ナタリー PowerPush - KING BROTHERS
気合いで鳴らす真実のロック! 4人編成初のアルバム完成
ケイゾウ(Vo,G)、マーヤ(G,Screaming)のツートップにシンノスケ(B)、タイチ(Dr)を加え4人編成となったKING BROTHERSが、6年ぶりのフルアルバム「THE FIRST RAYS OF THE NEW RISING SUN」を完成させた。「太陽が昇る瞬間の最初の閃光」というタイトルどおり、このアルバムからは新しいKING BROTHERSの衝動、そこから生まれる強靭なグルーヴがダイレクトに伝わってくる。
THE WHITE STRIPES、THE STROKESといった海外のビッグネームからリスペクトされ、毛皮のマリーズ、THE BAWDIESなどにも影響を与え──みたいな話はとりあえずどうでもいい。まずはこのレコードに込められたすさまじいエネルギーをがっちりと感じてほしい。ブルース、ロックンロール、パンク、オルタナティブを完璧に血肉化し、過剰なまでのテンションと気合いで放つ本物のロックミュージック。ぶっ飛ぶよ、ホントに。
取材・文/森朋之 インタビュー撮影/中西求
普通のバンドとは違う要求があるんです
──前作「BLUES」から6年ぶりの新作となるわけですが、ライブ活動はずっと続いていたにもかかわらず、6年という時間がかかった理由は何だったんですか?
ケイゾウ(Vo,G) KING BROTHERSはもともとベースレスのスリーピースだったんですけど、そこにベースが入ってきて。それを完全に乗り切れるようにするのに、それだけ時間がかかりましたね。
──今の編成になったのは、2006年くらいですよね……?
ケイゾウ それくらいやったっけ?
シンノスケ(B) 3年前くらいですからね。
ケイゾウ 正式にメンバーになったのは3年くらい前なんですけど、それより前からサポートで入ってもらって、トレーニングしてたというか。
──タイチさんは以前、バンド加入の誘いを断ったことがあったとか。
タイチ(Dr) 自分は当時就職して普通の仕事をしようと思ってたんですよね。スタジオでセッションさせてもらったときは面白いなと思ったんですけど、ライブやら何やら、どんどん予定が入ってくるのがちょっと怖かったというか。当時そこまで決められなかったんですよね。
──それで就職したんですか?
タイチ いや、結局決まらず。で、何年後かにまた声をかけてもらって、そのときは「ぜひ」って返事させてもらいました。
マーヤ(G,Screaming) 最初から「レベルが高いな」って思ってましたね。すごい安定してるし、上手な人やなって。これまでもKING BROTHERSはたくさんのすごいドラマーと演ってきましたけど。
──KING BROTHERSのドラマーに求められるのは、どんなことなんですか?
マーヤ やっぱりね、普通のバンドとは違う要求があるんですよ。まずはジャーン! とスタートしてから、それが何曲続くかはわからんけど、最初のテンションで最後まで叩き続けられるかどうかってことですよね。いきなりは無理だとしても、それをやろうとするかどうかで“ふるい”にかけるところはあると思う。テクニック以前に、それができるかどうかが重要。まあ、それは最初には言わないですけどね。そこで「そんなん無理です」って断られることもあるので。
──そうかもしれないですね、ホントに。
マーヤ とにかくテンションを維持し続けるっていうのはすごく大事。あとね、KING BROTHERSは8ビートよりも、16ビートを主体にして曲を作ってるんですよ。そこは他のロックバンドとは違うだろうし、8ビートだけの人では務まらないんですよね。そういうところでいうと、(タイチは)すごく16ビートがうまい人やったから。でも逆にロックに関してはまだ勉強中なんですけどね。16は大好きなんやけど、ロックってものをほとんど通ってきてないので。
──え、そうなんですか?
タイチ そうですね。最初にセッションさせてもらったときも、KING BROTHERSがどういうバンドなのかぜんぜんわかってなくて。ライブを1回見ただけだったんですよ。
──ちなみに、そのときの印象はどうだったんですか?
タイチ そのときですか? いやー、スーツ着てはるねんなあって。
ケイゾウ ハハハハハ。
タイチ あと、「ものすごいロックやで」っていう話は伺ってたので。面白かったですけどね。そういうバンドでドラムをやることが、今までなかったので。
大阪に来た日に財布を盗られてそのまま加入
──シンノスケさんはもともと、博多にいたんですよね?
シンノスケ そうです。福岡でバンドをやってたんですけど、KING BROTHERSとは対バンもさせてもらってて、とにかく大好きやったんですよ。ライブを見て衝撃も受けてたし。(KING BROTHERSに加入する)きっかけとしては、福岡でやってたバンドができなくなって、すぐにケイゾウ君に電話して。
ケイゾウ いきなり電話がかかってきてね、「何でもいいから、KING BROTHERSに入れてくれ」って言われたんですよね(笑)。もともとベースレスやったんで、「ベースやったら、いつでも空いてるよ」って言って、じゃあセッションしてみようかって。で、大阪のスタジオに来てもらったんですけど、初日に財布を盗られてしまったんですよね。
──その話、どこかで読んだ気がしますけど、実話なんですね。
シンノスケ いや、ホンマなんですよ。大阪でもわりとガラの悪い地域やったんですけど、たまたま隣でボクシングの試合をやってて、大阪のヤンキーが集結してたんですよ。気づいたら、なけなしの金をぜんぶ盗まれてて、帰れなくなったんですよね。しょうがないから、関西で仕事を探して(笑)。
──すごいっすね、それ。大阪のどこですか?
シンノスケ 大阪の大正区ってところなんですけどね。まあ、なかなかのもんですわ。
──(笑)。もともと大好きだったKING BROTHERSに入ってみて、どうでした?
シンノスケ いや、日々修行です。
タイチ ずっと練習してますからね、ホンマに。
シンノスケ 日々チャレンジですわ。服装も(笑)。
ケイゾウ そこは飛びぬけてますからね。普段着のほうがブッ飛んでますよ。
シンノスケ 今がいちばん地味です。
ケイゾウ 全身ピンクだったりしますから。
CD収録曲
- ACTION!!!!
- GET AWAY
- ロマンチスト
- D♭のパレード
- 楽園
- TFROTNRS
- XXXXX
- 気が狂いそう
- DOOR
- 死神のビート
- やりきれない
- L.O.V.E.
- スローライト
KING BROTHERS(きんぐぶらざーず)
ケイゾウ(Vo,G)、マーヤ(G,Screaming)、シンノスケ(B)、タイチ(Dr)からなる4人組ロックバンド。ケイゾウが中心となり、1998年に兵庫県西宮市で結成。ベースレスというスタイルながら1999年には10代でアルバムを米国にてリリースし、海外でのライブツアーやジョン・スペンサーの前座を務めるなど、精力的な活動を行う。2001年にはメジャー進出を果たすも、2006年に一時活動休止。2007年から新メンバーにシンノスケ、タイチを加え活動を再開。