作に収録することになったとき「どういう感じになるのかな?」と心配していたんですけど、できあがっていく過程の中で、自分が「何か違う」と感じていた雰囲気が払拭されていました。もともと歌詞は「いいね」と言ってもらえていたので、いい形で発表できてよかったです。
──歌詞は音楽や歌という夢に対する気持ちを表現しているんですよね? かなり正直な思いを歌っているなと。
自分の希望だったり、「がんばっていかなくちゃ」みたいなことだったり、その当時に自分が考えていたことをそのまま書いた感じですね。確かに“正直”というのは当たっているかも(笑)。
──アーティストとして活動することに迷いはなかった?
たぶん迷ってなかったですね。これからどういう形で音楽をやっていくのかわからなかったし、「将来、私はどうなるんだろう?」というのはありましたけど、さっきもお話したように、ずっと音楽をやりたいと思っていたので。
──そして4曲目の「しののめ」は、作曲を河野圭さん、作詞を小松令奈さんが担当したアコースティックな雰囲気のミディアムチューンです。サビのファルセットがすごく印象的で、歌手としての琴音さんの魅力が伝わる曲だと感じました。
ありがとうございます。この曲は「自分のことを考えて作ってくださったんだな」という感じがすごくあって。自分ではこういう歌詞は書かないと思いますが、「ほかの人からは同じふうに見えてるんだな」とわかるというか。サビの最初の歌詞が“青春の入り口で”なんですよね。学生時代が限られた時間だというのは頭ではわかってるけど、実際にその中にいると「青春って何だろう?」とか「これは青春と呼べるのかな?」という気持ちもあって。でも外から見ると青春ど真ん中なんですよね。自分にとっても新しい気分になれる曲だし、気に入ってます。
社交性もさほどないですし(笑)
──今作のタイトルは「明日へ」ですが、メジャーデビューを迎えて、この先のビジョンも少しずつ見えているのでは?
どうなんでしょう? ただ、今思っているのは、自分が作った楽曲や自分の音楽の世界をしっかり伝えていきたいということです。“ありのまま”を大切にしたいという気持ちもあります。応援してくれる方々も「ありのままでいてくださいね」と言ってくださるので、それが自分に求められていることなのかなって。
──なるほど。琴音さんは自分の意見をしっかりと持っているし、それを言葉にするのもうまいですよね。ご自身ではどんな性格だと思いますか?
そうですね……社交性もさほどないですし(笑)、友人も限られた人たちと深く付き合うほうなんですよ。対バンするアーティストの方々も目上の方ばかりなので、ご挨拶しなくちゃいけないと思うんですけど、人見知りだから恥ずかしくて。そういう気持ちを抑えて話をすることで、少しずつ鍛えられてるのかなと。
──音楽を通していろんな人とつながり、意識が外に向かっているというか。
自分の場合、音楽ががんばるための拠り所になってるんですよ。例えば高校入試のときも「軽音楽部がある学校に入って、ちゃんと音楽活動をしたい」という一心で勉強していました。何かにつけてがんばる原動力になっているし、それは今も同じですね。
──最後に、最近聴いている音楽について教えてもらえますか?
弟も音楽が好きなんですが、今流行ってるものを教えてもらうこともあって、なんとなく「こういうものが好まれているんだな」とわかることが多いです(笑)。自分で聴くのはバラードだったり、うるさい感じの曲だったり、メロディの上がり下がりがなくてずっと穏やかにループしているような曲だったり、元気な感じの曲だったり、いろいろですね。
──好きな曲を見つけて「こういうテイストでやってみたい」と思ったりも?
ありますね。「こういう曲が作れたらいいな」という憧れはあるけど、なかなか難しくて。自分に共通するものがあれば、作る曲のなかに自然と入ってくると思いますけどね。
ツアー情報
- 琴音 1st note TOUR 2019 -明日へ-
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- 2019年3月17日(日) 愛知県 ell.FITS ALL
- 2019年3月24日(日) 大阪府 knave
- 2019年3月31日(日) 新潟県 アオーレ長岡 市民交流ホールA
- 2019年4月3日(水) 東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE