音楽ナタリー PowerPush - キバオブアキバ
“ヲタイリッシュ・デス・ポップ”の真意
大人の欲望にも子供の妄想にも付き合いたい
──ではキバオブアキバとして今後やってみたいことはあるんですか?
ふとし BABYMETALスプリットのあとから「アニソンやりたい!」ってずっと思ってましたね。
──あれ? 鈴木このみさんとコラボした曲はアニメ主題歌ですよね?
ふとし そう、だからもう叶っちゃったんですよね(笑)。それで、さっきアルバム出すつもりなかったって話をしましたけど、ここまで実現したからアルバム出そうって話になって今に至ります。次にやりたいことってなんだろうな、「こいつらコラボ相手で使えそうだな」って人がいたら声かけてくださいって感じですね(笑)。
──武道館でやりたいみたいな憧れはないですか?
ふとし あんまりわかんないんですよね、武道館は武道をやるところじゃないですか。もう100人以上は大勢なんで、どこでやっても一緒かなって。
──同人、コミケ界隈とのコラボはありそうですか?
ふとし 僕、現時点でいわゆる同人誌とかに強い愛情はないんですよね。でも「これをやったら喜んでもらえるかな? 自分は楽しいかな?」っていろいろ見つけていかないとダメだなって思うし、大人の欲望にも子供の妄想にも付き合っていきたいとは思ってます(笑)。
オタクとメタルだけのくくりで終わりたくない
──今回お話を聞いて“ヲタイリッシュ・デス・ポップ”はオタク文化とメタルの融合という意味だけに収まっていない感じがしました。
ふとし そうなんですよ。逆に言うと、オタク×メタルって理解してもらうのはわかりやすいからありがたいんですけど、自分らではそうは思ってなくて。オタクから逃げたいから“ヲタイリッシュ”にして、メタルからも逃げたいから“デス・ポップ”にしたっていうのはあるんですよ。オタクとメタルの融合なら東方の同人メタルをやってる人たちとか、本格的な方々がいるのもわかってたんで、あれこそ真のオタクメタルでしょうって。自分たちはオタクとメタルのくくりに新しい広がりを持たせたかったので「ヲタイリッシュなデスでポップに」って、より捉えどころのない形にしたかったんです。
──なるほど。ちなみにバンド名はオタクの象徴として秋葉原から取ったものですか?
ふとし 「アキバならオタクでしょ、オタクならアニメでしょ」っていうイメージが多いと思うんですけど、僕はその短絡的なところにはマイナス意識があるんですよね。僕にとってアキバは知識と文化がミックスされた象徴。今行くとアニメの街なのはわかるんですけど、ルーツは電気街でそこに行くと謎のパーツが売ってるっていうもっと神秘的な場所ってイメージだった。多様な知識とか文化をバックグラウンドに持った上で社会に牙を向くような反抗心を出す。それでキバオブアキバという名前を付けたんです。
みつる そこも“デス・ポップ”と同じで相反する部分があるというか。
ふとし 全部後付けなんですけどね(笑)。後付けだけど感覚的に出した言葉に意味を見いだせてるので、それはそれでいいかなと。「YENIOL」も意気込みがものすごいあるわけじゃなくて、やりたいことをやってたら出ちゃったって感じなので(笑)。
──ガツガツはしてないけど、自分たちの好きなものに愛情を注ぎ続けてる感じがいいですね。
みつる そうですね。オタクっていうとリュックにポスター刺して紙袋持ってるみたいなステレオタイプな姿をイメージする人もいまだにいると思うんで、僕らも「オタクちゃうやんけ」と言われることもある。でも捉え方の問題で、音楽やってる人も自分らの好きなものがあるって意味ではその道のオタクなわけだし。
ふとし 誰にでもオタクな心は眠ってるからそれを表に出してもいいし、隠しててもいい。とにかく自由に楽しんでいこうぜって思いはあります。しっかり現実的な欲望抱えてるくせして「自分はオタクだからどうせ……」的なことを言う自称アニオタとか見たら「アニメのせいにすんなよ」とは思いますね(笑)。
──それはつまり?
ふとし テレビで垂れ流されてるアニメを観てるだけというならそもそもオタクじゃないしすごくもったいないなって思うんです。今見てるものを吸収して、それを何かに生かす瞬間があると楽しいなっていうのが自分の場合はあるんで。
──好きなことを続けていくことで新たな発見があったりもしますしね。
ふとし そうそう。多方面から物事を見て、頭と体を使っていろいろ考えて行動するのは楽しい。1人ひとりのそんな動きが日本の国内総生産を上げていくんじゃないかなと思ってます(笑)。
収録曲
- Animation With You
- はかせをめざせ
- The Power And The Museum
- Internet In Da House
- Party @The BBS
- Oh,My Parsonal Computer Is Dead!!!
- Firewall
- 全部宇宙が悪い
- The Stay-Home Superstar
- ゾンビ奴
- ファイナル☆クエスト
キバオブアキバ「ONE CLICK WONDER 『YENIOL』RELEASE SHOW」
- 2014年12月7日(日)東京都 GARRET udagawa
- キバオブアキバ / Arbus / and more
- 2014年12月14日(日)京都府 GROWLY
- キバオブアキバ / FEAR FROM THE HATE / LABRET / 極楽浄土
キバオブアキバ
ふとし(Vo)、みつる(B)、浅井(Samp, Vo)、VAVA(Dr)、青木昆陽(Key, 蘭学)の5人組。2008年に京都で結成され、“ヲタイリッシュ・デス・ポップ・バンド”をコンセプトに掲げて活動している。2011年にCD付きの缶バッジセット「ヲタイリッシュ缶バッジ」、2012年にはBABYMETALとのスプリットシングル「BABYMETAL×キバオブアキバ」を発表した。スプリット盤では「Animation With You」を女子目線の歌詞にアレンジした「君とアニメが見たい ~Answer for Animation With You」をBABYMETALに提供。2013年にはアニソンシンガー・鈴木このみとのコラボ名義「鈴木このみn' キバオブアキバ」でテレビアニメ「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」のオープニングテーマを発表し、同年8月に開催されたアニソンイベント「ANIMERO SUMMER LIVE2013」では、鈴木このみn' キバオブアキバ feat ZAQのゲストとしてふとしがバンドを代表して出演して会場を沸かせた。2014年11月に初のフルアルバム「YENIOL」をリリース。12月には自主企画「One Click Wonder」を開催する。