音楽ナタリー Power Push - 昆夏美

ミュージカル俳優とアーティスト 2つの顔持つ彼女の新境地

ひっくり返っちゃったらまた歌えばいい

──レコーディングのときは、意識して歌唱法を変えているんですか?

そうですね。感覚的になんですけど……脳が歌唱法を切り替えてる感じです。今ミュージカルで共演している方がこの間アニメで私の曲を聴いてくれたんですけど、「誰かと思った」っていう感想をくれて。歌い方を変えているので自分でも「そうでしょ?」って思うし、「ミュージカルと全然違うね」って言われるのはいいことかなって思います。

──今まで発表されてきた楽曲を聴いてみると、1曲ごとに違った歌い方をされていますよね。「ISOtone」はかなり力強い歌い方で。

「ISOtone」はめちゃくちゃ時間を使ってレコーディングさせてもらいました。「何百回歌ったんじゃないか?」っていうくらい。これまでシングルを4作出させてもらっているんですけど、全部違ったジャンルの曲を歌わせてもらっているんです。中でも今回の「ISOtone」はロック調で、自分が慣れ親しんでいないジャンルだったんですけど……デモを聴いたとき「めっちゃいい曲だな」って感じたから、曲に負けないような歌い方をしなきゃって思いました。オケの力強さに負けて歌唱がしょぼかったらいやだし、楽曲に見合った自分の声を出すことを意識してレコーディングしましたね。

──レコーディングではなぜそれほどテイクを重ねたんですか?

昆夏美

自分がこれまで持っていなかった表現を徐々に引き出していく作業が、そのままテイクの数になっていると思います。「こうじゃない」「もっとこうしたほうがい」なんて言いながらディレクターとどんどんチャレンジを重ねていったので、1テイク目と最後のテイクでは歌い方が全然違ったと思います。

──そうだったんですね。

レコーディング中は「“ロック歌唱”ってなんだろう?」って、ずっと考えてました。「この激しい曲に合う歌い方ってどういうものだろう?」って。そうしたらディレクターに「きれいに歌おうとしなくていい。守りに入らないで、吐き出してくれ」って言われたんです。ミュージカルでの歌い方だと「声がひっくり返らないように」って1回頭で考えて、喉と体をコントロールしちゃうんですね。特に「ISOtone」は高音が続く歌だし、普段の私だったら「1曲歌い切るにはこの力の配分で……」とか考えちゃうんですけど、そんなことはどうでもいいんだ、と。「もしひっくり返っちゃったらまた歌えばいいんだ」って思えたことが、私の中では新しい発想でしたね。

──昆さんが思うアニソンの面白味って、どういったところでしょう?

アニメ作品の世界観に楽曲が寄り添っているところですね。音楽で作品の雰囲気作りを手伝えるところが素敵だなって思います。自分が歌った歌とアニメ作品の雰囲気がマッチしているのを感じたとき、「ああ、これが主題歌を歌うってことなんだなあ」ってうれしくなります。

新しい“学校”に入った“転校生”

──8月28日には「Animelo Summer Live 2015 -THE GATE-」に出演されるんですよね。こちらへ向けての意気込みを聞かせてもらえますか?

「アニサマ」は自分がいまだかつて経験したことない……約3万人の前で歌うんですよね。信じられない。過去の「アニサマ」の映像を観ると、もう全方角に人がいるので自分が怖気付かないか心配です(笑)。当日は違った曲調の2曲を歌わせてもらうので、昆夏美はいろんなテイストの曲を歌えるんだっていうところを見せないと。私の歌で聴いた人の頭の中にアニメの映像が出てきてくれたらうれしいなって思います。

──こういったライブイベントに出演される際のご自身の立ち位置って、どのように捉えてますか?

昆夏美

ほかのアニソン歌手さんと一緒に出るイベントってあまり経験させてもらったことがないんですが、いざ経験をすると、やはり“転校生”みたいな感覚はありますね。ほかの場所で生活してたけど、新しい“学校”に入って「自分は溶け込めるのかな?」って考えたり。やっぱり緊張もありますしね。共演の歌手の方は皆さん優しいので声をかけてくださったりするんですけど「自分はアニソン歌手としてどれだけ認識されてるのかな?」とか思ってしまうので、「もっと認識されたいな」っていう意欲がすごく湧きますね。

──そうなんですね。先ほど「自分の色ってなんだろう?」という言葉もありましたが、リリースを重ねるうちに「昆夏美」のアーティスト像が自分でわかってきた感覚ってありますか?

どうなんだろう。どんな歌も歌えるようになりたいっていう欲張りな発想なんですが「昆夏美っていったらこんなイメージだよね」って思われるようにはなりたくなくて。だから今回「ISOtone」が発表されて「昆夏美ってこういう歌も歌えるんだ」って反応をもらったときは、「よしよし」って思いました(笑)。これから活動していくにあたって、自分の歌の引き出しが増えていけばいいなって思います。極端な話、演歌を歌って「昆夏美って演歌も歌えるんだ」って思ってもらえるような……皆様に新しい発見をさせ続けていきたいなって思います。

──どのような存在になっていきたいか、今後のビジョンはありますか?

どんな形であれ、歌を歌っていたいです。たとえばドラマや映画の主題歌だったり……もっといろんな形で皆さんの前で表現をしたいっていう欲が年々増してきているんです。デビューしたときはミュージカルしか知らないところからスタートしてますが、アーティストとしてデビューさせていただいてもう3年目だし、もっと貪欲に表現していきたいなって思います。

──今、具体的に挑戦してみたいことってありますか?

まだ単独ライブをやったことがないんです。曲もだんだん増えてきてますし……「昆夏美」として歌える機会がもっと増えればいいなって思っています。

ニューシングル「ISOtone」2015年8月5日発売 / TOHO animation RECORDS
初回限定アニメ盤 [CD+DVD] 1836円 / THCS-60057 / Amazon.co.jp
初回限定アーティスト盤 [CD+DVD] 1620円 THCS-60058 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 1296円 / THCS-60059 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. ISOtone
  2. Sleep without a memory
  3. Despair Syndrome
  4. ISOtone(Instrumental)
  5. Sleep without a memory(Instrumental)
  6. Despair Syndrome(Instrumental)
初回限定アニメ盤DVD収録内容
  • ノンクレジット・オープニング
初回限定アーティスト盤DVD収録内容
  • 「ISOtone」ミュージックビデオ
昆夏美(コンナツミ)

昆夏美1991年6月28日生まれのミュージカル俳優、アーティスト。2011年9月ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のヒロイン・ジュリエット役でプロデビュー。その後も「ハムレット」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」など、多数のミュージカル作品に出演する。2013年4月にテレビアニメ「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」のオープニングテーマ「私は想像する」でアーティストデビュー。その後も「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」第2期オープニングテーマ「PROMPT」、テレビアニメ「一週間フレンズ。」のオープニングテーマ「虹のかけら」をシングルリリース。2015年8月にテレビアニメ「ケイオスドラゴン 赤竜戦役」のオープニングテーマである「ISOtone」を表題曲とした作品を4thシングルとして発表する。