清竜人×横山由依インタビュー|新曲「離れられない」とW主演ドラマで描かれる、ロマンチックで甘美な世界観 (2/2)

改めて追求した、「痛いよ」のようなバラード

──「離れられない」は清さんの中でかなりの自信作ということですが、どういった部分に手応えを感じたんですか?

 2010年にリリースした「痛いよ」というバラードを清竜人の代表曲と言っていただくことが多いんですが、僕は基本的に似たタイプの曲を作りたくない性分でして。これまで「痛いよ」みたいなストレートなバラードはそれ以降避けてきたんですよ。ある作品が評価されたのであれば、それをスケールアップさせたり、自分の武器として伸ばしたりしていきながらアーティスト性を育んでいくのが合理的だと思うんですけど、自分は今までそうしてこなかった。だけど、昨年ソニー・ミュージックレーベルズに移籍し、デビュー時のスタッフと再会して、原点回帰的な意味も込めて自分の活動と改めて向き合ったんです。そうしていくうちに、「自分の中でもっとも評価された作品に向き合うというのは、建設的だし健全なことなんじゃないか」と思うようになって。もちろん過去の作品をそのままなぞるようなことはしたくないですけど、「痛いよ」のような素直でオーセンティックなバラードを改めて追求しても面白いんじゃないかなと。そういう思いが「離れられない」で実を結んだのかなと思っています。

──「てらいのないバラードを作りたい」という思いがあって、それに成功したという手応えを感じていたんですね。曲中には、「言葉だけじゃ 全てを伝えられない 僕を許してくれるかい」というフレーズなど、ドラマの中で描かれているキャラクターの心情とリンクしている部分もあります。

 そうですね。根本さんが歌詞からいろいろとピックアップしてくれて。歌詞を広げたようなセリフ回しもあったりします。

清竜人

清竜人

──曲のタイトルは「離れられない」だけど、ドラマの最後のシーンのセリフは「離れたくない」なのがロマンチックですよね。いろんな表現の仕方でお互いの感情をやりとりして、最終的に出てくる言葉が「離れたくない」という。

横山 「お互い傷付き傷付け合いながらも、なんで一緒にいるのか」ということをすごく考えさせられる脚本ですよね。言葉にはできないけど、なぜか一緒にいたい。離れられない。そういう存在っているんだな、というのを今回のドラマで感じることができました。

“監督・清竜人”のこだわり

──お互いに心に残ったセリフや印象的なシーンを挙げるとしたらどこですか?

 4話の横山さんの長台詞ですね。そのシーンでBGMが流れるんですけど、BGM、横山さんの演技、映像のすべてがマッチしているなと思います。セリフの内容も本当に彼女の内側から出てきたような言葉になっていて、あのシーンはとても印象的ですね。

横山 私は主人公のことを「よくトイレに立つ人だな」と思っていて(笑)。全5話の中で2回、トイレに立つシーンが出てくるんですよ。「照れ隠しなんだろうな」と思うんですけど、そこがすごく面白いというか。「トイレに行く」って普通はちょっと言いづらいことなのに、引っ込み思案なわりにそれはすんなり言えるんだっていう(笑)。「じゃあ自分の気持ちも素直に言えばいいのに」と思ったりして(笑)。でもそういうところが、根本さんが描くキャラクターのキュートな部分だなと思って、好きですね。

──確かにトイレに立つという行為を印象的なシーンとして使うのは特徴的かもしれないですね。

横山 そうですよね。主人公的には、その場の空気を変えたいという思いもあるのかな。そういう言動のギャップがキュートだなと思っていて、本来はもっと砕けた一面も持ってるんじゃないかなとか、そういうイメージも膨らみました。

横山由依

横山由依

──そのあたりは根本さんの脚本はもちろん、清竜人監督の采配でもあるわけですよね。清さんは、監督としてどういったところにこだわりましたか?

 編集ですね。もちろん現場での撮影も事前に打ち合わせを重ねましたけど、いざ撮影してみるとけっこう過酷で。もともと想定していたカットがいくつか撮れなかったんですよ。「このシーンは、本当はもっといろんなアングルで撮りたかったな」ということがけっこうあって。でも、だからこそ編集作業にとことんこだわることで、ある素材を最大限生かせたなという自負はあります。1カット違うだけでロマンチックな空気が一気に乱れてしまうので、すごく慎重にシーンをつないでいって。撮影以上に編集作業に時間をかけました。

──横山さんから見た“監督・清竜人”はいかがでしたか?

横山 カット割りの打ち合わせを現場でされているところも見ていたんですけど、やっぱり自分の作品にものすごく強いこだわりを持っていらっしゃる方だなと思いました。時間が限られている中で、何テイクも通して撮影してくださって。その回ごとに新鮮にお芝居ができましたね。どの素材をどのシーンで使うのかは監督にお任せでしたけど、何回もトライさせてもらえたというのは、経験としてすごく大切なことだったのかなと思っています。

──これからドラマを観る人に見どころを伝えるとしたら?

