KK|仲間たちと5年ぶりにアルバムを作った理由

前略Pが引き出すKKの新しい一面

──HeavenzさんやkoyoriさんはKK名義の前作「心音」(2014年9月発売)でも書き下ろし曲を提供していた作家さんです。

Heavenzさんは今回もしっかり感情を乗せた曲を作ってくれました。僕から提示させてもらったテーマを上手に創作につなげてくれたと思います。それに、「心音」に収録されている「Velvet Tread」という曲のイントロのフレーズが入っていたり、すごく愛のある曲を提供していただきました。koyoriさんはKKの世界に寄り添いながらも、自分自身の音楽の世界を混ぜてくれたと思います。koyoriさんにしかできないギターソロもそうですし、歌詞に関しては「上北健は書かないだろうな」というフレーズを入れてくれて。歌っているときはすごく感情を揺さぶられました。

──「noir」の作曲を手がけた前略Pさんは「心音」には参加していないクリエイターですよね?

作詞作曲のクレジットには入っていませんが、彼も「心音」の制作チームの一員でした。はりーPとタッグを組んで、主に編曲とプログラミングを担当してもらいました。今回のアルバムでは、ぜひ前略Pの楽曲をトラックリストに入れたいと思って。すごくエッジのある曲を作ってくれて、アルバムの真ん中、折り返しに相応しい曲だと感じて7曲目に収録することにしました。こういうテイストの曲はこれまでなかったので、KKとして新しい一面を引き出してもらえたと思います。

上北健が歌えないこと

──アルバムにはカバー曲も収録されていますが、オリジナル曲とカバー曲が違和感なく共存している印象を持ちました。

そう感じてもらえてよかったです。リスナーのみんながどういう曲を求めているかについては、僕以上にチームの皆さんが考えてくれて。彼らの意見を参考にカバーする楽曲を選びました。コトリンゴさんの「誰か私を」は、今回のアルバムで意識していた“上北健が歌えないこと”とリンクしているんです。とても素晴らしい曲ですし、KKだからこそ歌える曲だなと思って選びました。

──amazarashiの「季節は次々死んでいく」、BUMP OF CHICKENの「Ever lasting lie」はどういった理由で選んだんですか?

2組とも僕自身が以前から聴いていたアーティストですし、リスナーの皆さんの中には“KKのイメージに合う”と思ってくれる人がいるであろう方々だと思います。カバーに関しては自分で縛りを設けたくなかったので、チームのみんなと話している中で出た曲から自由に選びました。BUMP OF CHICKENには有名な曲がたくさんありますが、はりーPと僕の中で「Ever lasting lie」がすごくしっくりきたんです。僕自身も彼らのライブで聴いて印象に残っている曲だし、この曲を歌わせてもらえたのはうれしかったですね。

──なるほど。ちなみに「世の霧を抱きよせ」というアルバムのタイトルはどうやって決めたんでしょうか?

アルバム制作の終盤にkoyoriさんと話をする機会があって、そこでいろいろなインスピレーションをもらって10個ほどアルバムタイトルの候補を考えました。その10個のタイトルを制作陣全員に選んでもらったら、全員の票が入ったのが「世の霧を抱きよせ」だったんです。

──タイトルを決めることに関してもチーム全員で決めたんですね。

はい。自分の考えを押し付けるのではなくて、みんなで考えながら作ったアルバムなので、タイトルもみんなで決めようと思って。タイトルのテーマとしては最初に話した“この5年間の変化”を意識しています。

KKから上北健への提言

──1月から2月にかけてレコ発ツアー「RUTSUBO」が開催されます。KKとしてのツアーはひさしぶりですが、どんな内容になりそうですか?

今回のアルバム、5年前のアルバム、“歌ってみた”で聴いてもらった曲の中から平等に選曲しようと思っています。テーマとしては“楽しむことを謳歌してほしい”ですね。僕自身も楽しんでやりたいし、「思いきり楽しむことを忘れていませんか? 楽しむことを怖がっていませんか?」というメッセージを伝えたいです。それは今回のアルバムのコンセプトにもつながっているし、KKから上北健への提言でもある。KKとしてステージに上がってライブを思いきり楽しむことで、上北健に「君はこういうライブができるのか?」と問いたいし、終演後のお客さんの顔や反応を(彼にも)見せたい。

──KKの活動を思い切り楽しむことで、上北健にもいい影響を与えたい?

そこが狙いでもあります。5年の歳月を経てKKとしてなぜアルバムをリリースするのか、という問いに対する答えがそこにある。

──KKとしての活動は今後どうなるんでしょうか?

これからチームのみんなと話そうと思っています。ミーティングの予定が決まっているわけでもなくて、ただ僕が話したいと思ってるだけなんですけど。アルバムのタイトルも話し合って決めるくらいですし、誠心誠意「KKはどうあるべきか?」という問いに答えながら制作できたことが自分の中でとても大きかったんです。いいメンバーだなと改めて感じたし、とにかく楽しかった。いろいろとインスピレーションをもらえて、吸収できる部分もありました。

──リスナーの皆さんからのリアクションの大きさも、KKの活動を続ける動機になっていますか?

そうですね。リスナーのみんなも5年前のことを振り返ってくれただろうし、実際、KKとしてアルバムリリースを発表したら反応がたくさんあって。「KKの活動に対して、これだけの声をもらえるんだな」と背中を押してもらいました。

ライブ情報

KK 2nd Album レコ発TOUR 2020 -RUTSUBO-
  • 2020年1月12日(日)中国 上海 万代南梦宫上海文化中心-未来剧场
  • 2020年1月18日(土)韓国 ソウル MUV HALL
  • 2020年1月19日(日)韓国 ソウル MUV HALL
  • 2020年2月1日(土)大阪府 BananaHall
  • 2020年2月2日(日)東京都 下北沢GARDEN