音楽ナタリー PowerPush - キバオブアキバ
“ヲタイリッシュ・デス・ポップ”の真意
ふとし、沖縄で断捨離
──楽曲制作はどのように進めたんですか?
ふとし まず「僕らの考えた最強のメタル」みたいなのを好きに出して、それをデモに起こしてレコーディングに入るだけです。再現性を考えずに作ってる部分も多いから演奏するには難解なフレーズもあったよね。
みつる うん、ドラムのVAVAさんには無茶ぶりして、「叩けへんかったら辞めてもらうで」くらいのこと言ってたな(笑)。
ふとし そうそう、でもあいつドMだから難しいフレーズが出てくるとうれしそうにするんです(笑)。
──そういった心情もあってかVAVAさんはニコニコ動画で「Firewall」の“叩いてみた”動画をアップしてますね(参照:キバオブアキバ、“叩いてみた”で新曲先行公開)。レコーディングは順調だったんですか?
ふとし いや、レコーディングはちょっと遅れました。みんなの気持ちを汲んだことやんなきゃいけないのかなって悩んだ時期がありまして、僕だけ沖縄に旅立って1週間ほど滞在したんです。
──なぜ沖縄に。
ふとし 自分の中の欲望と向き合うために……っていうのと、大好きなご当地ヒーローの「琉神マブヤー」の存在もあって、沖縄行きたい!って前から思ってたんで(笑)。そこで思ったのが、言いたいこととか伝えたいことって意外とあるなと。普段は知らない人とは話そうって思わないんですけど、沖縄行ったらいい気分でいられたし、人との会話も楽しめた。そこでいろんなものを再発見して、言いたいことは言おうって気持ちが芽生えて、それを新曲の歌詞に反映させてます。
──沖縄でも作業してたんですか?
ふとし メンバーと隔離して連絡もなるべく取らないようにして、パソコンも一応持っていったけど禁止にしてました。「あいつ何してんねん!」ってメンバーが怒ってる間に、釣りをしたりしつつ、自分の奥底にある感情と向き合ってた(笑)。
みつる 帰ってきたらすっかり感化されて「なんくるないさー」しか言わなくなってたよな(笑)。
──ははは(笑)。影響受けやすいんですね。
ふとし けっこうミーハーでわかりやすいんですよ。自分の影響を人に押し付けるのも大好きなんで(笑)。
──沖縄体験から生まれた曲は?
ふとし 新曲はどれも影響あるんですけど、「はかせをめざせ」はほんとにそうで、沖縄に滞在してる間、自分のルーツにいろいろ立ち返ってできた曲です。僕は子供の頃に「大きくなったら何になりたいか?」って聞かれたときに迷わず「僕は博士になりたいです」って答えてたんです。でも大きくなるにつれて博士は辞書的には「博士号という学位を持っている人」を指すだけの単語でしかないことを知った。でもマンガとか特撮の世界だと博士やマッドサイエンティストがたった1人でロボットを作るとか好きなことをやって世の中にないものを作り出していく描写がありますよね。僕に限らず男って一度はそういう博士を目指すものじゃないのかなと思って作った曲です。
みつる 「はかせをめざせ」の「はかせ」は現実世界の博士というよりか、幼少期の憧れが詰まった存在。クリエイター志望の人にも幼少期の自分にも贈りたい歌ですね。
──ふとしさん、沖縄に行けてよかったですね。
ふとし SNSとかで常に誰かとつながってる時代だから、そこと距離を置くっていう自分なりの断捨離を選んでみたんです。ちゃんと1人になる時間っていうのは大切でしたね。
BABYMETALが自分たちの曲を歌ってくれる楽しみ
──ライブに関する話を聞かせてください。去年の「LOUD PARK 13」ではBABYMETALが「君とアニメが見たい ~Answer for Animation With You」を1曲目に披露していました。ふとしさんは個人的にラウパに行ったそうですが、自分たちの作った曲で盛り上がるオーディエンスを観て「俺たちも出たい!」なんて気持ちになったんじゃないですか?
ふとし 全然なかったっす! 仮に僕がキバオブアキバをやってなくて、ラウパにキバオブアキバ出たらキレるんで(笑)。
──はははははは(笑)。
みつる 確かに。「お前らメタルとちゃうやろ!」みたいになるじゃないですか。そうなるのわかってるし、それは嫌なんですよね(笑)。
ふとし ああいう大きな場所で自分たちの曲を使ってもらえたっていうのが、逆に自分たちが出るよりも光栄ってくらいの感覚でしたね。正直僕らはリスナーのときからライブ派ではなくて、ひたすらCDを聴いてるタイプだったので。
みつる いまだにリスナー気質なんですよね。初期は3カ月に1回のライブでも多いってレベルの活動形態だったし。東京にお呼ばれするようになってからはちょこちょこ遠征も増えてきたんですけど、僕たちの表現方法はライブが一番ではないなっていうのがありますね。
──パッケージ至上主義というか?
ふとし そう、ライブハウスに行かないとやれないことっていうのは自分らのやることじゃない。ライブ好きなライブバンドがいるから、ライブはそういう人たちがやればいい。で、BABYMETALは生で観てそのすごさとか威力がさらにわかる部分が大きいですよね。その形がしっかりしてたから今、海外でやって大きな反響を得てるわけで。そのステップに僕らを組み込んでもらえてるっていうのは本望ですね。
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収録曲
- Animation With You
- はかせをめざせ
- The Power And The Museum
- Internet In Da House
- Party @The BBS
- Oh,My Parsonal Computer Is Dead!!!
- Firewall
- 全部宇宙が悪い
- The Stay-Home Superstar
- ゾンビ奴
- ファイナル☆クエスト
キバオブアキバ「ONE CLICK WONDER 『YENIOL』RELEASE SHOW」
- 2014年12月7日(日)東京都 GARRET udagawa
- キバオブアキバ / Arbus / and more
- 2014年12月14日(日)京都府 GROWLY
- キバオブアキバ / FEAR FROM THE HATE / LABRET / 極楽浄土
キバオブアキバ
ふとし(Vo)、みつる(B)、浅井(Samp, Vo)、VAVA(Dr)、青木昆陽(Key, 蘭学)の5人組。2008年に京都で結成され、“ヲタイリッシュ・デス・ポップ・バンド”をコンセプトに掲げて活動している。2011年にCD付きの缶バッジセット「ヲタイリッシュ缶バッジ」、2012年にはBABYMETALとのスプリットシングル「BABYMETAL×キバオブアキバ」を発表した。スプリット盤では「Animation With You」を女子目線の歌詞にアレンジした「君とアニメが見たい ~Answer for Animation With You」をBABYMETALに提供。2013年にはアニソンシンガー・鈴木このみとのコラボ名義「鈴木このみn' キバオブアキバ」でテレビアニメ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」のオープニングテーマを発表し、同年8月に開催されたアニソンイベント「ANIMERO SUMMER LIVE2013」では、鈴木このみn' キバオブアキバ feat ZAQのゲストとしてふとしがバンドを代表して出演して会場を沸かせた。2014年11月に初のフルアルバム「YENIOL」をリリース。12月には自主企画「One Click Wonder」を開催する。