音楽ナタリー Power Push - 岸谷香
音楽家として、母として すべてに“よくばる”彼女の「DREAM」
感じたまま歌わなきゃ損だし、やりたいことをやらないと損!
──音楽の楽しさを思い出したこと、歌いたいことがはっきりしたこと、子育てが落ち着いたこと、それらがすべてそろって活動を再開されたわけですね。ただ「岸谷さんの中で音楽が満ちてくるまでに約20年かかった」と言うこともできると思いますが……。
ねえ。恐ろしい!(笑)
──そして生まれたのが前作「Romantic Warriors」であり今作の「DREAM」ということなのでしょうか?
今回の「DREAM」は「Romantic Warriors」以上にまた「よし、新曲を書こう!」という気持ちで取り組めた感じなんですよね。
──その「DREAM」ですが本当に歌詞がストレート。「さぁ出発だ 列車に飛び乗れ どこからだって何歳だって 関係ないでしょう?」と、まさに岸谷さんが今、歌いたいことがそのまま表現されているなと思いました。
そうですね。私、実は歌詞を書くのがあまり得意じゃないと思っているので、なるべくなら逃げたいところなんですけど「今回は自分で書かなきゃいけない」とスタッフたちに説得されまして(笑)。その結果完成したのがこの歌詞なんです。
──説得の上、生まれたのがこのストレートな言葉っていうのも面白いですね(笑)。
なんか最近だんだん自分自身ストレートになっているというか。子供が大きくなってきて、一緒にいろいろなものを見たり、旅行に行ったりする機会が増えてきたんですけど、子供に見せるつもりだったのに自分が感激しちゃうことが多いんですよ。
──お子さんと一緒だったロンドン旅行中にミュージカルを観てボロボロ泣いたんですよね(笑)。(参照:ただいま~!|岸谷香 オフィシャルブログ powered by Ameba)
よくご存じで(笑)。最近そうやって「『わーっ!』とか『へーっ!』ってなることって、まだまだたくさんあるんだな」って気付くことが多いんですよ。「これを知らずに死んだらもったいない!」と思うようなことがたくさんある。音楽についてだって、私は当然そのすべてを知っているわけではない。プリプリをやっていた当時であれば、バンドも楽しかったものの、ほかのメンバーがいる以上「今度はちょっとプレイヤーを変えてやってみようか?」というわけにはいかなかったわけですから(笑)。それで今、ピアノ弾き語りライブとか、いろいろやってみているんです。ファンの人たちに誠実でさえあれば、ちょっとヘタでもいいじゃん!っていう開き直りっていうんですかね? これから死ぬまでにあと何枚アルバムが作れるかわからないし、それなら感じたまま歌わなきゃ損だし、やりたいことをやらないと損だ!って思うようになってるんですよね。
「これが自由ってことなんだな!」
──そのやりたいことをやろうという思いに駆られた結果、「DREAM」でギターはもちろん、ベースやキーボードも自分でプレイすることになったのでしょうか?
「せっかくこんな気持ちになってるんだから自分でやっちゃおう!」って(笑)。ドラムも初めてDJの方に打ち込みをお願いしましたし。
──DJと2人での楽曲制作はいかがでした?
「これが自由ってことなんだな!」と痛感しました。
──「自由」ですか?
ええ。不自由から始まって自由を得た感じでしたね。でも、それはいつもそうなのかも。プリプリをやっていたときもバンドであるということが制約になっていて、それが窮屈で窮屈で仕方がないと感じていたのに、いざなくなってみると「バンドってなんてよかったんだろう」と思いましたし。そのバンドゆえの不自由を過去に感じていたから、今のレコーディングスタイルに自由を感じているのかもしれないし。ただそれだけに、おかげさまで今回はすごく楽しくレコーディングできました。歌詞についても本当に「感じたまま歌わなきゃ損」というか、今の私らしく自由に書けたなと思いますし。
──「DREAM」の歌詞では「嘘と悪口に泣いたTeenage」「どこかモヤモヤTwenties」と、10代、20代、30代、40代、それぞれの世代のことが象徴的に歌われていますよね。
私が歌詞を書くときは、メロディが何を呼んでいるか、呼んでいる言葉を探す作業をするんです。この曲のAメロでは、時代を追っていく感じがすごくしたんですよ。私は10代、20代、30代を経てきて、40代がもうすぐ終わろうとしているからうまく書けるかも、と思ったんです。ただ「聴いてくださる方全員が共感できなくてもいい」とも思っていて。今まさに「嘘と悪口に泣い」ている10代の子や「どこかモヤモヤ」している20代の子には、自分の現状ってもしかしたらちゃんと把握することはできないかもしれない。でもきっと40代や50代の人なら、10代や20代の頃のそういう思いがわかるだろうから、それならそれでいいや!って。だから苦手ではあるし、周りに言われたから始めたものではあるんですけど楽しく書くことができました。
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収録曲
- DREAM
[作詞・作曲:岸谷香] - VANITY FAIR
[作詞:木村ウニ(蜜) / 作曲:岸谷香] - 窓打つ雨(Live at Billboard Live TOKYO)
[作詞:小西康陽 / 作曲:奥居香]
- KAORI PARADISE -SINGING IN THE 奄美パーク-
- 2015年8月8日(土)鹿児島県 奄美パーク内 奄美の郷イベント広場
- KAORI KISHITANI 48th SHOUT!-レッツゴー!!年女-
- 2015年9月19日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2015年9月20日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
- 2015年9月22日(火・祝)大阪府 Zepp Namba
- 2015年9月23日(水・祝)愛知県 Zepp Nagoya
- 2015年9月26日(土)宮城県 Rensa
- 2015年9月27日(日)宮城県 Rensa
- 2015年10月3日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2015年10月11日(日)富山県 MAIRO
- 2015年10月12日(月・祝)新潟県 新潟LOTS
- 2015年10月17日(土)東京都 Zepp Tokyo
岸谷香(キシタニカオリ)
1967年生まれのボーカリスト、シンガーソングライター。1986年にガールズバンド・プリンセス プリンセスのボーカリスト&ギタリストとしてデビューし「Diamonds」「世界でいちばん熱い夏」などビッグヒットを連発。それらの作曲家としても多大な注目を集める。1996年のバンド解散後、俳優・岸谷五朗と結婚。しばしの休養ののち、シングル「ハッピーマン」でソロデビューを果たす。以来出産を機にそれまでの奥居香から岸谷香に名義を改めつつ、コンスタントにリリースを重ね、また他アーティストへの楽曲提供、プロデュースワークなどを行うも、2006年前後より育児中心の生活にシフト。以来ソロライブシリーズ「準備体操ライブ ~さびないようにね!~」を不定期に展開していたが、2011年、東日本大震災復興支援のためにプリンセス プリンセスを期間限定で復活。東京・東京ドーム公演を開催し、また2012年末の「NHK紅白歌合戦」にバンド名義で出演した。そして2014年5月にソロ名義のベストアルバム「The Best and More」を、6月には約6年ぶりとなるシングル「Romantic Warriors」を発表。2015年6月には復帰後2作目となる10thソロシングル「DREAM」をリリースした。