音楽ナタリー Power Push - KGDR(ex.キングギドラ)

20年ぶりに降り注ぐ空からの力

Kダブシャイン、Zeebra、そしてDJ OASISからなるキング・ギドラ(現KGDR)は、本日6月17日に20周年記念バージョンがリリースされた「空からの力」で1995年にデビューした。

キング・ギドラは日本のヒップホップの歴史を作ってきたグループだ。モデルケースがほぼ何もなかった時代に母国語での韻とサウンドとしてのヒップホップのスタンダードをこの国で考え出したのは、この3人と言っていいだろう。彼らはヒップホップの枠を拡大し、J-POPに影響を与え、そのサウンドやリリックを変えてきた。そしてそれ以上に、日本のユースカルチャーやストリートカルチャーのスタイル、思想、空気もリードしてきた。13年ぶりの本格的な始動を記念し、彼らの成り立ちから話を聞いた。

取材・文 / 荏開津広 撮影 / 雨宮透貴 取材協力 / MOJITO TABLE

ラップの話ができる友達

──3人はグループを結成する前からの幼なじみだと聞いていますが、どのようにして出会ったのでしょうか? また子供の頃はどういう音楽を聴いていましたか?

Zeebra 俺とOASISは小学生の頃からの知り合いだった。遊びに行くとかそういうのじゃなかったけど2人とも音楽好きで、なんでも一緒に聴いてた。「ベストヒットUSA」世代だから、チャートものは好きだったな。でも「ベストヒットUSA」で聴くことができる音楽と「ザ・ベストテン」で流れているもののレベルが違い過ぎたよ。がんばっている日本人アーティストもいたけどさ。あと小学3年の頃、「WALKMAN」で聴くために初めて買ったカセットアルバムがYMOで、ひたすらそれを聴いていたね。

DJ OASIS なんか引っかかるところが一緒だったよね。俺、特にヘヴィメタルが超好きだった。

Zeebra だから俺もメタルも聴いてたけど、だんだんマイケル・ジャクソンとかが好きになってって。

Kダブシャイン 俺、ヒデ(Zeebra)とは14歳のときに最初に会ったんけど、その頃ヒデは160cmぐらいしか身長がなかったんだよ。ウェスタンブーツ履いてて。

Zeebra いやいやいや、170cmぐらいはあったよ(笑)。

Kダブシャイン で、その2年後ぐらいに会ったらファーを着てて、180cmぐらいあってさ。すごく大きくなっててビックリしたんだよ。

Zeebra そんなにいってないよ、今でも178cmぐらいなんだから(笑)。渋谷プライムができた頃はもう知り合ってなかったっけ? あそこにリサ(・ステッグマイヤー)とかさ、聖心インターナショナルスクールの子とかがいたよね。当時俺はまず渋谷のジャクベ(ジャック&ベティ)とかに集まって、それから六本木行ってっていう毎日で。

DJ OASIS プライム、俺も行ってたよ。

Kダブシャイン ヒデの同級生にオア(DJ OASIS)がいたのは、その頃は知らなかった。俺とオアが知り合ったのはグループ作ろうってなってからだから、1993年だね。ヒデが紹介してくれた。

グランドミキサー・D.STの近未来的なヘッドフォン

──東京の都心で育った子供たちらしいですね。3人とも街の中で時間を過ごしながら、だんだんとヒップホップに夢中になっていったんですね。

Zeebra 俺とオアはグラミー賞でのハービー・ハンコックの「Rock It」のライブを観て、2人とも「あの動きはなんだ」ってなって……それでブレイクダンスと出会ったんだ。あとはDJのグランドミキサー・D.STが付けていたワイアレスの四角いヘッドフォンが無駄に近未来的でさ(笑)、「なんだあれ!」って。そんなのにやられちゃった中1だった。

Kダブシャイン 俺があのグラミーの映像で衝撃受けたのはスクラッチ。

Zeebra スクラッチは俺もやったね。お袋の「これ絶対いらないだろうな」っていうレコードでやってみたんだけど、でもターンテーブルの動作方式が違うし、ああいうふうにはならなくて。全然音が出なかったな。

Kダブシャイン 俺が気が付いたときはヒデはDJをやっていて、もうラップミュージックもかけてたよね。俺もラップが好きだったんだけど、俺の学年でラップが好きな奴がいなくて話ができなかったんだ。でもちょうどヒデとかT.A.K The Rhymeheadみたいな後輩がラップが好きだっていうのがわかって……ラップの話ができる友達がその2人だったんだよね。そういう後輩たちが渋谷のセンター街とかをたむろしてるっていうのも知ってた。ヒデは渋谷より六本木が庭ってタイプだったからそんなに渋谷にはいなかったけど、ヒデの仲のいい奴がけっこう渋谷にいて。俺も渋谷にいた。

──1980年代にはもうヒップホップを発見して、ZeebraさんはDJまで始めるんですね。その頃……80年代の半ばから90年代にかけて、ヒップホップのアーティストが来日公演を行うようになってきました。LL・クール・JやRun D.M.C.といったヒップホップを代表するアーティストから、ニューヨークのストリート直輸入とも言える45 KingやJungle Brothersなど。そういったアーティストのギグには、皆さんは行っていた?