横山 全話観ていただいて、そのあとにミュージックビデオを観てもらうのが理想なので、とにかくまずは1話を観てください(笑)。

 MVも僕が監督したんですが、ドラマの延長線上にある作品なので、すべて観ていただくとより一層感動してもらえるんじゃないかと思います。合計30分弱の中で、ロマンチックな世界観や恋愛が持つ美しさを余すことなく表現することができたと思っているので、曲も映像も楽しんでもらえたらうれしいです。

どんな形でも歌い続けたい

──最後に、せっかくの機会なのでお互い聞いてみたいことなどありますか?

横山 さっきスタッフさんが「清さんはごはんを食べない」とおっしゃっていたんですけど、本当に食べないんですか......?

 食べますよ(笑)。食べるけど撮影のときはあんまり食べないですね。

横山 そうなんですね! カロリーメイトしか食べてないとお聞きしたので、心配だったんです。好きな食べ物はなんですか?

 寿司ですね。

横山 あ、思ったより普通ですね(笑)。

左から清竜人、横山由依。

左から清竜人、横山由依。

 (笑)。横山さんは、「歌を歌うのが好き」とおっしゃっていて、それがちょっと意外だったんですよね。アイドルグループを卒業してからソロ歌手として活動するのを敬遠する方もいるじゃないですか。やっぱりこれからも歌は歌っていきたいんですか?

横山 私はもともと歌手になりたくて芸能界を志したので、AKB48を卒業しても、やっぱり歌はなんらかの形で続けたいなと思っていて。歌手として続けるのか、ミュージカルのような形なのかはわからないですけど。根本さんとご一緒した舞台でも歌わせていただいたんですが、やっぱり教えてくれる人が変わるだけで、歌い方も変わったりするので、奥が深いなって。清さんもいろんな方に楽曲提供されてますもんね......?

 してますよ(笑)。

横山 機会があればお願いします(笑)。

 MVまで含めたトータルコーディネート的なことをやらせてもらえたら面白そうですね。

横山 ぜひお願いします!

 あと次こそは任侠ものも(笑)。関西弁もしゃべれるし、絶対似合うと思いますよ(笑)。

清竜人ツアー情報

清 竜人 弾き語りTOUR 2022

  • 2022年4月8日(金)愛知県 千種文化小劇場
  • 2022年4月10日(日)大阪府 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
  • 2022年4月16日(土)東京都 草月ホール

チケット一般販売(先着):2022年3月9日(水)20:00~各公演前日23:59まで

プロフィール

清竜人(キヨシリュウジン)

1989年生まれ、大阪府出身のシンガーソングライター。15歳でギターを手にし、作曲を始める。16歳のときには早くも自主制作盤を発表し、そのクオリティの高さが音楽関係者の間で話題となった。映画「僕の彼女はサイボーグ」への挿入歌提供を経て、2009年3月にシングル「Morning Sun」でメジャーデビュー。その後もシングル、アルバムを精力的にリリースし、2014年9月から2017年6月にかけては“一夫多妻制”アイドルユニット・清 竜人25として活動。およそ3年におよぶプロジェクトで6枚のシングルと2枚のアルバム、合計31曲のオリジナルソングを作り上げた。清 竜人25と並行し、2016年12月に立ち上げたプロジェクト・TOWNでは「演者と観客との境界線を取り払う」というコンセプトのもと、公募によるメンバーや観客を巻き込んでのライブを敢行し、合計12回のライブをもって2017年7月に解散。同年12月にピアノ弾き語りツアー「KIYOSHI RYUJIN SOLO TOUR」でソロ活動を再開した。2019年5月、新元号「令和」が施行される1日にニューアルバム「REIWA」をリリース。2021年3月にソニー・ミュージックレーベルズへ移籍し、11月にテレビ東京系ドラマ「スナック キズツキ」のオープニングテーマ「コンサートホール」を配信リリースした。2022年2月に新曲「離れられない」を発表。同楽曲を原案とした、ソーシャルドラマYouTubeチャンネル「みせたいすがた」の作品「HANARE RARENAI」では主演および監督を務めた。

横山由依(ヨコヤマユイ)

1992年12月8日生まれ、京都府出身。2009年にAKB48の9期生オーディションに合格。2015年12月から2019年3月まで約3年4カ月にわたり48グループの2代目総監督を務めたのち、2021年12月9日の公演をもって同グループを卒業した。2019年に舞台「仁義なき戦い~彼女(おんな)たちの死闘篇~」にて岡田奈々(AKB48 / STU48)とダブルキャストを担当。2021年に根本宗子が作・演出・企画を手がけるミュージカル「Cape jasmine」に出演するなど、活動の幅を広げている。2022年2月にソーシャルドラマYouTubeチャンネル「みせたいすがた」で公開された、清竜人の楽曲「離れられない」を原案としたドラマ「HANARE RARENAI」では、清とともにダブル主演を飾った。