Zeebra

Zeebra その頃、いわゆるパーティライフみたいなのが楽しすぎて……(笑)、家にも帰らないし、帰っても着替えるぐらいで、その日が何曜日なのかもわからずって日々を過ごしていたんだ。そんな生活をしていたから、LL・クール・JもRun D.M.C.も来日公演があるのを事前に知らなくて、悔しい思いをしているんだよ……86年だね。最初の来日だよ。あのときさ、渋谷にいたら友達が普段持ってないadidasの黒のドクターバッグを持ってて。「何してんの?」って聞いたら「これからRun D.M.C.のライブに行く」って。「え! マジ!?」ってなったけど、もう遅かった(笑)。

Kダブシャイン 俺は川崎のCLUB CITTA'とかMZA有明とかでヒップホップのライブをやるようになった頃には、もうけっこう観に行くようになってたかな。

Zeebra うん。よくみんなでライブを観に行ってました。45 Kingのライブも行ったね。3日間の初日と3日目に行って、俺たち最前列ですげえ盛り上げてたからか、最後にレコードくれたよ(笑)。あと、BDP(Boogie Down Productions)のライブとかね。

DJ OASIS BDPの来日公演、すごかったよね。ライブよかった。

Kダブシャイン P.E.(Public Enemy)もね。

ヒップホップは新しかった

──皆さんにとって、ヒップホップのどこが音楽的に特別だったのでしょうか?

Kダブシャイン 俺は最初はラップにハマったんだ。アメリカにいたとき「Rap music」って発音できるようになって、「どんな音楽好きなの?」って質問されたときにそれを言いたくてしょうがなかったな。当時はラップが好きな奴とはすぐ友達になってたね。90年代からレコード屋も「Hip Hop」って言葉を使うようになって、さらにMC Hammerとかのヒットもあって、ジャンルとしてしっかりヒップホップって呼ばなくちゃいけなくなっていった印象があるよ。

Zeebra うん。あと、ヒップホップはやっぱり新しかった。俺はThe Sugarhill Gangの「Rapper's Delight」的な部分に引っかからずに、ハービー・ハンコックの「Rock it」にハマったんだけど、その理由はサウンドがファンクやディスコの弾き直しではなくて、近未来感があったしデジタルだったからだったというのがあって。俺は80'sのニューウェイブ的な感覚もすげえ好きだったし、YMOの16ビートに完全に反応したクチだから。同時にブレイクダンスを発見してから「ビート・ストリート」「Breakin'」「ワイルド・スタイル」なんて映画を観ていったんだけど、もうああいうもの全部……ニューヨークの雑多な感じがすべて「かっけー」と思ってた。

DJ OASIS 俺子供の頃からヘヴィメタルを聴いていてるんだけど、ヒップホップに関しても……リズムだと思うけど、体が反応したんだよね。すごくロックされる感じというか、違和感がなかったんだよ。体は動くし、首もバンギングじゃないけど、ノッドするし。俺にとってヒップホップはいろいろなもの中の1つでしかなかったけど、87年ぐらいにEric B&RakimとかP.E.とかを聴いて、それでどっぷりいったって感じかな。

Zeebra うん。やっぱりヒップホップのライブってロックだよ。テンポのよさとかはジェームス・ブラウンとかのブラックミュージックの伝統を受け継いでるけど。

デビュー20周年記念作品「空からの力:20周年記念エディション」2015年6月17日発売 / P-VINE RECORDS
「空からの力:20周年記念エディション」
初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / PCD-18788/9 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 2700円 / PCD-25178 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 未確認飛行物体接近中(急接近MIX)
  2. 登場
  3. 見まわそう
  4. 大掃除
  5. コードナンバー0117
  6. フリースタイル・ダンジョン
  7. 空からの力~Interlude
  8. 空からの力 Part 2
  9. 星の死阻止
  10. 地下鉄
  11. スタア誕生
  12. 行方不明
  13. 真実の弾丸
  14. コネクション~Outro
  15. 空からの力(Mind Funk Remix)
  16. 行方不明(DJ Kensei's Smooth Mix)
  17. 真実の弾丸(Flute Mix)
  18. 見まわそう(Original Demo Version)
  19. 空からの力 Part 1(Original Demo Version)
初回限定盤DVD収録内容
  1. OPENING~未確認飛行物体接近中(Live)
  2. 大掃除(Live)
  3. 見まわそう(Live)
  4. 行方不明(Live)
  5. 行方不明(DJ Kensei's Smooth Mix)(Music Clip)
KGDR(ex.キングギドラ) ~「空からの力」20th Anniversary~
2015年7月18日(土)
愛知県 Zeep Nagoya「NAMIMONOGATARI 2015」
2015年8月15日(土)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO「SUMMER BOMB produced by Zeebra」
2015年9月6日(日)
福岡県 芥屋海水浴場「23rd Sunset Live 2015 -Love & Unity-」

P-VINE, Inc. 40th Anniversary Special Site

KGDR(キングギドラ)

KGDRKダブシャイン(MC)、Zeebra(MC)、DJ OASIS(DJ, MC)の3人からなるヒップホップグループ。1993年に前身となるユニット、キング・ギドラを結成。1995年に1stアルバム「空からの力」をリリースすると、その卓越したフロウやトラックのセンスでヒップホップファンから大きな支持を集める。1996年にグループは活動を停止させ、それぞれがソロ活動をスタートさせた。2002年にグループでの活動を再開させ、同年に「UNSTOPPABLE」「F.F.B.」「911(Remix)」「ジェネレーションネスクト」といったシングルを次々と発表。年末に発売したアルバム「最終兵器」はヒットチャートの上位にランクインし、以降のJ-POPに多大な影響を与えた。ふたたびグループとしての活動を休止させるも、2015年に「空からの力」発表から20年目を迎えたことを記念してKGDRとして活動を開始。P-VINE RECORDSの設立40周年を記念した「P-VINE 40th ANNIVERSARY」やRHYMESTER主催の「人間交差点 2015」といったイベントに出演しヒップホップファンを喜ばせた。6月にはアルバム発表前に制作されたデモ音源などを追加収録した「空からの力:20周年記念エディション」を発売した。